小さな滅び
太陽の周囲をまわる惑星と原子の周囲をまわる電子は、規模の違いこそあれ、中心に核となるものを据えて存在している。
また、その太陽も銀河の中央を中心に巨大な回転運動をおこなっている。このように、極小のものと極大なものはフラクタルな関係を保っているのかもしれない。
あるいは金太郎飴のように、どこを切っても結局は同じ断面、場面を表しているのかどうかは、誰にも分からない。
戦争の発端は、世界経済の衰退から始まった各国の生き残り戦略だった。
ある大国が自国の利益を確保しようと、協力関係にあった周辺各国に対して不平等な条約に力づくで従わせようとしたため、ついに周辺国家の不満が吹き出したのだ。
本来なら紛争で止まるはずの争いは瞬く間に世界中へ伝播し、全世界を巻き込んだ大戦へと広がった時には、すでにどの国もあとへと引けない状況に陥っていた。
そして、ついに各国の高官は押してはいけないミサイルの発射ボタンを押すことを迫り、主席や大統領は自国の勝利を信じて安全装置の解除を命じた。
同じ頃、銀河を二分する勢力を持つゼン帝国では、総統を囲んで激しい議論が交わされていた。
そこへ係官が足早にやって来て、先ほど入った情報を伝える。
「総統、ただいま我が帝国の支配宙域にある惑星アースが原住民の手によって崩壊したとの報告がありました」
「む、そうか。それよりも今は、我がゼン帝国か宿敵アク王国、どちらが生き残るかの最終決戦の時だ」
「だからこそ、もうアレを使うほか道はありません」
先ほどから強い口調で繰り返す参謀の言葉に誰もがうなずいたが、総統だけは首をタテにふろうとしない。
もしアレを使ったとすれば、この銀河の3分の1が消滅しかねないのだ。おいそれと決断できるはずもない。
その時、別の係官が飛び込んでくる。
「総統に緊急報告! 敵アク王国母星より、アレを搭載した艦隊が出発したとの報告が!」
まさか? アレを使う決断をしたのか! 高官や参謀、そして総統の額から汗がしたたり落ちた。
「もう迷っている時間はありません! 総統、ご決断を!」
このまま何もせず黙って見ているだけなら、ゼン帝国と統治する惑星で暮らす7兆4690億人の国民の犠牲を意味する。
参謀の言葉に異論があるはずもなく、総統はアレを使用する許可を出す。
ゼン帝国からもアレを搭載した艦隊が出発し、双方の艦隊は中間地点で戦闘に入ったが、1つでさえ銀河の3分の1を消滅しかねないアレが、2つ同時に作動してしまったのだ。
ちょうどその頃、宇宙全域を統括する宇宙連合国と、連合に与しない同盟銀河系連合の衝突が激化していた。
「首長、辺境のサガエリ銀河系が勢力を二分していた組織の者の手によって消滅したとの報告がありました」
「銀河の1つ2つなどどうでもよい。それよりもヤツらの本隊は今どの銀河に移動しているのか?」
「ハッ! 現在はイルビリ銀河とメニアス銀河に展開しております」
「それはよい。それぞれの銀河の隣にある、アイナク銀河とパルアト銀河を准光速でぶつけてやれ」
「それではその銀河の住民のみならず、宇宙全域にも影響が及びます」
「ヤツらにはそれくらい見せつけてやらなければならないのだ。命令だ」
「分かりました。すぐに攻撃を」
何億年も続いたこの戦争を、ようやく勝利で終わらせることができるかと思うと、首長は笑いが止まらない。
まさに世界中が、この宇宙全体が滅びに向かって突き進んでいた同じ時。
クリスマスのきらめくイルミネーションを眺めていたカップルがふと空を見上げると、チラチラと白いものが舞い降りてきた。
「ホワイトクリスマスになりそうだね」
「うん。ねえ、もう少しイルミネーションを眺めていていい?」
「だけど、あまり長く外にいると冷えるよ」
「ううん。大丈夫」
彼女はギュッと彼に体を押し付ける。
その白いセーターに舞い降りた1つの雪がはかなく消えていったことに、2人は気づかなかった。




