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格闘タイプのお姉さんが護衛と引き換えに私の体を要求して来るんだけど!? ~意外とウブな芋ジャー女ドラゴンに溺愛されるキケンな二人暮らし~  作者: 枕頭皮
第6話 貴女の命も幸せも、傷一つとして付けさせるものですか ~血影衆殺手 東風 登場~
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6-8

 覚悟を決めた私は、「駄目だよ」と敢えて強い口調で割り込んだ。


「寄り道は認めません。今日は一日遊び倒すって決めたんだから」


「え〜〜〜」


「どけち〜〜〜」


 膨れる二人だけど、私はそれも「やかましい」と一蹴する。


「美夢さんのことはまあいずれたっぷり語ってあげましょう。それより今日だよ。今日は私が二人を引率する。回るプランもきっちり考えて来たんだからね」


 そう言って私は、今朝作ったばかりのジャンボリパーク散策チャートを二人に手渡した。ネットから印刷した園内マップに細々と書き込みを入れ、ついでに件のタイムテーブルも乗っけた力作だ。私個人の経験ベースにはなるが平均的な待ち時間も考慮しており、一応ちゃんと園内を隈なく回れるようになっている。


「わお……」


 私の目力のためかそれとも資料の大仰さに対してのものか、メメちゃんがたじろいでいる。愛梨ちゃんもサングラスをずらし、紙面に目を落としている。


「これはまた……随分気合い入ってるわね。そんなに楽しみだったの?」


「まあね。そんなとこ」


「ふむ」


 保健の先生らしく、愛梨ちゃんは人の表情を読む。まさか私が遊園地巡りと平行して殺し屋を撃退しようとしてるなんて想像もつかないだろうけど、私が何かに拘っていることは察したのかもしれない。


「そうね、そこまで言うなら香織ちゃんにお任せしちゃうおうかしら。しっかりエスコートしてよ?」


 愛梨ちゃんに対しては私の家庭環境について断片的に話している。そのため気を遣わせている自覚もある。詮索せずに乗ってくれた彼女に私は胸の中で感謝した。


「もちろんだよ」


「え〜〜〜、それじゃ尋問は終わり?」


 不満そうなメメちゃん。悪いね親友、大人を味方につけた私に分があるよ。


「それはノーよ。アトラクションを回ってる最中、香織ちゃんへの質問攻めは継続させて貰うわ」


 げえっ!?


「やたっ。さっすが愛梨ちゃ〜ん、話がおわかりになるぅ!」


「フフフ……入園してしまえばもう逃げられないでしょ。独り身仲間から抜け駆けしてオイシイ思いをしてるんだもの、たっぷりとエンタメを提供してくれるわよね、か・ね・み・ち・さ・ん?」


 愛梨ちゃんの目がサングラス越しに細められる。まぶたの隙間から覗く爛々とした光に、私は退路の断たれたことを悟った。


(いやこれもう吊し上げ……ってか、やっかみでしかないだろ! ちくしょう……万年彼氏なしの恋バナ人間に話題を提供するとこうなるのか。迂闊だったよ)


 何だか私の命だけじゃなく尊厳まで差し出すことになりそうだけど、とりあえず作戦の開始には漕ぎ着けた。さあ矢でも鉄砲でも持って来い……そんな気持ちで、私は胸元の犬笛を握りしめるのだった。


〜〜〜


 兼道香織が友人ふたりと共にジャンボリーパークに入園する頃、彼女を追う林美夢もまた敷地のすぐ外に来ていた。ここで物語の視点はいっとき美夢に移る。


「香織さん、予定通り入りましたね。では私も位置につきましょう」


 駐車場脇の茂みから様子を窺っていた美夢は、そのまま藪の奥深くに分け入って急な斜面を登っていく。県内唯一のこの遊園地は山を切り開いて作られており、美夢が居るのはその区画の外縁部。未開発の山肌が直角に切り立っている場所があり、ちょうどパーク全体を一望できるスポットになっている。そこから張り出した丈夫そうな木に美夢はよじ登り、梢に腰掛けて見張り台とした。


《つづく》

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