悪の組織
急激に勢力を拡大し始めた悪の組織は、またたく間に周辺一帯を牛耳った。
昔からその場所で暮らしていたものたちは、悪の組織に対抗しようとしたが、勢力が拡大するスピードに追いつけず、次々と軍門に下らざるを得なかった。
このまま組織の勢力が拡大し続けると、被害は周辺だけにとどまらない……自国だけでの事態の収拾は無理と判断した首脳陣は、海外のエキスパートチームと提携し相談した結果、悪の組織を壊滅すべく、強大な軍隊を派遣する決定を下した。
これに対し、悪の組織は周辺一帯を巻き込みながら抵抗したため、想像以上に被害が拡大し、どちらの力も衰退させながら、なんとか悪の組織を壊滅させることができた。
チームはその後も周辺一帯に残り、警戒を続けたが、網の目をかいくぐって逃げのびた組織の残党が別の一帯で新たな拠点を設け、ふたたび組織を拡大し始めた。
すぐさまチームは対処に向かったが、国内のあちこちに散らばっていた残党たちが次々と決起し、やがて国全体がチームと組織との戦場となり、疲弊した国は組織共々崩壊する結果となった。
「……以上が、これまで我々が行ってきたガン治療における経過を国家政策に見立てたものであります。これだと問題点は容易に浮き彫りとなることがお分かりでしょう。
悪の組織、つまり現在のガン細胞組織に対して行う治療とは、周辺一帯、つまり周囲の正常な細胞組織への被害も大きいということです……」
――ガンを撲滅するためにはガン組織を攻撃するのではなく、ガン組織以外の周辺組織を活性化させて、ガン組織の弱体化をはかろう――という説は学会で大きな波紋を呼び、可能性の一つとして、いくつかの施設で研究が進められた。
しかし、現実に治療に結びつく画期的な研究結果は、これまでのところ見つかっていない……。
「……周辺組織を活性化させてガン細胞を弱めようったってなあ……」
資料に目を通した大柄の人物は、つまらなそうに大きく息を吸った。
「……そんなことが出来るくらいなら、誰も地域の活性化と、癒着など組織の悪習慣の排除など、政治の公約に掲げたりしないのだ……」
自分の名前が書かれたプレートの下に掲げてある“No Smoking”の文字に向けて吐き出されたタバコの煙は、贅沢な部屋にゆっくりと漂っていく。




