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 その蝶は、長いあいだ宇宙をたった一匹でさまよっていた。

 宇宙空間をどうやって飛ぶことができるのか、蝶自身にも分からない。

 ただ、気がついたときからずっと満天の輝きを誇りながらも、簡単には手に届かないほど遠く離れた星々のかすかな光を頼りに飛び続けていたのだった。



 青い水滴が複眼にうつし出されたのはいつのことだったろうか。

 凍っていない直接飲める水は、宇宙ではめったに見かけないとても貴重な存在だが、極まれにこういった形で保存されている場合もある。

 蝶が水滴に向けて、丸く巻いたストローのような口吻

こうふん

を伸ばそうとすると、水滴からいくつもの光の矢が飛んできたが、羽毛の先をほんの少し焦がしただけで、大したこともなく気にする必要もない。


 蝶は水をチュッと吸いこんだが、残念なことに水は岩石の上に薄くたまっていただけらしく、ひと吸いで無くなってしまった。

 少し塩からかったが、しかし同時に幼少の頃の甘い記憶を取り戻せたような、なつかしく、不思議な味わいだった。


 宇宙は広く、こんな水滴に巡り会う奇跡がいずれ、無いことも無いだはずだ。


 蝶はまたフワリとつばさを広げ、果てしなく拡がる宇宙へと旅立っていった。

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