比較 ver1
足の先から頭のてっぺんまで凍りつくほど寒い中、やっと外まわりの営業を終えたオレは残業もそこそこに帰宅の途についた。
一刻も早く熱い風呂に入って冷えた体を温めたい。でないといつ冷凍マグロとして出荷されてもおかしくない状態だ。
一人暮らしのオレは、マンション近くのコンビニに立ち寄ってアルミホイルの皿が付いた一人用の鍋焼きうどんを手にとった。
マンションにつくと、なぜかオレの部屋には明かりがついて、料理を作る音まで聞こえてくる。
「チッ……またあいつか」
舌打ちしながらいきなりドアを開けると、中にいた女がオレを見て固まってやがった。
「どうして……こんなに早く」
「今日はあんまり寒かったから、仕事を切り上げて帰ってきたんだ」
答えながら女の手もとを見ると、できたばかりの鍋から美味そうな香りと湯気があがっている。
「あ、これ、トリ鍋。体が温まる材料も、たくさん入れてあるから……」
「分かった。とにかく体が冷え切ってるから風呂に入ってくる。先に食ってろ」
そう言ってやると、よほど意外だったんだろう。女は驚いてオレを見る。
とにかくさっき買った鍋焼きうどんを冷蔵庫へ押しこんで、風呂を沸かし、熱い湯に肩までドップリつかるとようやくひと心地ついた。
部屋着に着替えて女のいるところへ戻ると、食器を用意したまま鍋には手をつけずに座って待っていた。
「先に食ってろって言ったろ」
「だけど、せっかくあなたと一緒なのに……」
「毒でも入れられてたらたまらないからな」
「ヒドイ。わたしがそんなことすると思うの?」
「思う。だから先に食え」
冷たく言ってやると、女は笑いながら煮えた具を自分の皿にすくって食べはじめる。
どうやら大丈夫のようなので、オレもひと口食ってみると案外うまい。
「おいしい?」
「まあまあだな」
それから女は具材のこだわりが何とか、趣味がどうとか、最近身の回りで起きたこととかを一方的にしゃべり続けた。
「それはそうと……」
体も充分温まり腹も一杯になったところで、オレは女に尋ねる。
「おまえは誰だ?」
ニヤリと笑う女を今すぐ叩き出そうかと思ったが、今日の寒さは異常だ。
明日の朝、玄関前で冷たくなっていられると夢見が悪い。
オレのことを何もかも知っているという女から名前と住所、携帯番号を聞きだして鍋の礼を言い、普通に会うなら改めて会ってやると約束すると、呼んでやったタクシーで渋々ながら帰っていった。
まったく。オレは一応専門分野だから多少のことは気にしないからいいが、一般人ならたまらないだろうな。
明日あらためて、警視庁ストーカー対策室の上司に相談するとしよう。
20時にver2を載せます。




