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Lawless Hunter ~強盗へ行こう~  作者: 佐久謙一
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「やっと一段落か。なんか今日は色々あって疲れたぜ」

 レイの運転する車の中、コウは助手席のシートにもたれかかりながら大きく息を吐いた。

「半分はお前のまいた種だろう。あとはあの二人に告げるだけだな」

 レイは呆れたように呟きながら駐車場から少し離れた路地で止まった。窓を開け、路地の影を確認すると心配そうな顔をしたマイクとシェリーがいた。サンドロとのやり取りを見られる訳にもいかないのでここに置いてきたのだ。

「取引は終わったのか?」

 マイクが尋ねると、レイが小さく頷いた。

「あぁ。お前らは無罪放免だ」

 その言葉にマイクとシェリーは両手を上げて大喜びした。

「イエア! お前らの話に乗って正解だったぜ!」

「やったー! アタシ達殺されずに済むんだー!」

 子供のようにはしゃぐ彼らに、コウも思わず頬を緩める。

「次からはもう少しまともな仕事を探せよー!」

「うるせえ! お前に言われたくねえよ!」

「こっちだってやりたくてこんな仕事したんじゃないやい!」

 不満をたらたらと述べる兄妹にコウはますます笑みを漏らす。

「お喋りはその辺にしてもらっていいか?」

 そんな彼らの会話を遮るようにレイが言った。

「こっちも暇じゃないものでな」

 レイの態度にマイクは呆れたように首を振る。

「全く最初から最後まで愛想の無い野郎だな。クールキャラなんてもうブーム去ってるぜ」

「余計なお世話だ。それよりお前達の使っていた車と銃だがこちらで処分させてもらうぞ」

「ん? あぁ、やってくれるのか? 別に構わねえぞ。こっちとしても手間が省ける」

 マイクの言葉にレイは小さく頷いた。

「それじゃあここでお別れだ」

「おう、世話になったな!」

「バイバイ! ありがとうね!」

 マイクとシェリーが笑顔で手を振る。

「また何かあったらいつでも事務所に来いよー」

 コウも笑顔で彼らに手を振り返す。レイは無表情のまま顔を正面に向け、車を発進させた。

 レイはしばらく無言のまま車を走らせる。そして信号で停止したところでおもむろに懐から何かを取り出し、それをコウの顔の前に突き出した。

「ん、何?」

 突然のことにコウが眉根を寄せてそれを見つめる。それは茶封筒だった。

「受け取れ、コウ」

 レイが淡々とした声で言った。コウは怪訝な表情を浮かべながら、封筒を受け取り中を見る。そこには札束がぎっしりと詰まっていた。

「何このお金? おっさんも遂にお金貸してくれるようになった?」

「それはお前の取り分だ」

 レイの言葉にコウはますます眉をひそめる。

「何の取り分だよ」

「あの二人を換金した金の取り分だ」

「は?」

 一瞬、言葉の意味が理解できず、コウは思わず聞き返す。レイは一呼吸おいてゆっくりと言葉を繰り返した。

「あの兄妹を換金した金の取り分だよ」

 その言葉にコウの表情が固まる。レイは構わず言葉を続ける。

「お前の要求はあの兄妹の命だろ? その分の約束は果たした。あとはマフィアとは関係ない適当な罪であいつらを換金するだけだ。幸い奴らの指紋タップリの銃と車があるしな」

「……は? え、ちょっと待って」

「まぁ、奴らのおかげでスペリアスの内部抗争の情報は得られたからな。その礼ではないが、すぐに出てこられる罪にしてやるつもりだ。奴らにとっても良い勉強代になるだろう。自分の将来を左右する犯罪の証拠を他人に預けるなとな」

 コウは呆れた様子でレイを見つめる。

「……おっさん、鬼かよ」

 その言葉にレイはふんと鼻を鳴らす。

「あのマイクという男も言っていただろう? この業界は騙し騙されが日常だとな」

「いや、それにしたってさ――」

「これに懲りたら、くだらんバイトには二度と手を出さないことだ。いつまでも俺がお前の奇行を許すと思うなよ」

 レイの有無を言わさぬ物言いに、コウはそれ以上何も言えず、肩をすくめ大きくため息を吐くだけだった。

「こうしてコウくんはお金にされずに済みましたとさ。めでたしめでたし」

 窓から外を見つめながら、コウは皮肉っぽく呟く。その声はエンジン音にかき消され、誰の耳にも届くことはなかった。



END

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ある男の思惑から生まれたドタバタ劇。楽しんでいただけましたでしょうか?

全体的に専門用語を交えた言い回しで分かりにくい会話が多かったかもしれませんが雰囲気重視ということでご容赦を。


Lawless Hunterは自分としても思い入れが強い作品なのでどうしても続きが書きたくて数年ぶりに執筆させていただきました。

ネタはまだまだあるので1話完結形式の短編でどんどんシリーズの続きを書きたいと思っております。

また縁があればお付き合いいただけると幸いです。

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