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格闘タイプのお姉さんが護衛と引き換えに私の体を要求して来るんだけど!? ~意外とウブな芋ジャー女ドラゴンに溺愛されるキケンな二人暮らし~  作者: 枕頭皮
第3話 本当に一緒にお風呂に入っていただけるんですか!? ~真・同棲初日はドキドキ爆発~
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3-12

 その緊張した感じで言うのがそれなのかと、私は力が抜ける思いがした。


「なんでトランプ? 私持ってないけど」


「ご心配なく! こんなこともあろうかと持参してますから……」


 美夢さんが私の手を離して自分の巨大バッグに飛びつき、ガサゴソと中を漁ってプラケース入りの古そうなトランプ一組を取り出した。


「他だとウノもありますし、オセロやカタン、あとこれはっ……よいしょ、モノポリーもあるんです!」


 一応常識的なサイズの筈のバッグから、次々と室内遊戯の類が出て来る。確かそれに調理器具一式も入ってたよね? どんな容量してるんだろう。


「色々見せてくれてありがとうだけど、やらないよ? 寝たいし」


「えーーーーっ!?」


 バッサリ切り捨てる私に、美夢さんが叫び声で抗議する。隣に聞こえるからあんまり大声出さないでくれるかなぁ。


「まだ宵の口じゃないですか。寝るにはまだ早いですよ」


「いや、6時起きって言ったじゃん。早起きする時は早寝するの」


 実際、私はどちらかと言うとロングスリーパーだ。次の日ちゃんとしようと思うと9時間ぐらいは眠らないと調子が悪い。今日は色々やっててもう20時ちょっと過ぎだから、そろそろリミットなのだ。


「暇なら美夢さんは本とか読んでいいけどさ、私は寝るからね。生活リズムが崩れるの私ほんと駄目だから。今朝だって寝起き最悪で……って、美夢さん?」


 私が喋っている間に、美夢さんが遊び道具を置いて傍まで来ている。彼女は迷わず私の手を取り、その掌を自分の手の甲ですりすりと撫でると……何やら合点したように息を漏らした。


「本当だ。手がこんなに熱い……香織さん、もう眠たいんですね」


「なっ……!」


 予想の斜め上を行く美夢さんのコメントに、私は急速に顔面の血行が速くなるのを感じる。確かに、眠いと手が熱くなるって言うけどさ……それってごくちっちゃい子の話じゃなかったかなぁ?


(なんか、無性に恥ずかしいっ! 変におだてられてる時より、ある意味ずっと!)


「そうとは知らず失礼しました。今日も色々あって疲れましたもんね……もうお休みした方がいいでしょう」


「くっ!……そう思うなら手ぇ離して」 


 美夢さんの手を乱暴に振りほどき、私は布団の中に逃げ込む。


「じゃあね!」


 背を向けてそう言い放ち、きっぱり口を閉ざす私。でも、希望通りになった筈なのにどこか釈然としない。しばらく体を横たえていても気持ちがそわそわして、枕の位置もいまいち定まらない。美夢さんが変なことを言ったからだ。散々下世話な言い草をしといて、急にあんな……あんな子どもをあやすみたいなことを言うから。


(これが母性ってやつ?……いや違う、枕元で寝かしつけてくれる優しい執事のやつだ……! ちょうどメメちゃんに借りてる新刊にあったよこういうの! う〜〜〜むかつく……美夢さんの癖に、美夢さんの癖に! こんな不意打ちで私の安眠を妨害するなんて生意気なんだよ……!)


 私は身じろぎを堪えながら、心の中ではちゃめちゃに悶えていた。慌てて床に就いたもんだから電気も点いたままだし、調子が狂ってしょうがない。美夢さんに頼みついでに八つ当たりでもしてやろうか……ふとそんな気持ちが湧いて、私は予備動作なく跳ねるように起き上がった。


「電気ぐらい消し……でっ!?」


「わっ」


 鼻先が微かに触れ合う。美夢さんがいつの間にか枕元に来ていて、私の方を覗き込んでいたのだ。鉢合わせしてしまった私は、びっくりして固まってしまう。


《つづく》

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