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格闘タイプのお姉さんが護衛と引き換えに私の体を要求して来るんだけど!? ~意外とウブな芋ジャー女ドラゴンに溺愛されるキケンな二人暮らし~  作者: 枕頭皮
第4話 契約外でわたしとそういう触れ合いをお望みなのでしたら ~街デートは襲撃の後で~
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4-8

(やばい、来てる。殺される。動け、動けってのよ! 震えてんじゃないよ私の脚~~~っ!)


 焦れば焦るほど体は言うことを聞かず、ろくに後ずさりもできないままの私に再び刺客の影が覆いかぶさる。ハンマーが振り下ろされ、思わず私が目をぎゅっと瞑ったその時だった。


「香織さん!……ぜええええええいっ!!」


 向こうで戦っている美夢さんがヌンチャクを旋回させて回転をかけ、ブーメランのように投擲する。風切り音を上げて飛来したヌンチャクは、私の目の前に迫っていた刺客の後頭部を直撃。濁った呻き声を残し、彼は糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


(た、助かったぁ! ナイスだよ美夢さん……)


 思わず全身の毛穴が開き、放心しそうになる私。それを何とか堪えて、せめて後ろを取られないよう橋げたの位置まで下がる。刺客が持っていたハンマーは、念のため没収しておく。


「香織さん、無事ですか!? 怪我は……ちいっ!!」


 すかさず私に駆け寄ろうとする美夢さんだったが、交戦中の刺客二人が立て続けの蹴りでそれを阻む。残るは彼らだけだ。


「邪魔ですっ!」


 美夢さんが両の拳を突き出し、一方の敵の顔面と溝尾(みぞおち)を同時に打突する。両手が伸び切り、美夢さんの横っ面がガラ空きになる。その隙に釣られるようにもう一方の敵がパンチを繰り出すが、美夢さんはそれを完全に読んでいた。


「邪魔っ!」


 高々と上げた足で相手の腕を蹴りつけて捌き、返す刀で側頭部に回し蹴り。膝から先をしなやかに使った攻防二段の技が決まった。そして、目の前の刺客が二人とも棒立ちになる。


「ちぇああああああっ!!」


 美夢さんが奇声を発し相手をとどめにかかる。両手で掌底打ちを放ち、左右の敵の顔面を潰す。続いて彼らのボディに連続パンチを交互に4、5発も打ち込み、体がくの字に折れるほど悶絶させる。


「でえいっ!!」


 そして両脚を跳ね上げるように跳躍し、両者の顎を同時に蹴り上げる美夢さん。人並み外れた運動神経と股関節の柔軟さが見て取れるような、曲芸じみたキックが刺客たちの顎関節を打ち砕く。


(わぁ……相変わらず凄い動きしてるよこの人。けどこれ多分、拳法って感じじゃないよね。よく知らないけど。もしかして美夢さん、他に何かやってたのかな? 元から持ってた技術に少林寺の技がプラスされて……だからこんなに強いとか?)


 何だか、本人が教えてくれなくてもだんだん美夢さんのことがわかって来る。彼女の戦いぶりを見て、私はそんな気がした。決定打を喰った刺客二人はもんどり打って倒れ、そのまま動かなくなる。美夢さんの勝利だ。


「はあ……はあ……香織さんっ!」


 倒した相手を前に息を切らしていた美夢さんだったが、すぐに私の方へ駆け寄って来てスライディング気味に跪いた。


「大丈夫ですか!? どこも怪我してませんか!? ああ……こんな所に擦り傷を作って、可哀想に……!」


「えっ、お、おう……」


 美夢さんの勢いと、泣きそうな顔に思わず私はたじろいでしまう。さっきまでの鬼気迫る表情とは大違いで、この切り替えの速さはちょっと心臓に悪い。


(擦り傷? 擦り傷って……ああ、そう言われてみればさっきから膝小僧がヒリヒリするかも。河原の砂利の上でローリングなんてしたもんだから皮が剥けちゃったんだ)


 美夢さんが顔を青くしているのは、血すら滲んでいない僅かな擦り剥けのことだった。こんな薄皮一枚の怪我で心配されるなんて、私はニ歳児か何かだと思われているのだろうか。


《つづく》

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