偉人の言葉
トビラを開くと違う世界に通じているなんてアイデアは、もう古臭いと思っていた。
僕の場合は窓で、ただしいろんな世界ではなく、ある場所が見えるだけ。
気づいたのは1カ月間前。
エアコンの室外機の調子を見ようと窓を開けたとたん、僕は目を疑った。見慣れた近所の風景のはずが、はるか高みから地上を見おろす景色に様変わりしていたんだ。
あわてて窓を閉めると、いつもの住宅街の風景に戻っている。
深呼吸してもう1度開けると、やはり景色が違う。
僕は誰にも話さないことにした。
消えて無くなるような気がしたからだ。
そこは地球より少し遅れた文明があり、僕の姿は見えないらしい。僕は彼らを眺めるのが日課となった。遅れた文明にヤキモキもさせられたけど、僕は彼らに干渉することはない。
こんな非現実的なことに深く関わるのはロクなことにならない。いろんな話の定番だ。
本当にこれでいいのか時々不安になった時は、空を見上げて考え事をしている1人の男を見つけてボクの暮らしがどんななのか、一生懸命、心で伝えることにした。
伝わっているかどうか分からなかったけど、
文明が進むにつれ、これで良かったんだと思う。
昨夜、この国の歴史に名を残す偉大なる発明家が、その偉大なる生涯を終えた。
彼のおかげでどれほど人々の暮らしが楽になっただろうか。
しかし彼は決しておごりたかぶることもなく、謙虚で真摯な姿勢を貫き、人々のために人生を捧げたのだ。
彼はすばらしい発明を発表するたびに、ある感謝の言葉を繰り返した。
彼の墓には、彼への畏敬の念をこめてその言葉が刻まれている。
「私の頭の中に、電波を送る者がいる」




