半額料金
我々は外宇宙探索隊として、宇宙開発機構から太陽系外へと初めて出た地球人として、記録的な成果を挙げている。
間違いない。冥王星を横目に見ながら、三回目の超光速航行実験を始めようとしている今、僕は初めて実験をした時と同じ興奮を抑えきれない。同じ宇宙船に乗るクルー達も同様のようだ。
この実験は、多大な危険が伴うものなのに、僕らはまるで、理科実験を行う小学生のように興奮したままだった。
「皆、落ち着けよ。三回目だからって気を抜くにゃ」噛んでしまった。
一番冷静じゃないのは僕らしい。クルー達が皆笑って、冷静になってくれたようだ。この実験が終わったら、また三回ほど超光速航行をして地球に戻る算段だ。絶対に成功させなくては……。
機械を操作して、エンジンにエネルギーを充填する。超光速航行の理論は難しい数式や専門用語を使わないと説明しづらいので、割愛するが、ともかく大変な技術なわけだ。
さぁ、準備が整った。超光速航行の旅、スタートだ。
10分ほど、とてつもない後ろへのGを感じながら超光速航行が順調に進んでいることを確認した。
これ以上は船体がもたないので停める。G制御技術のお陰で潰されはしないが、それでも昔のロケット打ち上げの時と同じようなGになってしまうそうだ。打ち上げの度にあんなGを感じていた昔の宇宙飛行士を尊敬するよ。
一瞬の真っ暗な世界から一転して、元の星空に戻った瞬間。僕らはとんでもないものに出くわした。
いわゆるUFO。
明らかに我々人類以外が作ったのであろう、巨大な人工物が目の前に現れたのだ。
僕らは動揺しながらも、ともかくその円盤状のUFOに、近付いて見ることにした。
近付くにつれ、あまりの巨大さにどんどん全体の様子が分からなくなる。表面は思ったよりも平らでなく、凸凹があるようだ。ちょうど不時着に適した滑走路のような場所を見つけ、ゆっくりと相対速度を合わせる。
僕ともう一人のクルーだけで、その円盤に上陸することにした。
宇宙服を着込み、円盤に降り立つ。
「なんてクレイジーな代物だよ」
もう一人のクルーがそう呟いたが僕は何も応えなかった。少し歩くと、内側に入る坂道を見つけた。僕らは躊躇いながらも、ゆっくりとその坂道を降りた。扉の前に立ち、中に入る方法を思案したのも束の間、扉は自動で開いた。我々を招き入れてくれるようだ。
中に入ると扉が閉まり、閉じ込められたかと思いきや、近づくとすぐに開いた。監禁するつもりはないらしい。足もとのライトが通路の奥へ招くように伸びていく。
「不用意に入るのは危険だと思います」
もちろんそう思う。しかし、攻撃するつもりなら我々が近づいた時点でするはずだ。クルーには僕が一人で行くので、宇宙船に戻って待機するよう指示すると、自分も行くと譲らない。当然か。宇宙では一人で活動しないのが原則だ。
僕らが光の案内に従って進むこと数分。次の扉に行き当たった。この奥に、僕らを迎えたものがいる。わずかに躊躇したが、ここまできて引き返せる訳がない。思い切って足を踏み入れた。
……目にしたものに、僕らは言葉を失った。そこには、蒼く輝く地球があったのだ。
立体映像は見慣れているが、これはそんなレベルじゃない。有り得ない。超光速航行で三度も移動した距離だぞ?
『SSSEへようこそ』
いきなりどこかのスピーカーから声がした。何より響いたのは地球の言葉だったことだ。
『ここはStepping-Stone Station to the Earth(地球への飛び石の駅)です』
「どう言うことだ!?」
姿の見えない相手に問いかけると、含み笑いと共に返事があった。
『どうも何も、言葉どおりここは地球へ直行するプラットフォームと言う訳です。
ここを利用されれば、あなた方の宇宙船だとおよそ7分で地球へ到着できます』
7分……我々がどれほどの時間と労力をかけてここまで来たというのに。
「それではあれは、間違いなく本物の地球なのだな?」
「そうです。ですが、ご利用には通行料金が必要となります」
尋ねると、声はそう応えた。
「いくら必要なんだ?」
「大人ですと、地球の金額でお1人様片道2000兆ドルです」
「に、2000兆ドル!!」
僕は目を剥いた。
いくら何でも高すぎる!!
