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格闘タイプのお姉さんが護衛と引き換えに私の体を要求して来るんだけど!? ~意外とウブな芋ジャー女ドラゴンに溺愛されるキケンな二人暮らし~  作者: 枕頭皮
第3話 本当に一緒にお風呂に入っていただけるんですか!? ~真・同棲初日はドキドキ爆発~
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3-5

(もう色んなことがあったなぁ。昨日も、今日も)


 お湯を頭から浴びながら、私は今の状況を整理する。一族の誰かが私の命を狙っているのはもう確定と見ていいだろう。加えてお祖父様が私に「例の物」を譲り渡したというのが本当だとすれば、首謀者の目的も十中八九それだ。私が継承権を放棄すると言えば丸く収まる……などと甘い考えを持ってしまいそうになるが、先に殺し屋を送り込んで来ているあたり先方に話し合う気はないのだろう。


(交渉を試みるにしても、ただ跳ねのけるにしても、まずは相手の正体を知らなきゃならない。一族の誰が殺し屋に私の殺害を依頼したのか……それを確かめなきゃ)


 問題は、依頼人まで辿り着く手段だ。二度の襲撃でわかったけど、殺し屋は何も単独で任務に出張って来ているわけではない。暗殺達成後の現場偽装をするチームが居ることは玉風の口から語られたし、もし実行役が失敗した際にはそれをフォローし撤退を補助する役だって居る。襲って来た敵を無力化して尋問するという案はおよそ現実的ではないのかもしれない。ならばどうするか。


(殺し屋から遡るのが無理なら、依頼人が出て来るのを待つ? いや、そもそも自分の手を汚したくなくてプロに依頼してるんだから、のこのこ顔を出すわけないよね。もし、改めて接触することがあるとすれば……)


 その考えの先に思い至って、私は背筋が寒くなった。


(それは私が死んで、報酬のやり取りがある時だ……!)


 シャワーのコックを開き、良くない思考を泡と共に洗い流す。これは考えても詮無いことだ。それに依頼人と殺し屋が接触する機会ならまだ他にもある。依頼の完遂が困難になり、両者の関係にトラブルが発生した時だ。つまり、極端に言えば今の戦いを続けた先にも活路はないわけではない。


(結局、私の命運は美夢さんの頑張りにかかってるってことか)


 そんなことを思いながらお湯を止め、私はお風呂場を後にする。先に手だけ出してバスタオルを取り、体に巻き付けて部屋に出ると、美夢さんはまだ座禅を組んでいた。


「……美夢さん」


 声をかけてみるが返事がない。そう言えば瞑想するって話だったっけ。すぐ起きるみたいに言ってたけど、もしかしてこれ瞑想どころか完全に寝てる?


「美夢さん、お風呂空いたよ。入るなら早く入って」


 美夢さんの前にかがみ、顔を覗き込んでみる。さっきは半眼をキープしていた美夢さんのまぶたは今完全に落ちてしまっており、薄く開いた唇からはすうすうと寝息が漏れている。やっぱり寝てる。その能天気な寝顔に私は軽く呆れてしまった。


(全く……今敵が来たらどうすんのよ。緊張感ないなぁ)


 でも、思えばこの人って常人以上に戦えるだけで実はほぼ一般人なんだよね。疾風や玉風と違ってプロじゃない。それがろくな休息も取らず二度も命懸けの戦いをした。こうなっちゃうのは当然かもしれない。私は何だか申し訳なくなってしまって。美夢さんの頭に手を伸ばし……ほつれた彼女の髪束を一房、指で梳いてあげた。


「……お疲れ様」


 私が生き残るため、貴女にはこれからもっと必死に戦って貰うから。私は酷いから、貴女が傷つくことも時に厭わないかもしれない。でも出来るだけの報酬はあげたい……えっちは気が進まないけど、せめて美夢さんを喜ばせてあげたいとは思ってるんだ。だからどうか許して欲しいな。


「私、今すごい恰好してるっていうのに……ちゃんと起きてないからだぞ」


 美夢さんのおでこを指でつんと突き、私はさっさと部屋着に着替えてしまった。美夢さんが目を覚ましたのはその数分後のこと。さっき私が結構大胆なことをしてたなんて、彼女は知る由もないのである。


「ご、ごめんなさい! わたし眠ってしまって……すぐごはんにしますね」


 跳ね上がって慌てる美夢さん。まず気にするのごはんなのかよ。薄々感じてたけど、思考回路が護衛じゃなくて家政婦なんだよなぁこの人。


《つづく》

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