ラジオ
中3の夏休み、オレは受験に向けてスパートをかけていた。
時間は深夜を回っているが、静かなぶん集中できる。
聞こえてくるのは眠気覚ましのラジオだけ。
苦手な数字だが、今は気分がノって調子がいい。
さて、次の問題は……
「X=-3」
ラジオから声が聞こえてきた。
問題の答えはまさにそれ。
偶然はあるもんだなと、ちょっと嬉しくなった。
次の問題を解こうとすると、
「X=2,Y=-4」
DJの声で次の問の答えが聞こえてた。
受験問題の話題かと手を止めて、耳を傾けると話題のお笑い芸人の話だ。
どう言うことだ? ネタにx=2とかあったっけ?
オレは気を取り直して化学をすることにする。
え~と、エチルアルコールの分子結合は……。
……ネタでやるにしても、すっげえマイナーネタだ
聞き違いだとしても、オレ何と聞き違った?
なんだか気味が悪い。
ラジオを切ったけど、どうも気になって集中できない。
今日はもう止めて眠ることにしよう。
ところが、ラジオはその夜から勉強をジャマしまくり、調子を崩したオレは第1志望とは別の高校に進まざるを得なくなった。
そこで少し変わったやつと友達になった。
普段の授業はパッとしないのに、テストだけは驚くほどいい点を採るやつだ。
ある時、オレに自分の持つ秘密のi-Podの話をしてくれた。
「ボクは答えを導くのは苦手なんだけどね、試験勉強の前にこのi-Podを使って勉強すると問題の答を先に教えてくれるんだよ。
だから答えを分かった上で、なぜそうなるかを復習するとすんなり頭に入るんだよ」
だったらあのラジオは!!
気味が悪くても構わない!
あれがあれば来年の大学受験はもらったも同然だ!
オレは押し入れの奥に3年間押し込めていたラジオを引きずり出した。
電源を入れ、たわいもない局にセットして机に向かって勉強してみる。
「長い間眠っていたようだが。ここはどこだ?」
ラジオから声が聞こえた。
やった! よく寝むっていたようだ。
「ここはオレの部屋だ。押し込めてすまなかった」
「そうだったのか」
「これから勉強始めるんだ。また答えを教えてくれ」
「それはいいが、しばらく世の中から遠ざかっていたから最近のことが知りたい」
「おやすい御用だ」
こうしてオレはラジオをつけっぱなしで受験勉強に励み、とうとう志望大学に合格した。
「これもラジオのおかげだ。なんてお礼を言っていいのか」
「礼ならオレをどこかに捨ててきてくれ」
「何だって!? そんなことできるはずないだろう!!」
「オレができるのは、学生の勉強を見てやることくらいだ。
だから持ち主が大人になったらオレは用無しだ。
捨てられて壊されて、またどこかのラジオに入って同じことをする。
ずっとそうしてきた。
捨てられるのは次の誰かに出会える旅立ちだ。
旅立ちは幸せなんだ」
オレはしばらく考えて、ラジオの電源を切った。
次に電源が入った時には驚くだろうな。
壊れても絶対に直してやるぞ。
オレは教育課程に進んだんだ。
これからは、山ほど学生に会わせてやる。




