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紡がれる味

 ものごころついた時には梅干しが大好きだった。


 祖母が毎年、田舎から送ってくれたものが最高で、それさえあれば何杯でもご飯が食べられたんだ。


 地元役場から村おこしのための製品化の話もあったけど、大量生産するとどうしてもあの味が出せず、断念したこともある。

 おかげで既製品の梅干しは食べられなくなった。


 その祖母は高校の時に亡くなり、2年先まで食べられるように残されていた梅干しも底を尽き、作り方を教わっていた母の梅干し食べた時、改めて祖母は死んだんだと実感した。



 1人暮らしを始めてから送ってもらった梅を自分で漬けても、やはりあの味は再現出来ず、あまり梅干しにこだわったことが原因で彼女と別れたこともあった。

 だから今付きあっている彼女には、ただの梅干し好きくらいに思われるよう注意している。


 いや、むしろ梅干し嫌いと思っているかもしれない。

 一緒に食事に行って梅干しがあっても、祖母のものと比べてしまい、とても箸がつけられないからだ。



 ある日、部屋に来てた彼女が「おなかがすいた」と言い出した。

 何か食べに行くかと聞いたら、あっさりしたものを少し食べたいと言うので、ご飯に、冗談で母の漬けた梅干しを出してやった。


 すると、食べたとたん体が固まって、口に手をあてたまま肩をバシバシ叩いてきた。


 ようやく話せるようになって、

「こんな美味しい梅干しは食べたことがない!」

と大絶賛した。



 以来、彼女はうちへ頻繁にごはん……梅干しを食べに来るようになり、外食の梅干しは残すようになった。


 やがて社会人になり、彼女とは来年結婚する。





 最近、実家から送られてくる母の梅干しの味が祖母の味に似てきた。


 やはりあの味を出すには長い時間が必要なのだろう。




 この味がこれからも引き継がれるかどうかは分からない。


 それでも、彼女が実家に来るたび母に梅干しの漬けかたを教わっているのを見ていると、心配することはなさそうだ。



 梅干しがつないでくれた酸っぱい縁というわけだが、祖母には本当に感謝している。

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