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「ウチの胸キュン棚を読み尽くして、おねーちゃんの蔵書まで引っ張り出させたのはかおの方でしょうに……言っとくけど私はそういうの別に普通だからね? たまには読むけど。今回はかおの自業自得だよ」


 まあ、メメちゃんの言う通りなんですけどね。こちとらぐうの音も出ませんよ。


「でもまあ、友達としてアドバイスするなら……親切にしてくれるからってあんまり気を許さない方がいいんじゃないかなぁ。相手は大人だし、力で組み伏せられたりしたら抵抗できないでしょ? ウチは、かおが危ない目に遭ったりとか嫌だからね」


「メメちゃん……」


「先生にチクったりだとか、そういうダサいことはしないけどさ、何かあったらすぐに110番しなよ。勿論、ウチに言ってくれてもいい。腕が鳴るよ」


「メメちゃん?」


 袋に入った竹刀に手を添えて、メメちゃんがニヤリと微笑む。友情に篤いのは本当にありがとうだけど、そっちこそ荒事を起こそうとするのはやめてね?


「大丈夫。今んとこ、有利な関係に持って行けそうだから。ありがとね、メメちゃん。私のこと心配してくれて」


 そう、美夢さんとの関係はあくまで契約なんだから、冷静に考えればいい。護衛と引き換えに私が体を差し出すことになってるけど、美夢さんが奥手すぎるためにその条件は既にうやむやになりつつある。美夢さんの心が離れない限り、これは私とってかなり有利な状況なのだ。だから変に拒否反応を示したりせず、このシチュエーションを楽しめばいい。それが、懐刀として美夢さんを手の内に留めておくことにも繋がる筈だから。


「……かお、なんか人相悪くない?」


 ほっとけ。どうせ私は血筋的にも浅ましい女だ。この日常を守るため、使える物は何だって使ってやるのよ。なんてね!


「てかさ、ぶっちゃけどんな感じなん? その美夢っておねーさん。王子様系? それともオラオラしてる感じ?」


「えっ。あー、うん。……大型犬かな」


「ワンコ系かぁ。それはそれで熱いよね。尻尾振って懐いて来るハイスペックおねーさん……わぁ、想像が膨らむ。ちょっと写真撮って来てくれん?」


「やだよ」


 思わず笑ってしまった。メメちゃんだってそういうの好きなんじゃない。


「え〜、口止め料として共有してよぉ。愛梨ちゃんにも見せたげたら絶対食いつくから……って、そういや愛梨ちゃん今日休みなんだっけ。ざーんねん」


 愛梨ちゃん。私はもちろんメメちゃんとも親しいその養護教諭の名前を聞いて、私は一瞬強張ってしまった。


「……うん、HRで言ってたね」


 今朝、学校に着くと同時に私は保健室に寄ってみた。昨日私が襲われ、美夢さんと殺し屋・疾風が肉弾戦を繰り広げた保健室にだ。しかし、現場は窓ガラスこそ割れていたけれど、部屋の荒れ方はほんの些細なもので……とても血みどろの戦いがあったとは思えなかった。私の目の前で壊れた筈の衝立はまるで何事もなかったかのように立っていたし、床や壁には血痕のひとつも残っていなかった。


(間違いない。あの後、誰かが現場を偽装したんだ。戦いの痕跡と、殺し屋の存在を知られないように……)


 先生に話を聞くと、校舎裏で誰かがキャッチボールでもして、ボールが窓を破ったのだろうと言っていた。愛梨ちゃんは学校を休んだけれど、LINEで聞くと転んでたんこぶが出来たためらしい。その程度の事故として、昨日のことは処理されつつある。恐らく、私が大人しく殺されていても真相は同じように覆い隠されたに違いない。


(何か、大きな力が働いているんだ。美夢さんに大見得を切ってみせた、あの旋風って男……あの自信の裏には、どうも組織の存在がある気がする。敵は一体何なのか、まずはそれを知らなくちゃね……!)


 口先でメメちゃんと笑い合いながらも、私の胸はひどくざわめいていた。


《つづく》

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