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Lawless Hunter ~強盗へ行こう~  作者: 佐久謙一
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『この大間抜け野郎』

 電話に出るなり、サンドロの罵声が飛び込んできた。

「……いきなりご挨拶だな」

 レイが呆れた声で言った。

「何の用だ?」

『一つ確認だ。今、手前の周りには誰もいないな?』

「……あぁ、一人だが、それがどうした?」

 レイの言葉に、サンドロは一呼吸おいて言った。


『手前のところに殺し屋が向かっている』


「……どういうことだ?」

 レイが険しい声で尋ねると、サンドロは鼻を鳴らしながら言った。

『計画が漏れてるんだよ。金塊の回収人を捕まえる計画がな』

「何だと?」

『それで今、奴の子飼いの殺し屋がそっちに向かっている。黙っていても良かったんだが、手前には借りがあったからな。これで貸し借りは無しだ』

「俺とお前の計画はどうなる?」

『まぁ、俺の部下じゃ無いからな。計画を遂行したければ好きにしろ。どっちが俺の元に運ばれてくるか楽しみにしてるぜ』

 サンドロはゲラゲラと笑いながら言った。レイは顎に手をやり、険しい表情を浮かべる。

「……サンドロ、一つ質問だが――」

 しばらくして、レイが唸るようにして言った。

『何だ?』

「おかしくないか?」

『あ? 何言ってやがる? 泣き言か?』

「違う。お前の話に矛盾があるという事だ。お前が言った“奴”についてだが、何故、お前は奴が殺し屋を動かしたことを把握している?」

 レイの言葉にサンドロは沈黙する。レイは相手の返事を待たず、言葉を続ける。

「もし俺とお前の計画が漏れているならば、子飼いの部下など動かさん。お前は金庫番だ。武器や移動手段の調達など、組織の人間を動かせば必ずその情報が入ってくる。ここまで綿密に計画を立ててお前に反旗を翻そうとしている奴が、こんな雑な動きをするはずがない」

 レイがそこまで言うと、サンドロはククッと声を上げて笑い出した。

『腹立たしいほどに頭がキレる奴だ』

 サンドロの唸り声のような笑い声が大きくなる。

『あぁ、ネタバレしてやるよ。計画が漏れているというのは本当だ。だが完全に漏れてる訳じゃない。どういう訳か、奴は計画の事は把握しているが、それが俺とお前の計画だとは認識していない。だから分かりやすく派手に動きやがったんだ』

「計画だけが漏れている……?」

 レイがしばらく考え、やがて原因に思い当たり小さく唸る。

「あのスマホ――スパイアプリか……!」

 レイは兄妹が渡されたという連絡用のスマホのことを思い出した。兄妹の近くではサンドロの事は話していないからだ。

『ハッ、間抜けが』

「……初めに俺が一人か確認した辺り、お前も把握していたな?」

『ああそうだ。俺がお前らと連絡を取りあっていると知ったら、奴はすぐに身を隠すだろう』

「その口ぶりだと強盗犯の身柄はもう必要なさそうだな」

『分かりやすく殺し屋を動かしてくれたからな。その状況証拠だけで十分だ』

「……殺し屋の情報について聞いてもいいか?」

 レイが絞り出すようにして言った。その言葉にサンドロはゲラゲラと笑いながら答えた。

『教えてほしいのか?』

「金塊がいらないというなら構わんが」

『糞野郎が。いいだろう教えてやる』

 サンドロは舌打ちしながら言葉を続ける。

『殺し屋は二人組の男だ。得物は毒を塗った小さな針。暗殺を得意とし、銃やナイフといった分かりやすい武器は使わない』

「……なるほど、人混みから襲うにピッタリだな」

『この情報は貸しだぞ』

 サンドロの下卑た笑い声が響く。

「……あぁ、すぐに返すよ」

 レイはそれだけ言うと通話を切った。そしてスマホを仕舞いながらコウに視線を向ける。

「コウ」

『あぁ、聞いてた』

 コウがこちらに顔を向け、頷くのが見えた。

「急いでこの場から離れるぞ。こんな人混みの中では殺し屋に対処できん」

『そうだな。とりあえず車まで移動する?』

「あぁ。一旦退いて向こうの出かたを――」

 そこまで言って、レイは言葉を失う。レイの視線の先――コウの背後から近付くスーツの男が視界に入ったからだ。

「コウ!!」

『おっさん!!』

 レイと同様にインカムからコウの声が響く。コウが険しい表情をレイに向けていた。

「『後ろだ!!』」

 二人は同時に叫ぶ。そしてその声を合図にするように勢いよく振り返った。

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