53話 命の恩人
や〜っとテスト終わったー!!
開放感がすごい…!
ここは、どこだ?
そこは辺り一面、白い空間だった。
そして、なんとなくだが神に会ったところに似ている気がする…。
「誠さん」
「うわっ!びっくりした〜…。驚かせないでくださいよ!って、え?神様?」
「ふふっ。すみません、退屈だったので少しふざけてみました」
やっぱりここは神のいる場所なんだな…。
え?死んだ?僕終わった?
「い、いや。まぁ別にいいんですけどね?それで、なんで俺はここにいるんですか?現実の俺ってどうなってるんですか?」
「う〜ん、まずは現実の誠さんについて話しますか」
こほん。と咳払いをし、一拍置いて話し始める。
「まず、誠さんは気絶しています。原因は分かりますか?」
「原因…?」
とりあえず生きていることに安堵し、ここに来る前のことを思い出してみる。
「確か、俺は家を作っていて、それで完成して中に入ってゆっくりしていたらこうなった…?あ。もしかして魔力切れでこうなったんですか?」
「まぁ、何があったかはおおむねそんなところですね。でも、誠さんは家を作る前に何をしましたか?」
何をしたか、か。
「ワイバーンの群れを片付けてましたね」
「その後ですよ、その後で」
「う〜ん、あ。もしかして…」
「気付きましたか?」
だって考えてみたらこれくらいしかないもんな。
「もしかして、分身が強敵に殺されて、その痛みで気絶したんですか?」
「正解です」
「…決して死んだわけじゃないですよね?」
「安心してください。九死に一生を得ていますよ」
「そうか…。良かった」
「あの方には感謝した方がいいですよ?」
「あの方?」
「はい。誠さんと行動を共にしている方です」
俺と行動を共にしているっていうと、りんの事だろうか?
「なんでですか?」
「あの方は回復魔法に優れています。誠さんに回復魔法をかけ続けてくれなかったら、多分死んでましたよ」
「そう…なんですか…」
つまり、りんは俺の命の恩人ってことか。元の世界に戻ったらお礼を言わないとな。
「あ、それよりどうやったらあの世界に戻れますか?」
「そうですね〜。あと30分位だと思いますよ?」
「分かるんですか?」
「いいえ。勘です」
勘かよ…。
「回復魔法を使ったとはいえ、先程の戦闘と激痛で体力をかなり使ったので、時間を置いて体の体力が回復するまで待たなければいけません」
「要するに体の疲れが無くなったら目覚めるってことですか?」
「はい。正確には違いますけどね」
「え?どういう事ですか?」
そう神に聞くと、微笑みながら答えてくれた。
「私が目覚めさせていないだけです」
「…えっと、どういう事ですか?」
「本当は誠さんは目覚めていてもいい頃なのですが、今起きても体は体力を消耗しきっていて動けないと思いまして。体力が回復するまで私とお話でもしていてもらおうと思ったので呼びました」
「…要するに退屈だから話し相手になってもらおうと思ったわけですね?」
「そうとも言いますね」
胸を張り得意げな顔をする神。
「はぁ…。まぁ別にいいですけどね。それで、何を話しますか?」
「何も言わないのですか?」
「何も、ってどういう事ですか?」
「早く起こせ〜。とか言わないんですか?」
「言いませんよ。一応俺のことを考えてくれての行動ですよね?むしろ感謝したいくらいですよ」
「ふふっ。ありがとうございます」
実は俺ってコミュ力高いのかなぁと思っていたら神がふとこんな事を言い出した。
「そういえば誠さんは日記とか書かないんですか?」
「日記…。ですか?」
「はい。日記というのはいいですよ?毎日続けると意外とためになることも多いんですよ?例えば、作文等を書く時に文字を書く抵抗が無くなります」
「へ〜、そうなんですね。じゃあ帰ったら書いてみようかな」
ふむ、確かにそれは良いかもしれないな。作文とか、読書感想文とかそういうやつは俺には荷が重いからな。
「日記の内容にタイトルも付けてはどうでしょうか?意外とタイトルというものは決めかねてしまうものですし」
「あ〜、それ分かります」
タイトルを考えるだけで何分かかかるっていうのはよくあるし、すぐに決めれるようになりたいものだ。
「では、特別に日記帳のタイトルは私が決めてあげましょう。う〜んそうですね〜、誠さんの世界の言葉を使って、『School Days』なんてのはどうでしょう?」
「やめてください。それだけは絶対にやめてください殺されたくないです!」
その名前はあの伝説の作品を連想させてしまう!しかも、主人公の名前と俺の名前は漢字まで同じなのだ。日記をその名前にしたら最後、ヒロインに殺されてしまう気がする!
…冷静に考えてすごいよな。だって主人公死んだら喜んじゃうんだぜ?そんなのなかなかないぞ。
「そ、そんなに嫌ですか?」
「はい!」
「そ、そうですか…。では『学校の日々』というのはどうですか?」
「あ、はい。シンプルで良いと思いますよ」
「意味同じじゃんってツッコミ待ちだったんですけどね…。」
「いや意味同じじゃないですか!」
「もう遅いですよ!」
その後も適当に喋っていた。
会話をしていると、本当に神なのかを疑ってしまう自分がいた。どうしても、俺と同じ人間としか感じれなかったからだ。
「あ、そろそろ時間ですよ」
「もうなんですね。意外と時間が経つのは早いんだな…」
感覚としてはまだ10分程度なんだけどな。
「さて、名残惜しいですが、今から誠さんを元の世界に戻します。こっちに来てください」
なぜそっちに行かなきゃかは分からないが、一応言われた通りにしよう。
数歩歩き、神の近くに寄る。すると、ポンッと頭に手を置かれた。そう認識した瞬間、俺の体が光り始め、やがてその光は俺の中へと入っていく。
俺は、これを1度だけ体験している。
そう、スキルを授かる時と同じ現象だ。
「魔王の討伐、頑張ってくださいね。きっと、これは誠さんにしか出来ません。誠さんが死んでしまったら、他の方はきっと魔王討伐を諦めてしまうでしょう」
「…過大評価ですよ」
「ふふっ。誠さんは過大評価くらいが丁度いいんですよ」
「…どうも。それで、さっき何をしたんですか?」
「誠さんも察している通り、スキルを授けましたどんなものかは帰ってから確認して下さい」
「分かりました。えっと、ありがとうございます」
「大丈夫ですよ。あ!それともうひとつ。誠さんの分身を殺したのは、悪い方ではありませんよ。それだけは覚えておいてください」
「?分かりました」
(分身を殺したのは悪いやつじゃない?どういう事だ?)
そんなことを考えていると、神が話を続ける。
「それでは、元の世界に戻します。いいですか?」
「はい。お願いします」
言い終わった直後、再び俺の体から光が放たれ、元の世界へと戻ることになった。
「ふぅ、さて心配かけてごめんな。りん」
そう声を出すが、反応はない。それどころか、姿さえない。
辺りを見回すと、どうやら後ろにいたらしく視界の隅に足が見えた。
振り向くと、りんは倒れていた。
「りん?どうしたんだ?おーい。起きろ〜」
体を揺さぶるが、起きる気配がない。
きっと、倒れるまで回復魔法を使い続けてくれていたのだろう。
「ありがとな、りん。お前は俺の命の恩人だ」
みでぐれでありがどうございばずぅ( ᵒ̴̶̷̥́ ^ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )




