Never give up
ボクたち惑星改造ロボットが、目的の星へ到着して活動を始めてから150年が過ぎた。
ボクは01。
最初に一緒に来た02から11まで10体のロボットへ指示をだす監督の役割を持っているんだ。
到着して初めての仕事は、10体のロボットそれぞれに割り当てる1万体ずつの作業ロボットを生産すること。それから星を10の区画に分けて改造を始めたんだ。
150年でこの星はずいぶんと変化した。
何もない凍てついた大地を溶かして水と大気を造ることで太陽の光と熱を地表にとどめ、大規模ボーリングによって地下深くの氷と土を使って海と山を造った。
環境を安定させるために地殻改造を行い、大陸を移動させて海流を整えて気温を変化させた。
ボクたちの持ってきた植物の種は、この星の土に含まれる有機物と反応して固有に進化しながらも根づき始めている。
数万年、数億年かかる変化をわずか150年で成し遂げられるのは、地球で培われた科学の成果といえるだろう。
だけどすべてを手放しで喜ぶわけにはいかない。
この150年間で最初に生産した10万体のうちすでに2万4千体が全壊し、4万1千体が常に修理を必要としている。
全壊の報告が届けられるたびに、ボクの胸は押し潰されるようにいたむんだ。
ロボットなのにいたむなんて、おかしいと思うかもしれない。
だけどボクたちには全員、感情回路が装備されているんだ。
もちろん痛みや空腹は感じないけれど、嬉しいことや悲しいこと。楽しさや苦しみを感じることができるんだ。
どうしてロボットに感情なんて与えたのか?
この星へ来る途中、宇宙船の中で、ボクたちを産み出してくれた博士をモデルにしたメインコンピュータへ尋ねたことがある。
“君たちが誇りを持って仕事ができるようにだよ”
博士はそう答えてくれた。
“だからこそ君たちには、改造しろという強制プログラムは組み込んでいないんだよ”
その時のボクにはよく分からなかったけど、今なら分かる気がする。
これまで何度も失敗して、仲間を失い、つらく苦しい時もあった。
あきらめようと思ったことも、すべての作業を中止して逃げようと思ったこともあった。
でも決してあきらめなかったのは、ボクたちの仕事が必ず人の役に立つことが分かっているからだ。
さらに200年が過ぎて、この星は充分な環境が整った。
これでいつ人間が訪れても大丈夫だ。
もはや残っているロボットは1千体もなく、無傷なものはボク以外数体しかいない。
メインコンピュータから地球へ向けて改造完了の報告を送ると、これでボクの任務はすべて終了となり、あとは人間がやってくるのを待つだけだ。
送信を終えると、モニターに博士の顔が映った。
“長い間ご苦労さま。ではこれから新しい任務をお願いしたい。
宇宙船の第18から23コンテナを作動させてくれ”
これは、これまで触れてはいけないものだったはずだ。でも、博士からの任務なら間違いない。指示に従って作動させると、なにやら凍結された実験器機のようなものが積み込んである。
“それは、私たち地球人の受精卵を培養するための装置だ。これから10か月後に約120人の赤ん坊が産まれてくるだろう。
もう地球からはその星へ誰も行くことはない。だから、その子たちを君たちが育ててやってくれないか”
博士が言ったとたん、ボクの頭の中には子育てと教育方法のプログラムがあふれ出てくる。
このプログラムも決して強制ではなく、知識としての意味でしかない。
それは、博士がボクたちを信用してくれているということだ。
なぜ誰も来ないのか、地球で何が起きたのか分からないけれど、大丈夫。喜びも哀しみも、人の信用も知っているボクたちなら、きっと間違いなく育てられる。
この星に人が暮らせるようにすること。
そして幸せに暮らせることが、ボクたちの誇りなんだ。




