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異世界

 俺が小学校以来の親友と、久しぶりに地元で有名な美味い居酒屋で飲んでいた時のこと。

 ひとしきり昔話に盛り上がり、ほどよく酒もまわってきたころ、親友はどこか遠い目をしながら「実はオレ、違う世界からきたんだ」とつぶやいた。


 こいつは昔から真面目な顔をして冗談をいうクセがある。今度はどんなことを言い出すのやらと期待して待っていると、なんでも、俺と出会う前の小学1年生の時に母方の実家の祖父母の旧家へ遊びにいった際、古い蔵の中で遊んでいるうちに大きな鏡を見つけたが、そこに自分の姿ではなく、そのとき暮らしていた町並みと同じ光景が見えたため、面白がって足を踏み入れると中へ入ることができたが、入ってしまってからはもう戻ることが出来なくなっていたという。

 恐ろしくて町をさまよっていると、大人に声をかけられて警察に引き渡され、迷子になったときのために首からかけていた迷子票を頼りに自宅へ帰されると、そこにはいつもと変わらない両親がいて、迷子になっていた自分を心配して泣きながら迎えてくれたそうだ。


「よくある子供の頃の、迷子になったことと、祖父母の家に行ったことがごっちゃになって記憶に残っているっていう、勘違いじゃないのかな」

「そうだな。オレもそう思いたいよ」

 ありきたりな俺の言葉に、親友はつまらないことを言ってしまったというように少しビールを口にふくんで、地元産のウツボのから揚げをほおばる。

「まあ、今ではこっちの世界での生活のほうが長いからいいんだけどね」

 いつもの冗談ではない雰囲気に、俺は少々残念に思いながら「それで、元いた世界とこっちの世界ではどのくらい違いがあるんだ?」とたずねてみた。


「違いか……実はほとんどないんだ。アレさえなければオレだってただの記憶違いだって考えるよ」

「アレってなんだよ?」

 俺の問いかけに、親友は居酒屋のオヤジさんにお勧めの日本酒をたずね、新鮮なホタテの刺身といっしょにクイッといってから顔をあげて目を細める。

「……この世界では、波平さんの頭が、白髪でフサフサなんだ」


 当たり前のことをいう親友に、俺はだまってオヤジお勧めの日本酒をついだ。

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