古城
美しい湖のほとりに壮麗な石造りの城が建てられたのは、中世の初めの頃だった。
その地を治める領主が財を投じ、技術の粋を集めて建造させたものであり、
人々は『絢爛の城』と讃えた。
城が完成して間もなく、領主は隣国の王に攻め入られ滅ぼされてしまった。
王はさらに近隣諸国を攻め続け、捕虜たちは残酷な仕打ちを受け処刑され、城は血で染まった。
人々は『地獄の城』とささやいた。
やがて王は反乱によって打ち倒され、たくさんの亡骸が誰もいなくなった城内にそのまま放置された。
人々は『亡霊の城』とウワサした。
やがて城へ流れ着いたのは、祖国で迫害を受けた修道士の一団だった。
城では時に奇妙なことが起こったが、それは修道士の信仰心の現れとされた。
人々は『聖なる城』と崇めた。
ある日、城に軍隊が押し寄せ、戦争の拠点として修道士たちは追い出されてしまった。
城は『要塞』と呼ばれた。
やがて軍隊は敗北し、連合軍の戦利品として占拠された。
城では毎晩華やかなパーティーが開かれた。
きらびやかな服をまとった紳士淑女たちは『栄華の城』とうそぶいた。
その城は今も、そこにたたずんでいる。
すでに誰のものでもない城の内部には、この地と城の歴史を紹介するコーナーが設けられ、誰でも入ることができた。
時々、見物人に奇妙なことも起こったが、人々から愛され、世界遺産として永久に保存されている。
様々な数奇な運命をたどったこの城を
人々は『奇跡の城』と呼んでいる。




