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ウサギとカメ

 カメに負けたウサギは、仲間のところへ戻っても仲間はずれにはされなかった。


 仲間はなぜ負けたのかを知っていた。

 自分たちの足は速いが、それは短時間、短距離の話であって向こうの山の麓という距離では途中何度も休憩し、体温を下げなければ体温が上がり過ぎて死んでしまう。大きな耳はそのための体温調整装置だ。


 ウサギは仲間に責められないことを恥じた。みんなは負けることを知っていた。今から思い出してみれば、みんなは反対していたじゃないか。

 もしあの時、それが分かっていても勝負を取り止めただろうか? いや、あの時の自分は傲慢だった。負けると言われるほど、意固地になって勝負しただろう。そして途中で休憩も取らず、死んでいたかも知れない……。

 ウサギは何も責めない仲間たちに感謝し、深く反省し、それからは決しておごることなく暮らし、やがてウサギの王となった。


 一方カメはウサギに勝った英雄として仲間たちに迎えられ、朝から晩までかしずかれ、贅沢三昧の生活をし、事あるごとにウサギに勝ったこと自慢をした。

 ある日、足の速いカメのウワサを聞きつけた、隣の国の足自慢のカメが挑戦にきた。結果は自堕落な暮らしをしていたカメの惨敗。

 仲間たちからは2度と見向きされることはなかった。


 そんなころ、地上の生き物たちの様子を見にきた神様がその地を通りかかり、動物たちは喜んで神様をもてなした。

 その時、神様をもてなす宴を取り仕切っていたのは、あのウサギだった。

 神様はなぜ、強い動物たちを差し置いてウサギが仕切っているのか不思議に思いわけを聞いてみると、昔自分の傲慢から仲間たちの名誉を傷つけたが、仲間たちの深い思いやりに反省し、みんなに思いやりをかけて暮らしているうちに、いつの間にかこうなったことを話した。

 神様はウサギをたいそう気に入られ、ウサギが死んだあと月へ連れて行き、いつまでも天上からその優しさが地上に注がれるようにされた。

 一方、カメがどうなったのか神様が尋ねても、あれ以来、ずっと仲間はずれにしていたカメたちは誰も知らなかった。

 それを聞いた神様は大変残念に思われ、カメたちに自分たちがしたことをいさめられた。


 カメたちは大変恥じて、それ以来、甲羅の中に身を隠すようになったという。

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