「待ってください隊長。我々がここまで来るのに8600兆ドルかかっています。
これをクルー4名で割ると2150兆ドル。1人につき150兆ドル安いですよ」
「確かに600兆ドル安くなるか。
しかし一度戻ったらまたここに来るためにそれだけの費用がかかるのだろう」
「ご心配はいりません。今度は地球側にあるSSSGをご利用ください」
「G? GとはGalactic system(銀河系)という意味か?
そんなものが地球の近くにあるなんて聞いたとこはない」
「もちろんご利用資格のない方には見えないようにしています。ですがあなた方はここまで来た。これを地球の人々に教えれば地球人も利用資格を持つことができます」
そうだ。理解を超えたUFOとはいえ、ここで引き返しても、この装置があれば費用を大幅に削減でき、またここまで戻って来れるではないか。
「今は手持ちがないのでお支払いできませんが、地球へ戻ってからでもいいか?」
「まあ、初乗りですからサービスいたします。宇宙船が入るゲートを開きましょう」
僕らは宇宙船に戻り、ことの次第を残っていたクルーへ説明して、声の主が開いてくれたゲートへ進入した。宇宙船の中で我々は、この類い稀な遭遇に興奮しきりだ。
ゲートを通り抜ける直前、我々の乗る宇宙船に先ほどの相手からの通信が届けられる。
「それではまたご利用ください。そうそう、料金は半額のお1人1000兆ドルで構いません。
こんなことで、小学生のように興奮するなんて。文明にしろ言葉遣いにしろ、もう少し成長されてから大人料金をいただくことにしましょう」 我々は外宇宙探索隊として、宇宙開発機構から太陽系外へと初めて出た地球人として、記録的な成果を挙げている。
間違いない。冥王星を横目に見ながら、三回目の超光速航行実験を始めようとしている今、僕は初めて実験をした時と同じ興奮を抑えきれない。同じ宇宙船に乗るクルー達も同様のようだ。
この実験は、多大な危険が伴うものなのに、僕らはまるで、理科実験を行う小学生のように興奮したままだった。
「皆、落ち着けよ。三回目だからって気を抜くにゃ」噛んでしまった。
一番冷静じゃないのは僕らしい。クルー達が皆笑って、冷静になってくれたようだ。この実験が終わったら、また三回ほど超光速航行をして地球に戻る算段だ。絶対に成功させなくては……。
機械を操作して、エンジンにエネルギーを充填する。超光速航行の理論は難しい数式や専門用語を使わないと説明しづらいので、割愛するが、ともかく大変な技術なわけだ。
さぁ、準備が整った。超光速航行の旅、スタートだ。
10分ほど、とてつもない後ろへのGを感じながら超光速航行が順調に進んでいることを確認した。
これ以上は船体がもたないので停める。G制御技術のお陰で潰されはしないが、それでも昔のロケット打ち上げの時と同じようなGになってしまうそうだ。打ち上げの度にあんなGを感じていた昔の宇宙飛行士を尊敬するよ。
一瞬の真っ暗な世界から一転して、元の星空に戻った瞬間。僕らはとんでもないものに出くわした。
いわゆるUFO。
明らかに我々人類以外が作ったのであろう、巨大な人工物が目の前に現れたのだ。
僕らは動揺しながらも、ともかくその円盤状のUFOに、近付いて見ることにした。
近付くにつれ、あまりの巨大さにどんどん全体の様子が分からなくなる。表面は思ったよりも平らでなく、凸凹があるようだ。ちょうど不時着に適した滑走路のような場所を見つけ、ゆっくりと相対速度を合わせる。
僕ともう一人のクルーだけで、その円盤に上陸することにした。
宇宙服を着込み、円盤に降り立つ。
「なんてクレイジーな代物だよ」
