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視線

 かろうじて飛び込んだトビラが閉まった直後、深呼吸するため頭を上げたボクの視線いっぱいに、鋭い視線が突き刺さった。


 しまった! ここ、女性専用車だ!!


 だけどトビラはすでに閉まり、朝のラッシュの中で他の車両にも移れない。


 ヘタをすると女性ばかりの中を移動することそのものが痴漢に疑われかねない。

 仕方なく飛び込んだトビラに向かって万歳して立つことにした。



 ……なんとか今はこれでやり過ごして、次の駅で乗り移ろう。



 それでも背後から冷たい気配がヒシヒシと伝わってくる。


 うう、ボクだって乗りたくてここに乗ったんじゃないよ。

 階段を降りて一番近くのトビラがここだっただけじゃないか。


 ……それにしてもこの中って、ずいぶんと化粧品のニオイがする。

 女性専用車だし、1人ひとりはそうでもないのだろうけど、これだけ集まるとかなり強い。


 早く次の駅に着かないかな……。



 あっ! しまった!

 この区間って一番長くて、当分扉は開かないぞ。



 ああ、だんだんニオイにやられて頭がクラクラしてきた。

 万歳してるこの体勢もキツイ。

 もうダメだ、目の前が真っ白になっていく……。




 目が覚めたのは駅の救護室のベッドの上だった。


 駅員さんの話だと、目をまわしたボクは、周りの女性に助けられ、偶然、中にいた看護師さんがすぐに手当してくれたらしい。


 そして、誰かが携帯で鉄道会社に連絡して次の駅に着くまでには担架まで用意されていたとのことだ。



 冷たい視線を浴びて、女性たちに無意識に反目していたことが恥ずかしい……。

 見ず知らずの人たちに本当にお詫びと感謝の気持ちでいっぱいだった。




 その後、ボクは時々女性専用車に乗ることがある。


 でも、あの時のような突き刺す視線が向けられることはない。


 もう化粧のニオイも気にならない。

 お化粧も服も心も完璧に女になっている“目覚めた”ボクには


 ……今日も微妙な視線が向けられる。

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