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54話 帰蝶の初陣でして!

 日奈さんと話を終えた私は、すぐに信長へ彼女のことを伝えた。

 もちろん、乙女ゲーム転生うんぬんは隠して。


 彼女のことは、本来のゲームでもヒロインが呼ばれていた「未来が見える先見(さきみ)の巫女」ということにした。


 実際のゲームでは、歴女ではないプレイヤーにもわかるよう、要所要所で“神様の声”が聞こえて危険を回避できたり、このあと起こる戦の行く末がわかったりするそうだ。それは便利で羨ましい。

 しかし今は現実。神様の声なんて聞こえるはずもないので、日奈さんはゲームにハマってから得た日本史知識を駆使して、先を教えてくれるとのこと。充分ありがたい。そして「日本史の勉強くらいしとけよ」の視線が痛い。


 信長は二つ返事で「面白え!」と言うと思ったのだが、思ったよりも渋られてしまった。

 最終的には私の熱弁に「蝶が言うなら」と納得してくれた。

 彼は本当に、何が好きなのか何がゆるせないのか、そのへんのベクトルがわからない。



 忍者の夕凪は、しばらく日奈さんの護衛についてもらうことにした。

 日奈さんの話によれば、夕凪は本来ならヒロインについているお助けキャラらしい。道理でツインテールなはずだ。


「嫌です!夕凪は姫様の護衛なんです!どうして他の方へやろうなんて……夕凪のことが嫌いになったのですか!?」


 護衛対象変更の話をしたら、少女忍者は、わああ、と泣き出してしまった。こんな健気でかわいい子を泣かせてしまって、言い出したのは自分なのに泣きそう。

 ジト目の十兵衛に睨まれつつ、よしよし宥めて「じゃあ護衛じゃなくて監視」で渋々納得してもらった。


 護衛1号(十兵衛)も、2号が離れてしまうのが少々不満らしい。

 光秀ルート構築のために十兵衛に日奈さんについてもらおうと思ったのに、キミに頑なに拒否されたからなんですけどね。

 私の護衛達は頑固で困る。







 そうして色々ありまして、私の初陣の日です!

 お日取りは、他の元服したての男子達と違って、この日がいいとか簡単な戦にしましょうとか、そういう協議を重ねたわけではなく、適当に決めた。


 最初の約束通り、城主夫妻不在のお城は、私が指示を出したお姉さん部隊に護ってもらう手はずになっている。

 女中として勤めるのは仮の姿、有事の際には鉄砲や薙刀をぶん回す、素敵なお姉さま方だ。


 当日は、信長の小姓の犬千代くんも元服前だけど出陣することになった。(いいのか?)


 犬千代くん、日奈さんのお話しによると攻略対象者らしいのだが、曰く「なんかキャラ違うな……」とのこと。ゲームのキャラと性格が少し違うらしい。

 十兵衛を見た時も「解釈違い」と言っていたし、画面で見るのと実際に会ってみるのとでは、印象が違うってかんじかな。

 ゲーム未プレイの私にはわからないが、好きな漫画が実写化された時の気持ちだろうか。


(あね)さん!気張っていきましょう!」

「ええ。とりあえずはお互い死なないようにね!」


 心配したお城のみんなから、私と犬千代くんはごってごてのフル装備にさせられていた。

 装備品のせいで体が少し重いが、体調は万全だ。犬千代くんも顔色はとてもよさそう。

 攻略対象者だけあって、彼も顔はなかなかにかわいい。言われてみれば濃い紫の変わった色の髪と、いたずらっ子っぽい瞳の目立つ子だった。笑うとちょっと凶悪なギザ歯が覗く。

 (あるじ)が信長くんなせいか、信長と気質が似ているというか、やんちゃ系。

 十兵衛曰く「彼は鉄砲玉なのであまり真似しないように」とのこと。


 でも心配性な十兵衛は私の護衛につくし、私自身は信長の護衛という立ち位置なので、戦となっても安全な本陣からほぼ出ない。

 ただ信長の守りが二重に固くなっただけで、私の最初の戦は何事もなく終わった。


 張り切っていた犬千代くんは、本当に出たきり帰ってこなかった。

 死んだわけではなく、報告にも帰ってこないほど走り回っていたらしい。


 無事を確かめに行ったら普通に上司に怒られていた。真似しない方がよさそうは、よさそう。

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