もう一人のクルーがそう呟いたが僕は何も応えなかった。少し歩くと、内側に入る坂道を見つけた。僕らは躊躇いながらも、ゆっくりとその坂道を降りた。扉の前に立ち、中に入る方法を思案したのも束の間、扉は自動で開いた。我々を招き入れてくれるようだ。
中に入ると扉が閉まり、閉じ込められたかと思いきや、近づくとすぐに開いた。監禁するつもりはないらしい。足もとのライトが通路の奥へ招くように伸びていく。
「不用意に入るのは危険だと思います」
もちろんそう思う。しかし、攻撃するつもりなら我々が近づいた時点でするはずだ。クルーには僕が一人で行くので、宇宙船に戻って待機するよう指示すると、自分も行くと譲らない。当然か。宇宙では一人で活動しないのが原則だ。
僕らが光の案内に従って進むこと数分。次の扉に行き当たった。この奥に、僕らを迎えたものがいる。わずかに躊躇したが、ここまできて引き返せる訳がない。思い切って足を踏み入れた。
……目にしたものに、僕らは言葉を失った。そこには、蒼く輝く地球があったのだ。
立体映像は見慣れているが、これはそんなレベルじゃない。有り得ない。超光速航行で三度も移動した距離だぞ?
『SSSEへようこそ』
いきなりどこかのスピーカーから声がした。何より響いたのは地球の言葉だったことだ。
『ここはStepping-Stone Station to the Earth(地球への飛び石の駅)です』
「どう言うことだ!?」
姿の見えない相手に問いかけると、含み笑いと共に返事があった。
『どうも何も、言葉どおりここは地球へ直行するプラットフォームと言う訳です。
ここを利用されれば、あなた方の宇宙船だとおよそ7分で地球へ到着できます』
7分……我々がどれほどの時間と労力をかけてここまで来たというのに。
「それではあれは、間違いなく本物の地球なのだな?」
「そうです。ですが、ご利用には通行料金が必要となります」
尋ねると、声はそう応えた。
「いくら必要なんだ?」
「大人ですと、地球の金額でお1人様片道2000兆ドルです」
「に、2000兆ドル!!」
僕は目を剥いた。
いくら何でも高すぎる!!
「待ってください隊長。我々がここまで来るのに8600兆ドルかかっています。
これをクルー4名で割ると2150兆ドル。1人につき150兆ドル安いですよ」
「確かに600兆ドル安くなるか。
しかし一度戻ったらまたここに来るためにそれだけの費用がかかるのだろう」
「ご心配はいりません。今度は地球側にあるSSSGをご利用ください」
「G? GとはGalactic system(銀河系)という意味か?
そんなものが地球の近くにあるなんて聞いたとこはない」
「もちろんご利用資格のない方には見えないようにしています。ですがあなた方はここまで来た。これを地球の人々に教えれば地球人も利用資格を持つことができます」
そうだ。理解を超えたUFOとはいえ、ここで引き返しても、この装置があれば費用を大幅に削減でき、またここまで戻って来れるではないか。
「今は手持ちがないのでお支払いできませんが、地球へ戻ってからでもいいか?」
「まあ、初乗りですからサービスいたします。宇宙船が入るゲートを開きましょう」
僕らは宇宙船に戻り、ことの次第を残っていたクルーへ説明して、声の主が開いてくれたゲートへ進入した。宇宙船の中で我々は、この類い稀な遭遇に興奮しきりだ。
ゲートを通り抜ける直前、我々の乗る宇宙船に先ほどの相手からの通信が届けられる。
「それではまたご利用ください。そうそう、料金は半額のお1人1000兆ドルで構いません。
こんなことで、幼い子供のように興奮するなんて。文明にしろ言葉遣いにしろ、もう少し成長されてから大人料金をいただくことにしましょう」




