静寂
地球外生命体の存在を確認するため各国が協力して設置した巨大アンテナに、とうとう宇宙人からとおぼしき電波が捉えられた。
そこには薄暗い会場の中に進み出た二人の宇宙人が、たくさんの人々を前に、何かを語りかけている映像が映し出されていた。
二人の声は悲壮感に満ち、彼らが語る言葉に人々は悲しみの叫びや嗚咽をもらしている。
電波が送られて来た方角を詳しく調べると、そこは何千億年もはるか昔に超新星爆発の余波に巻き込まれ、数多くの星が消滅している空間であった。
その事実が発表されると世界中に衝撃が走る。
人類が誕生するよりもはるか遠い昔に文明を持った知的生命体が存在し、自らの星が失われる悲しみを宇宙に向けて発信した、最後のメッセージではないだろうか?
もはや『宇宙人はいるか?』という何度も繰り返されてきた無意味な議論は吹き飛び、彼らが何を訴えているのか? に人々の注目が集まった。
科学アカデミーは世界中の科学者や言語学者たちを呼び寄せ、解読チームを結成して日夜解読に没頭すること6年。
ついにそのメッセージの内容を解き明かしたと発表した。
そして世界中から記者を招き緊急会見を開いたのだ。
詰めかけた記者たちは解読チームの到着を今や遅しと待ち構えていた。
しかし、予定時刻を2時間過ぎても発表は始まらない。
「解読に一部誤りが見つかり、今日は発表が中止されるかも知れない」
という説明がなされたが、世界中の人々が固唾を飲んで待ち望んでいる瞬間だ。
例え内容が一部が不正確だとしても、第一次報告の形でも構わないので発表してほしいと記者たちから声があがる中、解読チームの責任者がようやく発表の席へと姿を現した。
「まず最初にお断わりしておきたいのは、今回我々が受け取ったメッセージは天文学や生物学にとどまらず、地球の多くの分野において重要な資料であるということです」
重々しく口を開いた責任者の眉間には、深いシワが刻まれている。
「人類にとって地球外生物からだと確証できる初めてのメッセージの内容が、自らの星を失う悲しみや辛さだったせいでしょうか……。
いいえ、それでも、もし我々地球人が同じ立場に立たされた時どのようにすればいいかの指標にもなる重要なメッセージであり、世界の人々が注目しています。
さあ、どうぞお話しください……」
会見を進行するアナウンサーにうながされ、バックにメッセージ映像が流される。
「……彼らの会話は私が同時通訳します。
人々のざわめきにはテロップを適用しました……」
人々が待つ薄暗い会場へ進み出る2人の宇宙人……。
『はいっ! どうもよろしくお願いしま~すっ!』
『ニュルグレッペです!』
『いやあ、ボク最近、テテポッチが気になってましてね』
『なんやそれ? 自分、いきなりやなあ……』
……………………………………………………。
「……しかも、ネタが面白くないのです。
これは文化の違いと言わざるを得ないのでしょうけれども……」
静まり返った会見の場で、バックに流れる映像に映る観客たちの悲壮な声や嗚咽のテロップには
「ブラボー」
「アンコール」
が、淡々と流されていた。




