夢物語り
身長10メートルは優に超える人間がのし歩く風景。
それがこの星の住人だ。
これほど大きい理由は、年間を通じて氷点下の低い気温が続く気候にある。
昼間に受ける太陽の熱と食料から得られる体温が、夜から朝にかけて失われてしまわないためには、大量のお湯の方が少しでも冷めにくいように、体そのものを大きなタンクにする必要があるのだ。
そんな彼らにとって唯一頭を悩ませる小動物がいた。
姿形は彼らと似ているが大きさは1メートルにも満たず、地中に巣穴を掘って住んでいる。
他の動物よりも頭が良くイタズラ好きで、うっかりするとケガをさせられてしまうことがあるのだ。
仕方なく人々は小動物が悪さをしないよう、あちこちに罠を仕掛けては、せっせと退治していた。
この星の地中深くには、1枚のプレートが埋められている。
人類、そして小動物に内容は理解できないが、もし翻訳すればこう読める……
『地球温暖化の進行は、我々人類の手には負えなかった。
人類の命運を賭けて建設した地下シェルターへは、高温多湿のため人類の身長がどんどんと小さくなったことが幸いし、できるだけ多くの人々を選んだ上での移住が完了しているが、その機能がいつまで持つのか分からない。
それよりも、過去の地球の歴史を見る限り、温暖化とは氷河期が始まる予兆なのだ。
大部分の地上に残される人々がこの先どうなるのか、シェルターに避難した人々と同様に何の保証もない。願わくば我々人類に幸多かれと祈る。
西暦 2614 記』
数万年後。
煙突から絶え間なく黒煙が立ちのぼっている風景が見える部屋で、書類に埋もれた机でタイプライターを打ちながら、男が早口でしゃべっている。
「……そんな事より、蒸気の力を使って走る車ができたんだって! ウソだと思うなら、明日、町の広場に来てみろよ!
まったく、この産業革命まっただ中の時代に、巨人だ小人だなんて下らない童話の話なんてやめてくれ!」




