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理想郷

遥か神話の時代より

誰もが夢みた理想の大地


数多くの人々が


その地を目指して旅立った


志なかばで行き倒れ


絶望し


あるいは神を恨みながら死んで行った



今日もまた一人

見果てぬ地を求めて旅立つ者がいる


家族や友人に引き止められながら

多くの者には罵りと嘲笑を浴びせられながら


それでも必ずどこかにあると信じ

まっすぐな瞳を果てしなく広がる平原に向けて


出発した




旅は熾烈を極めた


水や食料は何度も底を尽き


問答無用で襲いかかる者たちと命がけの戦いを繰り返され


治療法も分からない熱病にうかされることもしばしばだった



幾年もが過ぎた


理想郷は見つけられなかった


旅人は失意のまま家路についた


このまま帰れば出発した以上に笑い者だ

それでもこれ以上行く宛てなどない



家に帰った旅人を待っていたのは

無事を祝う家族と友人たちだった


温かい食事


喜びの言葉


安心して眠れる寝床


旅人はその夜

涙を流して喜んだ


理想郷など探さなくともあった


旅人は生まれた時から理想郷に暮らしていたのだ


旅人はその後

生まれた街で暮らし

幸せな生涯を送った


そして旅人の家族や

友人や周囲の者も皆幸せに暮らした


旅人が経験した過酷な旅の話を聞かされるごとに

この街がいかに素晴らしい場所であるか教えられたからだ


だから時々街にやって来る旅人に

旅の苦労をねぎらって存分にもてなし

この場所の素晴らしさを教えた


しかし旅の者たちはひとときの安らぎを得ると

またいずこともなく旅立ち


運良く生き延びた者はいずれ

生まれ故郷に帰るのだろう




平原には伝説が残っている


この地のどこかには

理想郷が隠されていると


そこは食べ物に困ることなく

誰もがたがいに喜びあい

襲われる敵もいない場所だという



今日もどこかの街から理想郷を夢みて誰かが旅立つ

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