使い道
ある企業が画期的な商品を開発した話題で世間はもちきりだった。
いったいどんな商品なのか、発表の日、みんなが固唾を飲んで見守った。
会見の席に責任者が現れ、口を開く。
「我が社はかつて誰も考え得なかった商品を開発しました。それは……」
発表の瞬間を逃すまいと、カメラのフラッシュがまばゆくはためく。
「それは、くっつかないノリです」
会見の場はしばし空白の間が空く。
くっつかないノリ?
そんなもの誰も考えないだろうけど、何に使うんだ?
「実際にお見せしましょう」
この反応は当然とばかりに、テーブルに置かれたサンプルをヘラですくって紙に塗り、もう1枚の紙に貼って高々とかざした。
そのとたん紙は剥がれてペラリと落ちた。
……いや、だからこれが何の役に立つの?
……ノリの意味がないじゃないか?
ざわめきの中、彼はゆっくり会場を見渡す。
「このノリはいかなるものをもくっつけません。しかしこれが何の役に立つのか、実は我々にも分からないのです。
そこで、このノリの最も有効な使い方見つけた方に、賞金3億円をプレゼントします!!」
ニュースは瞬く間に全国に広がり、誰もがくっつかないノリに頭を悩ませた。
ノリのサンプルが発売されるやいなや人々はこぞって購入し、毎日ネットで配信される新しい提案とボツ案を見て一喜一憂した。
しかし1年たっても有効な使い方は出てこず、人々の興味は次第に失われ、いつしか忘れられていった。
3年もたつと使い方ではなく、一時の国民的ブームとして懐かしく思い出されるものとなった。
そしてまだ賞金の3億円の話は生きていると知ると、またわずかな時間だけ小さなブームを起こすのだ。
もはやこのノリが
髪の毛に塗るとホコリがからみついて、シャンプーなしですごくキレイになるとか。
部屋や机の掃除にも使えるとか。
一時的な絶縁体になる上に、すぐ剥がせて便利とか。
理想的な衝撃緩衝剤になるとか。
パーティーグッズに使えるとか。
そんな、もうみんな知っていることには誰も興味を持っていない。




