表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/200

幸せのシッポ

 家に帰ってから食事もしないでふて寝して、気がついたらもう夜中だった。


 7年付き合ったアイツと別れたことなんて、大したことないはずなのに、どうしてこんなに気が滅入るんだろう?


 おたがい納得して別れたはずなのに。


 7年か。


 私の人生の約3分の1近くをアイツ……フミオと一緒にいたわけだ。


 私、何やってたんだろう?


 ううん、アイツは悪くない。そして、私も悪くない。


 ただ、あまりに近くにいすぎて、逆にうとましくなったっていうか……。


 結婚も考えたこともあったけど……結局こんなことに……。



 こんな時間だけど、明日は休みだから1本くらい、いいよね?


 暗闇に慣れた目に冷蔵庫の明かりがまぶしい。

 缶ビールを取り出して扉を閉めると、部屋はまた、まっ暗になった。



 手探りでイスに座ってプルタブをあけ、ゴクリとのどの奥へ送り込んだけど……ちっともおいしくない。


 ふ~~~。


 テーブルに突っ伏しているうちに、また眠っていたらしい。


 何かの気配がしてぼんやりまぶたを開くと、テーブルの上を立って歩く小さな白いものがいた。


 イタチ? オコジョ?


 よく分からないけど、そんな感じ。

 だけど、動物っぽいシッポがないから妖精なのかもしれない。


 ううん。よく見るとあるかないか分からないほどの、小さな小さなシッポがある。


「えい!」


 勢いでシッポをキュッとつかむと、妖精(?)は「きゃああ!!」と叫び声をあげて飛び上がった。


「あ、ごめん。驚いた?」


 妖精は必死でコクコクうなずいてる。


「ねえ、あんた何? 何してるの」


「ぼくはエフィ。幸せを持ち運びしてるところさ」


「ふーん、そうなんだ。

 だったらねえ、私の幸せってどこにあるの?」


「きみの幸せなら、今からぼくがよそに持って行くところだよ」


 そう言ってエフィは、ほんのり温かそうに赤く光るカケラを出して見せてくれる。


「何ですって!? そんなことさせるもんですか。置いていきなさい!!」


「自分で捨てたくせに。ダメだよ、そんなの」


「捨ててなんかないわよ! 置いていかないんだったら、このままビンの中にでも閉じ込めるわよ!」


「やめて! 離してくれたらこの幸せは置いていくよ」


「ホントに? だったら離してあげてもいいわ」


「良かった。だけど、もうその幸せは離さないでね」


「あんたの小さいシッポがつかめて、せっかくのわたしの幸せが離せるわけないでしょ」


「だったら安心だね。それじゃ!」


 言うが早いか、エフィは “ポンッ!” と消えた。






 翌日、昼過ぎまで寝てた私は何となく昨日の夢を思い出した。


 ……酔ってたせいね。変な夢見た。


 起き上がると、本棚の隅に置いてあるものが目に入った。



 あっ……これか。


 彼からもらったオコジョの妖精みたいな白いぬいぐるみ。


 昨夜の妖精の夢はこれを思い出したからだろう。

 ほんのちょっとしかないシッポまでそのままだわ。



 夢みたいにシッポをキュッとつかんでも、叫び声なんて出さない……当たり前か。



 エフィって言ってたわね。


 エフィ……。


 なんだ、そうか。



 思い出すと涙があふれてきた。


 “FE”


 フミオのイニシャルじゃないの。






 携帯が鳴ったので、ぬいぐるみを置いて相手を見ると……フミオからだ。

 ちらっとぬいぐるみを見てから着信を押す。


 今さら何の話なのか……まだ、分からない。




 だけど、もしこれが小さな小さなシッポなら……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