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よんじゅうにごう

 ぼくの部屋には、いつもかぐわしい香りと、ここちいい音楽が流れてる。


 部屋にあるのはベッドと机、それから壁にはトイレがしまってあるんだ。

 てんじょうの明かりは自動でついたり消えたりするから、ぼくにはさわれない。

 こちらがわの何もない壁はドアになってて、ビーッビーッって音が鳴ったら開くんだ。


 そのドアのむこうには白い服の人たちが待ってて、ぼくをおさんぽにつれて行ってくれる。

 するとそこには、いつも友だちが待っててくれるんだよ。


 時々だけど、友だちと会えるのは嬉しい。

 だからぼくは、おさんぽが大好きなんだ。


 だけど、しばらく会ってないな。

 今日は会えるかな?

 ビーッビーッって鳴らないかな?

 会ったらどんなことして遊ぼうかな?


 ビーッ! ビーッ!


 あっ!! 鳴った!!

 やった! 友だちに会える!


 白い服の人に連れられて、ぼくはおさんぽに出発した。今日はずいぶんと遠くまで行くんだな。

 どんな友だちが待っててくれるんだろう?

 楽しみだ!


 へりこぷたーが着陸すると、ぼくはいつも白い建物に連れて行かれて、友だちに会うための準備をするんだ。


 白い服の人が赤いキャンドルに火をつけて机に立てかけると、部屋で嗅ぐのとは違ういい匂いが漂ってくる。

 それに合わせてテンポの速い音楽が流れてくると、ぼくの心臓はドキドキ強く波うつ。

 きっと友だちに会えるのが楽しみでしょうがないんだ!


 建物の外では、もう友だちが待っててくれて、ぼくの姿を見ると嬉しそうに駆けよってくる。






「……やはりまだ不完全な遺伝子強化改造の影響でしょうか。

 これまでのアロマハイドマンと同様、成長速度が著しく速いため、特殊なアロマキャンドルの香りと、精神を高揚させるBGMの効果が切れたその肉体は、まるで50代の中年男性のようです。


 現在のアロマハイドマンが誕生してからわずか1年2か月あまり、すでにその力には衰えが感じられます。

 今回は辛くも勝利しましたが、今後、敵はますます強化改造を施した怪人を送り込んでくることでしょう。

 地球の平和のためには、一刻も早く次のアロマハイドマンを誕生させなければなりません。

 しかし、今回もやったぞアロマハイドマン!

 地球のために戦え! 我らがヒーロー! アロマハイドマン!!」




 ぼくにはマイクを持ってカメラに向かって叫んでる人が言ってる意味は分からない。

 ただ、いつものように友だちと遊び終わったら、おさんぽがおしまいになるのが寂しい。

 ぼくはまたへりこぷたーに乗せられて、部屋へと帰されてしまうんだ。


 ぼくの部屋には、いつもかぐわしい香りと、ここちいい音楽が流れてる。この部屋にいるあいだはすごく落ち着くんだ。


 そういえばマイクを持った人以外に、ぼくのことをアロマハイドマンなんて呼ぶ人がたくさんいたけど……。

 おかしいな。ぼくにはちゃんと『よんじゅうにごう』って名前があるのに。


 今日は少し疲れたから、帰ってすぐにベッドにもぐり込むと、てんじょうの明かりが自動で消えた。


 大きなあくびをして目を閉じたら、どんどん夢の世界へおちていく。


 また明日も、友だちと遊べたら、いいなぁ……。

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