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アリ

 かつての地球温暖化やその後に襲われた寒冷化など、さまざまな地球環境の変化に立ち向かい勝利してきた我々人類であったが、このわずか十数年という短い期間で起きた急激な悪化によって、もはや地上での生存が不可能なところまで追いつめられていた。

 地球上を席巻し、繁栄した姿は見る影もなく、生き残った我々人類は、少しでも地上の環境に影響されない地下に、アリの巣のように入り組んだ都市を築いて生き延びるしかなかった。

 だが、地球という一つの惑星で起こされた環境の変化など、太陽系規模、宇宙規模の歴史に比べればほんの一瞬にすぎない。今はただ生きのびて待ち続けていれば、再び人類が繁栄できる環境が必ず巡ってくるはず。

 それが数千年先か、数万年先になるかは分からないが、どれほどわずかな可能性でもいい、我々人類をこんなところで終わらせることなく、未来へとつなぎたい。

 そんな思いから、キボー博士を中心とした科学者たちは、今生き残っている人類全員を個々のカプセルで収容できる大規模コールドスリープの装置を完成させた。

 地上ではさらなる悪化の一途をたどる現実を思い、いつか人類が生きられる世界へとたどりつくことの一縷の、しかし切なる希望を託して、人々は次々と目覚める宛てのない深い眠りへと旅立っていった。



 地中の暗い穴の中で目を覚ました我々は、とうとう明るい陽の光が降り注ぐ地上へと足を踏み出した。

 緑豊かな世界は、再び我々にとって命の恵みあふれる大地へと戻ってきてくれたのだ。

 あの悪化の時代からどれほどの時間が経過したのか、もはや知るすべもない。

 だが、確かに我々はこの新しい世界で目を覚ますことができたのだ。

 地下にはまだたくさんの人類が保管され、コールドスリープ装置の入り口には、これを作ったキボー博士が書いたとされる未来の人類へ向けての願いの言葉が記されている。


――いつか地上へと戻るその日が、我々の輝かしい未来の始まりであることを切に望む――


 目覚めたばかりの我々が最初に突き当たった問題は食料の確保だった。

 生きられる環境とはいえ、幾多の変化を経た地球に暮らす現在の生き物は、我々にとっての食料に適さなかったのだ。

 だが、一つひとつ「タマゴ型で分けられたカプセル」の殻を割って、柔らかな中身を大アゴでガッチリくわえると「うぐっ」とうめき声をもらしてピクピク動く。

 当時のままの状態で保存されてあり、じつに新鮮そのものだ。

 我々の輝かしい未来を見越して、これほど多くのエサを用意してくれたキボー博士には、本当に感謝の言葉もない。

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