6話 カイリ…
ゴトンゴトンと馬車にゆられること2日目。予定ではもうそろそろラバスニに着く頃だ。
「ん?」
スキル;探知に何かが引っかかった。方角は進行方向、それも大量に。
「すみません、ちょっと止まってくださ〜い」
ピタッと馬車が止まる。
「何かあったのかい?」
「このまま進むと魔物の大群に衝突してしまうので止めたのですが、倒してきてもいいですか?」
「何言ってんだ嬢ちゃん、この平原は安全ってことで有名なんだぞ?」
「・・・分かりました。では先に進みましょう、止めてすみません」
そして移動を再開する
「な、なんだあれは!」
言われて目を向けると、ゴブリンに全身骨のスケルトンみたいなやつに豚の頭をした人間のオーク達の大群が、目的地のラバスニに向かって進行していた。
(倒した方がいいよな?)
このままではラバスニに侵入してヤツらは暴れるだろう。
「ちょっと行ってきます!」
馬車から飛び降り魔物の大群を追いかける。
超加速を使い、魔物の大群を追いこし立ち塞がる。見た感じ二千体ってとこか?
後ろからは見えなかったが、先頭にオークの何倍もでかい奴がいた。一つ目の巨人、サイクロプスか?
サイクロプスは右手を横に突き出し、大群を止める。
『・・・何者だ?』
喋った!魔物って喋れるのかな?それよりも、
(何者か、か〜)
なんていえばいいんだろう?こういう時にかっこいいことを言いたいのが男なので、少し考えてみる。
(なんて言おう……エキューラだ!って言うのは決まらないよな?あ、そうだ。ピッタリの言葉があった!)
「私か?そうだな、《さすらいの旅人》とでも言っておこう」
そう言いながら腰に手を伸ばし、出発前に貰った剣を取る。
(決まった!)
内心ガッツポーズする。さすらいの旅人って嘘はついてないし、なんかカッコイイし!
『はぁ、そうか。名乗る気は無いか』
なんかため息つかれたのだが、もうコイツ切っていい?
『まぁいい。俺の名はベルド、と言えばわかるだろう?』
「チッ、あのベルドか!!」
あの、と言ったがさっぱり分からん。コイツ誰だ?まぁいい、乗ってやろう。
「お前は、お前だけは許さない!」
『クックック、なんだ?お前は俺に家族でも殺されたか?すまんな?お前の事など覚えてなどないわー!ハーッハッハ!!』
すげぇ、コイツめっちゃ楽しそう。相手が楽しそうだとこっちも楽しくなっちゃうよね!
「お前ー!カイリ、お前が4年前に殺した弟の名だ!カイリはまだ10歳の子供だったのだぞ!それをお前は!」
どうやって殺したかは思いつかなかったため言わなかったが、どうだ?
『ほう、そういえばそれくらい前に滅ぼした村で何人か子供を殺したがその中にいたのか?』
「そうだ!私は近くの森へ修行にいたから奇跡的に助かった、だが!村に戻ったら皆死んでいた!弟は、弟は!」
手で目を覆い、こっそり水魔法を使う。
「弟は血だらけで倒れていて、手がなかった!かろうじて生きていたけど、[ベ…ルドって魔物、にやら、れた]そう言い残してカイリは死んだ!」
『ハッハッハ!泣くな泣くな、可愛い顔が台無しだぞ?ハーッハッハ!』
それ水魔法なんだけどな〜。見事に騙されてる。俺って演劇の才能あったのかな?
『ふむ、思い出した。あぁ、いたな!一人立ち向かって来た子供が。一回殴っただけでどこか遠くに吹っ飛んでったから気にしなかったがな!』
どうやら思い出してくれたらしい。
『それと、私は奇跡的に助かった。と言ったな?』
あ、嘘がバレたかな?まぁ別にいいけど。
『調子に乗るなよ?お前がいたことなど知っておったわ!!』
「な、なんだと!?」
ここまで来ると俺はこの世界の住人だったのではないかと錯覚してしまう。あぁ、カイリって弟がいたかも。
『それよりも、どうするのだ?俺は気分がいい。見逃してやってもいいぞ?』
「バカにするな!カイリの仇、とらせてもらうぞ!」
『やってみるがいい、小娘!』
ベルドがこちらに走って、右腕で殴り掛かってくる。
それを右に避け、お返しにその右腕を切るが、腕が硬く切れない。
『そんななまくらでは俺は切れないぞ!』
さらに殴り掛かってくるが、これもまた避ける。
アイツの攻撃は当たらないが、こちらの攻撃も通用しない。泥仕合だな。
黒炎刀を使いたいが、一発で剣がダメになってしまうからダメだ。
じゃあ竜の息吹を使うか?試してみるか。
口を開け、狙いを定める。
(アイツを包み込むほどの大きさにして…よし、発射!)
ゴォォーー!!と音を立て、ベルドに向かって行く炎。
『ぐおぉぉぉーー!』
炎の中に閉じ込められ、悲鳴を上げるベルド。しばらくするとその声すら聞こえなくなり、俺は息吹を止める。
だが、ヤツはかろうじて生きていた。
『くっ、なんだ、この力は…お前は人間なのか?』
「まぁ、人間と言えば人間だな。この世界の、ってのは置いといて」
『なるほど、お前は転生者か…』
「いや、私は転移者だけど?」
『なら、弟と言うのは?・・・まさか!?』
「そう、嘘だ。面白かったぞ!」
『ハッハッハ、してやられたわ。つまり、あの子供はお前の弟ではなかったのか』
「私がいたことに気づいていたと言った時にはもうこらえきれなかったぞ」
『うるさい、部下の前ではカッコつけたいだろうが』
さて、種明かしも終わったし、終わらせるか。
「じゃあな、ベルド」
ドスッとベルドの頭に剣を刺す。
「さて、お前らはどうする?」
こいつの後ろにいた魔物たちに問いかける。
「私は気分がいい。見逃してやってもいいぞ?」
ふざけてベルドの真似をしてみる。すると、魔物たちは怒ったのか分からんが、大群で俺に向かってくる。
「ふっ、面白い。行くぞ!」
「あ〜疲れたぁ」
俺は地面に倒れ、周りを見渡す。
俺の周りには約100体程の魔物が倒れている。
数が少なくないかって?途中からめんどくなって竜の息吹で焼き切ったからだ。
「カイリ、お姉ちゃん勝ったよ!」
グッと空に手を突き出す。ちなみに特に意味も無くやっています。
(さて、コイツらどうするかな)
そこらに転がってる魔物を見て考える。
確か冒険者ギルドで倒した魔物の買取してるんだっけ。じゃあコイツらこの魔法の鞄に入れるか。
魔物たちの回収を終わらせ改めて辺りを見回す。
そういえばあの人と馬車なくなってるし…
(どうするかな〜、コイツ絶対入んないよな〜)
ベルドを見つつ、そう考える。確か容量は1tだったはずだし、コイツは入んないだろう。
はぁ、仕方ない、こうしようか――――
「はぁ〜、やっと着いた〜」
俺の視界に映るのは、俺がいた村の何倍も大きい国、ラバスニだった。
「えっと、門はあそこだな?よし、行こう!」
そうして門の目の前まで着く。
「ラバスニにようこ―――なんか引きづってきた!!」
門番さんが俺の引きづってきたベルドを指さし驚いてきた。
あ、なんかデジャブ。
みでぐれでありがどうございばずぅ( ᵒ̴̶̷̥́ ^ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )