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落ち着かない

 おれの田舎のジイさんは落ち着きがない。


 子どものころは気にならなかったが、さすがに中学生にもなると落ち着かないことが目につく。


 まずジッと立っていられない。


 何か待っていれば1~2メートルあたりをウロウロ歩きまわり、立ったりしゃがんだりを繰り返す。


 少し落ち着けと言っても本人は至って落ち着いているつもりらしく、注意される意味が分からないと言う。


 もちろん食事の最中も、アレちょっとコレちょっと食べながら、テレビはリモコンを使わずにわざわざボタンで操作するため立ったり座ったりする。しかもCMのたびにあちこちチャンネルを変えるので、こっちのほうがイライラする。


 バアさんはまったく知らん顔で、これだけ付き合いが長いと何とも思わなくなるらしい。


「若い時はこんなものじゃなかった。結婚してから今までで1番落ち着いていられたのは、ジイさんが戦争に引っ張られていたときだ」と言うから、よほどのことだったんだろう。


 これでよく生きて帰って来てくれたと感心するけど「運はとてもいいんだ」と、自慢する。


 こんなジイさんが反面教師になったのか、オヤジはいつも落ち着いている。


 たいがいのことに動じない。

 おれが校舎の2階から誤って落ちて足を骨折したときも、隣の家からボヤが出たときも、表情1つ変えずにいたが、それ以外は至ってフツーだ。


 友人に言わせると、何もかも頭ごなしに言うオヤジじゃないほうが羨ましいらしいけど……。


 おれはこのどっちもの血を受け継いでいるわけだけど、自分ではまだどっちを強く受け継いでいるか分からない。

 どっちであってほしいのかも分からない。


 ある時、ジイさんとオヤジが2人で呑んでいると、ジイさんが、お前はドッシリ構えているように見えてちっとも落ち着いておらんと言った。

 それを聞いたオヤジはジイさんはちっとも落ち着いていないようで、いつも落ち着いているのが不思議だと言った。


 そんなやりとりをキッチンで仲良く聞いていたバアさんと母さんは、2人ともどっちもどっちだと笑っていた。


 おれにはよく分からなかったが、母さんが言った。

「あんたは私たちに似ているから安心しなさい」


 なのに、なぜか残念な思いがぬぐい切れないのはどうしてだろう。

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