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第36回 IDEAL殲滅作戦その①

 エイミィ釈放から数日後。


 ◆◇◆◇◆


 真芯市南部の海。

 威勢湾沖を航行する海上自衛隊の航空母艦うずめ型。

 IDEALの潜水艦らしき機影を発見し、やって来たうずめに十機の戦闘用航空機が配備された。

 しかしそれは戦闘機と言うには異質で“頭”と“手足”が生えていた。


 SVt10式人型航空機セト。

 業界では二位の黒須エレクトロニクスが開発した新型戦闘機である。


「凄いですよね隊長。やっぱ日本って巨大ロボット作っていたんだ」


 作戦開始まであと十分。

 デッキの上でセトを眺めながらパイロットの若い自衛隊隊員の青年は呟く。


「民間の非公式な奴じゃない。正真正銘、日本の国土を守るための機体だぞ」

「殲滅作戦、上手くいきますかね?」

「やってもらわなければ他国の二の舞になる。失敗は許されない」


 隣で隊長と呼ばれた髭面な上官の男が言う。


「それにしても一週間であのマシンの操縦を覚えろ、なんて上は無茶を言う」

「ぶっちゃけ乗り心地は最悪でしたよ……」


 吐く真似をしてみせる青年。

 演習で何度も操縦したが、戦闘機にかかる負荷とはまた違った感覚で何度も嘔吐したり気絶しかけた。


「あんなもんは戦闘機じゃない。乗っている奴の頭がおかしいんだ」


 愚痴を溢す二人。

 人型ロボットで無双するなど所詮はお話の中だけであり、現実はアニメや漫画のように上手くはいかないのだ。


「……それで実戦やるってんだからな」

「でも、例の人は……」


 青年はデッキに並べられたセトの一機を見る。

 唯一ウイングに炎マークを付けた機体を熱心に拭いている少女がいた。

 屈強な男たちだらけの場所には似つかわしくない、細身で透き通る肌をした黒髪が綺麗な美少女である。


「黒須エレクトロニクスの社長令嬢で18歳のお嬢様。まともな戦闘訓練もしてないのに模擬戦で俺たちの戦闘機相手に“あのロボット”で完勝しやがった」


 苦い顔をして隊長は少女を睨むように見つめる。

 そんな隊長たちの視線に気づいたのか、拭き掃除を切り上げて少女が近付いてきた。


「みなさん、お疲れ様です」

「お、お疲れ様っす!」

黒須十子クロス・トウコ嬢、わざわざお嬢様がそんな事をする必要はないですよ」


 皮肉混じりに言う隊長の言葉にトウコと呼ばれた少女は笑顔で返した。


「我が社の製品ですから、少しでも良い感じに見せないと」


 振り返るトウコ。

 長い黒髪が潮風に揺れる。


「海……初めて見ました。とても大きいですね」


 艦の窓から軍人ではない男女三人。一人は大きなカメラを担いでいる。

 トウコに密着取材でくっついてきたテレビ会社の撮影クルーたちだ。

 

「所でどうですか、セトの操作は馴れました?」

「えっ……い、いやぁーもうサイコーですよっ! 遠隔による操縦で安心安全ですし!」

「これなら大国相手でも負ける気がしませんなぁ!?」


 撮影されているのを意識して心にもないことを言う隊長たち。


「ありがとうごさいます。それはよかったです」


 感情の籠っていない棒読みの感想でもトウコはにこやかだ。


「そろそろ目標地点に到達ですよね。行きましょうか」


 トウコはカメラに向かって手を振ると自分の機体に向かって駆け出した。

 そんなトウコの後ろ姿を見て軍人二人は深い溜め息を吐く。


 ◇◆◇◆◇


 うずめの前方数百メートル先で浮上する巨大な物体。

 まるで待っていたかのようにIDEALの水中戦艦パライソの一部が姿を現す。


「IDEAL、お前たちは完全に包囲されている。投降をするならば今の内だ。返答がなければ実力行使でそちらを排除する」


 うずめから何度か呼び掛けを試みること約十分。

 いくら待てどIDEALからは何の反応もなかった。

 そもそも今回の作戦はテロリストであるIDEALの殲滅である。

 向こうがどういう行動を取ろうともやることは決まっていた。


「全機、出撃!」


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