運命
私は小さい頃から予知夢を見る。
それも断片的なイメージなんてものじゃなく、すっごくリアルで鮮明なの。
その日に起こることや出会う人のことまで全部!!
だからイヤな夢を見た時は、そうならないようワザと違う返事をしたり、しなかった行動をしたりして万事うまく切り抜けてこれたわ。
この能力のおかげで、私はすっごく得した人生を歩んでると思うわ。
よく物語りで未来を知ってしまって不幸になるっていうのがあるけど、あれって大人になってから急にそんなことができるようになったりするから能力の使い方が分からずに、不幸になるのよ。
毎日、毎晩リアルに予知夢を見続けてる私とは経験が違うわよね。
なによりこの能力は“運命の人”が誰なのか分かるっていうのが、いちばん便利なのよ……この人じゃないんだぁって、残念なことまで分かるのは、ヤなところなんだけど。
でも今の彼は夢で見たとおりビビッ! てきちゃったし、付き合ってる今はすっごくハッピー!
まっ、結婚まではしないんだけど、とってもシアワセよ。
こんな私も就職活動しなくちゃいけない年になった。
だけど私がなにになるか決まってる。
占い師よ。
安直だって言われるかもしれないけど、もともと人と話すのは大好きだし、私にとってコレしかない天職といえる。
こうなることは昔っから決まってた……決まってたってことは、もちろん私が占い師で成功するってことが分かってるから。
あらかじめ夢で見たとおり、その日にやってくるお客さんに、見たとおりの話をするだけだもの。
夢の中でお客さんとトラブルがあったとしたら、現実ではそうならないようにできるのが大きな強みね。
そして、私はすぐに有名になった。
全国から相談にのってほしいって人が毎日押し寄せて、手紙が毎日ダンボール箱で届けられ、メールなんて数時間ごとにパンクするほどだ。
だけど毎日これじゃ体が持たない!
会いにきてくれる人の数が多すぎて覚えきれないわよ!
まさかこんなことになるなんて予知夢にはなかった!
これは夢よ!
そう、きっと悪い夢。
もうすぐ目が覚めて、占い師なんてしたら、こうなるんだ~ってオチが待ってるはずよ。
……だけど、いくら朝をむかえてもそんなオチは来ない。やっぱりこれが現実なんだ。
仕事を終えてベッドに潜り込んでも明日会う人たちのことを覚えておくために、まともに眠ることもできず、心が安まる時がない。
彼と会う時間もなくなり、うやむやのうちに別れてしまったその日でさえ、私のもとには相談待ちの人たちが長い列をつくっていた。
もう、イヤ。
人の悩みなんて聞きたくない。
だけど、私のことを頼って……
どうでもいい悩みならともかく、本当にどうしようもなくて、私に断られたら死ぬしかないところまで追いつめられた人がいるからには……
それさえも夢で分かるからには、放っておけなくて……。
苦しい……つらい……。
ある日、私にとって意外な男性がやってきた。
本当にビックリしたわ。
夢で見なかった人がくるなんて、これまでなかったもの。
……あ、それとも、もうきてくれる人のこと覚えてられなくなったのかな? それとも、まさか私の予知夢の能力が弱くなったのかも……。
「お悩みごとはなんですか?」
この仕事を始めてから、こんなことを聞くのは初めてだわ。
「ボクの悩みですか? それよりもあなたの悩みを解決したくてきました」
この人、なに言ってるの?
「実はボク、幼いころから夢を見るんです。そのころはよく分からなかったのですが、どうやら困っている人の苦しみが見えるみたいで。
ここ数カ月、ずっと一人の女性が苦しんでいるのが見えていました。先日、雑誌にあなたのことが載っていて、やっとその女性が誰なのか分かりました。
普通はこんな話信じられないでしょうけれど、あなたなら信じますよね」
うん、信じられる。この人も私と同じような能力の持ち主なんだわ。理屈じゃなく、感じるもの。
「……私の悩みは……」
半年も待たずに、私たちは結婚した。
私はまだ占いを続けてる。
あんなにつらかった仕事だけど、私一人で抱え込んでいたときと違って、彼が支えてくれるおかげで随分と楽になったから。
こんなふうに思えるようになったのも、彼のおかげ。
私にとって彼は、運命の人だった。
だけど彼が現われるまで、私は彼のことを知らなかった。
予知夢の能力なんてぜんぜん通じなかったからこそ運命だとか言われるかもしれないけれど、これまでたくさんの人にアドバイスすることで運命を変えてきたからこそ、あえて言いたい。
私は運命なんて信じない!
やっぱり私は人と話すのは大好きだし、悩んでいる人には、元気に明るくなってほしい。
私の能力はそのためにあるんだもの。




