5話 マジでウザイ本
「え〜と、な、なんの冗談ですか?」
「冗談などでは無いですよ」
ニコニコしながらそう返すリアンさん。
「そんなこと言ってほら、テッテレー!ってなるかもだし…」
「てってれーとはなにか分かりませんが、これにはちゃんと理由がありますからね?」
「あ、なんだ。てっきり役に立たないから追い出すって言うテンプレなのかと」
「キューラさんはちゃんと役に立ってるじゃないですか。デスベアーがいい例です」
「じゃあ何故?」
「私は気付いてしまったのです……この村の可能性に!!」
え〜…
まぁ、確かに賢者が居たって言うのに人が少ない気がしないでもないけどさ〜。
「この村には賢者様が居た、そして今は勇者様が居る!こんな村がどこにあるでしょう!」
「そ、それで私に何をして欲しいんですか?」
リアンさんの迫力がすごい!
「まずこの村から出てここから少し遠いラバス二という少し小さい国で冒険者ギルドとして活躍してもらいます」
「ちなみにそのラバスニという国にはどれ位で着きますか?」
「徒歩で6日、馬車で2日ですよ。」
なら馬車で行こうかな。いや、全力で走ったらもっと早く着くのでは?あ、道わかんないや。
「それで、その冒険者ギルドで活躍してさりげなく、さりげなーくキューラさんがここの村出身という事を言ってください。そして自分が勇者だと言うことも可能であれば明かしてください。そしたらこの村は前とは比べ物にならない人が来る!はず!です!!」
「り、リアンさん落ち着いてください」
「こほん、ちょっと興奮してました。すみません」
「まぁ、とりあえず理由が分かりました」
ようするに、この村の発展のために村を出て宣伝しろってことだろう。
「それで、いつ出ればいいのでしょうか?」
「そうですね〜、ちょっと前に思いついたことなので何も準備してませんでした」
おいおい……
「明後日にラバスニ行きの馬車が来ると思うので、その時で大丈夫でしょうか?」
「分かりました。それまでの間何をしてればいいですかね」
「ブラブラしてくれて大丈夫ですよ。やって欲しいことは特に無いですし」
「分かりました〜。とりあえず今日は何もやることは無いですかね?」
「そうですね〜……特にないので今日は休んでください。お疲れ様でした」
家に着いた俺はまず確認しておきたいことがあった。
「さて、ベットの寝心地は?っと、あ〜。ふっかふかだ〜」
ふかふかのベット以外の心安らぐものがほかにあるだろうか?いや、ない!
「何して時間を潰そうか」
家の中をうろちょろしていると、ひとつの本棚を見つけた。
「本でも読んでようかな」
とりあえず一冊本を手に取ってみる
「えっと『賢者への道〜初級編~』って、もしかして魔法が使えるようになるのかな?」
試しに本を開いてみる
『まず、体内の魔力を感じてみましょう。胸に手を当て、集中すると何かを感じるはず!!ダメなら才能ないから諦めな。代金あざます笑笑』
何このウザイ本。まぁいいや、とりあえずやってみよう。
さて、まずは目を閉じ、胸に手を当てる―――
――ポヨン
「ふぁ!?」
そ、そういえば口調ばかり気にしてたけど体も女性になってたんだった!
女性の胸ってこんなに柔らか――いや、ダメだ!
こんなことしちゃダメだ!
こういうラノベを見た時、自分の体なんだし何気にしてんだ?って思ってたが、今なら分かる。自分の体でそんなことしたらもう戻れない気がする!
って、ダメだダメだ、集中集中……よし!
―――ポヨン
「あ〜もうダメだー!」
(やっと、やっとだ……)
何とか魔力的なものを感じることが出来た…。
ふと時計を見る。今は16時だから……3時間は経ってる。
さて、まだ時間はあるし魔法の練習でもしますか。
本を片手に村の外に出る。
さて、何から試そうか。
目次を見るに、火,水,氷,土の、それぞれ初級魔法まで載ってあるらしい。
まずは火からやってみるか。
「え〜と、魔物はどこかな?」
探知を発動すると、少し遠くに一体何かいるらしい。
「お、いたいた」
ゴブリンを一体見つけた。
「えっと、なになに?『最初に教える火魔法は〜・・・ファイアーボールっです!!使い方は簡単。火の玉をイメージして体内の魔力を手に集め、一気に敵に放つ!こんなの猿でもできるね!ちなみに、込める魔力の量によって威力は変わるから試してみてね!いや、試せ!!』」
くそ、安定のウザさだな!まぁいい。とりあえずやってみるか。
え〜と、まずは火の玉をイメージ。
ファイアーボールとなると、これくらいの大きさが妥当か?
「ファイアーボール!!」
そして出来たのはバスケットボールほどの大きさの火の玉だった。
それをゴブリンに向けて撃ってみる。
「ギギャーー!」
ゴブリンをあっけなく倒せた。
あれ、ゴブリンってこんな弱いのか?初級魔法で一撃……って、あれ?目眩が…
本を落とし、自分も地面に倒れる。
風で本がめくれ、薄れゆく視界にとある一文がめにとまる。
『魔力を使い続けると魔力切れって言って、意識がしばらくの間落ちちゃうよ〜。まぁそんな事になる人なんていないだろうから書く意味ないか〜笑笑』
クッソ、マジでうぜぇ。
その後家に帰り、お風呂でも騒いだのは言うまでもないだろう。
「ふあぁ。あぁ、今日か」
今日はこの村から出る日だ。
そういえば俺は武器も貰えないのか?貰えたのはあの変な鞄だけだし、俺はこの村の未来を背負ってるんだぞー。村に代々語り継がれる何かはないのー?
「おはようございます、エキューラさん」
「おはよう、リンダくん。どうしたの?」
「ママに言われて迎えに来たんだ」
「あぁ、リアンさんに」
「ママはもう村の出入り口で待ってるから早く行こ!」
「ハイハイ、ちょっと待っててね〜」
支度を終え家の外に出ると、退屈だったのか土をいじりっているリンダがいた。
「あ、きたきた。よし、行こー!」
リンダの後ろを歩いていると、やがてリアンさんを見つけた。
「さて、準備はいいですか?」
「はい、バッチリです!」
「道中に魔物がいるかもしれないので、この剣と馬車の乗車賃です。使ってください」
剣をくれたけど、なんだろ。もしかして村に代々伝わる凄い剣とか!?
「あの、これは?」
「自警団がよく使っている鉄の剣です」
ですよね〜……
ちょっと期待してた分、ちょっとだけ残念だ。
「そろそろ馬車が来るはずですけど・・・あ、来ましたね。向こうに行ったら冒険者ギルドに行って、デスベアーの換金をして下さい。きっと驚きますよ?」
「わかりました。では、行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい。この村の未来はキューラさんにかかってるのでお願いしますね!」
「分かってます!」
馬車に乗り後ろを見ると、見送りに来てくれた人全員が手を振ってくれていた。
手を振り返し前を向く。
「よし、頑張るぞー!!」
腕を空に突き出し宣言する。
「お客さん、ちょっと静かにして下さい」
「あ、はい。すみません」
みでぐれでありがどうございばずぅ( ᵒ̴̶̷̥́ ^ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )