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格闘タイプのお姉さんが護衛と引き換えに私の体を要求して来るんだけど!? ~意外とウブな芋ジャー女ドラゴンに溺愛されるキケンな二人暮らし~  作者: 枕頭皮
第4話 契約外でわたしとそういう触れ合いをお望みなのでしたら ~街デートは襲撃の後で~
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4-6

(まさか……敵?)


 美夢さんに釣られて、私も辺りを見回す。けれど、血影衆の殺し屋の特徴的な黒衣姿は見当たらない。一体、何が起こっているのだろうか。


「……香織さん、見えますか? あちらのキャンパー集団と、反対側でキャッチボールをしている二人組……先程から徐々に近付いて来ています。まるでわたしたちを挟み込むかのように」


 私たちは橋の真下に居て、左右には河川敷が広がっている。私から向かって右には確かにアウトドアなルックに身を包んだ男たちが居て、野営する位置を探っているようだ。テントを支えるペグを打ち込む場所がなかなか決まらないのか、河原をウロウロしながらああでもないこうでもない言っていて……美夢さんの言う通り少しずつ橋側へにじり寄っている、気がする。


 そして向かって左。親子でも兄弟でもなさそうな、微妙な歳の差を感じさせる男2人が威勢良く軟球を投げ合っている。向こう側から投げられたボールが、こちら側のグローブに弾かれて……橋側へ落ちた。それを拾うついでに、2人の立ち位置が少しこちらへ近付いた、気がする。


「この河川敷に、あのような人たちはよく訪れるのですか?」


「……ううん。いつもはもっと静か。本当に人来ないんだよ、ここ」


 行楽に運動。どちらもそれ自体はありふれた光景のため私自身全くスルーしていたが、言われてから意識してみると不気味だ。


(まさか……一般人になりすまして敵が近付いて来てるってこと? だとしたら見えてるだけでも5、6人は居ることになる。私たち、もしかして囲まれちゃってる!?)


「場にそぐわぬ客人、というわけですね」


 美夢さんは私に半ば覆いかぶさったまま、視野の限界まで目を凝らして彼らの様子を窺っている。その傍ら、彼女はさり気なくジャージのポケットに手を入れ……パチンコ玉に似た銀弾を一掴み取り出した。


「今ここで彼らに対し逃げを打つのは愚策です。土手を駆け上がる僅かな間にも、確実に背中を狙われるでしょう。ならば先手必勝……この指弾で彼らの虚を突きます。もっとも全てわたしの気の所為という可能性もありますが、構いませんか? 香織さん」


 指弾。恐らく以前、殺し屋・疾風の武器を打ち落とした(つぶて)を投げる技のことだ。あれなら敵の攻撃が及ばない距離から牽制することもできる。加えて美夢さんは至って冷静だ。ここは任せよう。


「いいよ。許可する。もし勘違いで無関係の人を傷つけちゃった時は……その時は抱っこして逃げてよ」


「ありがたいお言葉」


 美夢さんがニヤリと口角を歪め、ゆっくりと腰を上げる。同時に、キャンプの一団とキャッチボール組がまた少し橋に近付く。彼らの視線が一様に美夢さんの方へと向けられたその時、


「はあっ!」


 美夢さんが気合と共に身を翻し、手の中に握り込んだ銀弾を親指で弾き出す。引き絞った石弓のような圧力でノックされたその一射は、キャッチボールをしていた2人組のうち手前に立っていた男の側頭部に命中。カッ!と頭蓋骨に亀裂の入る音を響かせ、男は地に倒れ伏した。


(す、すごい威力……!)


 私が驚いている間に、美夢さんは2発目の指弾を親指に装填する。相方が昏倒するのを見た男が、咄嗟に己の頭部を庇う。


「そこです!」


 が、美夢さんに抜かりはない。頭を狙えないと見るや即座に狙いを変更。ガラ空きの下半身に向けて第二射を放ち、男の片膝に銀弾をぶち当てた。膝の皿が粉砕され、男が(うめ)き声を上げてうずくまる。


「香織さん、走る用意を!」


「う、うん!」


《つづく》

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