液状テレビ
スゴイ薄型テレビが発明された。
その名も“液状テレビ”だ。
液晶、じゃない。
店頭に売られている姿はどう見ても缶入りスプレーにしか見えないけど、壁でもどこでも吹き付ければ、液がついたところがたちまちにテレビ画面となるんだ。
液体の中に、ナノテクの極小スクリーンチップの集合体やら、吹き付けられた面にできる結晶構造やら、表面がそのままソーラーパネルとアンテナになるやらと、CMで難しいことを言っているが、よく分からない。
とにかく嬉しいのは、液晶テレビよりはるかに値段が安いことだ。
これならお試し気分で買っても損はない。
というわけで、さっそく買ってきた。
説明書を読むと、
――色は無色透明で、元の景観は損ないません。またチャンネルと音声、各種ケーブル端子は同梱の1セットのみが、お買い上げの液状テレビと対応しております――
なるほど、テレビをつけていない時はそのままで、ちゃんと買った台数しか使えないようできているわけだな。
よしよし、ではさっそく……この際だから、思いきって壁一面に吹き付けてみよう。
おおお!! これはスゴイ!!! 大迫力だ!!!
家の中に映画館なんてもんじゃない!
せっかくだからもう少し広げてみるか。
どうせ無色透明だから電源を切ってしまえば元どおりだからな。
どんどん広がっていく、面白いな。コレ。
少し離れた場所でも使えるのかな?
水まわりにも使えるんだろうか?
大ヒットとなった液状テレビ発売直後から、落書き落し剤が驚異的に売れ始めた。




