3話 初めての実戦
今回は割とまったりした話です!
「あ、きたきた!」
リンダは玄関で靴を履いているところだった。
「それじゃあ行きましょうか!」
リンダと一緒に家を出る。家を出てまず目の前に現れたのは、活気ある人達だった。
「なんだい、リンダ、女連れて。デートかい?」
近くで屋台を開いていたおばちゃんが声をかけてくる。
「もう、マリーおばさん。そんなのじゃないって!」
「はい。そんな関係じゃないです。」
ニコニコ笑顔で断言する。
「あら、そうなの?つまらないわねぇ。」
「いや、つまらないって言われても……」
「リンダさんにはこの村を案内してもらっているんですよ。」
「あらそぅ?それなら、これを持っていきな!」
マリーおばさんが何かを投げ渡してくる。
「えっと、なんですか?」
見た感じ、りんご見ただけども
「これはリンンゴって言ってね〜。なんと、勇者様が名付けてくれたんだよー?」
「へぇ、勇者様が」
きっと先代の勇者が名付けたんだろうな。
「他にも、この茶色いのはジャガーイモとか、この赤いのはニーンジンと名付けてくれたんだよ」
「そ、そうなんですね」
この時、俺はこんなことをかんがえていた。
この人から大阪のおばちゃんの素質を感じる、と。
や、やっと開放された。あれからどれくらい時間が経っただろうか。少なくとも30分以上野菜について色々語られた。
結局マリーおばさんは、
「あらやだ、もうこんな時間。ごめんね、続きはまた今度ね!」
と言ってお店に戻って行った。
(まだやるつもりなのか……)
げんなりしていると、リンダに声をかけられる。
「大丈夫だよ。今日は早く終わった方だからね。いつもならまだ続いていたよ。今日はいい日になりそうだね!」
あれで早い方なのか……
「それじゃあ、今度は自警団の方に行ってみようよ!きっと歓迎してくれるよ!」
目を輝かせながらそう言うリンダ。
「どうしたのリンダ?なんでそんな興奮してるの?」
「実は俺、自警団に入りたいんだ!だから、行くたびに一緒に訓練をさせて貰ってるんだ!」
「それで行くのが楽しみだから興奮しているの?」
「うん!それに、デュースさんにも会えるからなおさら楽しみなんだ!」
「デュースさん?」
「デュースさんはすごいんだよ!村で一番強い人で、帝国騎士団の小隊長をやってた人なんだ!」
帝国騎士団がどれくらい強いのか分からないけど、とにかくすごい人らしい。
(ちょっと闘ってみたいな〜)
そんな事を考えながらリンダと、自警団のもとへ向かい始めた。
「着いたよ!ここがこの村の自警団の基地だよ!」
村の出入口付近の小さな小屋の前でリンダは足を止めた。
「デュースさーん!いるー?」
「おぉ、リンダか!その隣にいる嬢ちゃんは?」
「初めまして、私の名前はエキューラです」
「エキューラか。よろしくな!ちなみに、リンダの彼女か?ついにリンダに春が来たんだな!しかもこんな綺麗な人と!いや〜、俺の妻と交換したいくらいだぜ」
「いえいえ、そんな関係では決してないですよ?」
「なんだ、つまらんな〜。」
知らんがな。
「んで、リンダは分かるがなんでエキューラさんまでここに?」
「リンダさんに連れてこられたんですよ」
「ほう。つまり、リンダは良いとこ見せたいから強引に連れてきたってことか?」
「はい、それであっていると思いますよ」
「違うからね!?エキューラさんもやめて!」
デュースさんと盛り上がっていたらリンダが割り込んできた。
「さて、今日は村の外の見回りに行くが、お前らはどうする?着いてくるか?」
「はい!もちろんついて行きます!」
「それでは私も行きます」
「よっしゃ、決まりだ。行くぞー!」
俺たちはデュースさんと一緒に村を出た。
「お、魔物発見。リンダ〜。戦ってみるかー?」
見れば、全身緑色の小さい人らしきヤツを発見した。この特徴から察するにゴブリンだろう。
「え、俺?できるかな…」
「危なくなったら助けてやるから。ほれ、俺の剣貸してやるから行ってこい。エキューラにいいとこ見せれるぞ?」
おーい、聞こえてんぞ〜。
リンダは剣を受け取り、ぽつりと呟く。
「良いところ・・・。よし、やってやる!」
嘘やーん。俺がリンダに惚れることなんて万に一つもないのに〜。
「やー!」
ゴブリンに向かって走り始めるリンダ。
それに気付いたゴブリンがギャーギャー騒いで手に持っていた棍棒を振り回す。
「う〜、くッ!」
実戦は初めてなのか、動きが少し固いリンダ。ゴブリンに徐々に押され始めていた。
「うぉー!おりゃー!」
棍棒を上手く剣で受け流してゴブリンを斜めに切る。
「おぉ〜、やれば出来るじゃないかリンダ〜。」
「ありがとうございますデュースさん!」
「それで、リンダの戦闘を見た感想はどうなんだ?ん?」
デュースさんが俺をニヤニヤと見てくる。
はぁ、めんどくさい。
「はい。かっこよかったですよ」
適当に流すことしたが、どうやら逆効果だったらしい。
「良かったなリンダ!かっこよかったってよ!今夜は赤飯だな!だっはっは!」
「えっと、その、エキューラさん、ありがと…」
(マジでこいつらめんどくせぇ)
心の底からそう思った。
「お、またいるぞ。今度は嬢ちゃんがやってみろ。ほれ」
え、俺?まぁいっか。
「分かりました。では、行ってきます」
俺がゴブリンの近くまで歩いていく途中、後ろから話し声が聞こえた。
「ねぇデュースさん。大丈夫なの?危なくない?」
「はぁ、わかってねぇな〜。女はピンチの時に助けてくれる男に弱いんだぜ?だから、嬢ちゃんがピンチになったらすぐ駆けつけるんだぞ。」
「デュースさん、師匠って呼んでもいいですか?」
「おう!好きに呼べ!」
さて、バカ2人は放っておいて、こっちに集中しますか。
俺のLvは1。前のエキューラの時みたいに動けないだろうから、早くこの状態に慣れないとな。
そして、腰にある刀を取りだし、
スカッ
「・・・あれ?」
そして気付く。貰ったのはスキルだけであって、武器は貰ってないということに。
(やばいどうしよ。いっその事素手で闘うか?)
いや、そんなのやった事ないしな〜。あ、そうだ、竜の息吹ってまだ使ったことないから、ちょうどいいから使ってみよう。
俺はLv1とは思えないスピードで走り、ゴブリンの頭を掴み宙へと投げる。
(よし、これで回避は不可能になったから、準備OK!)
「竜の息吹!!」
そう言うと、使い方が頭に流れ込んでくる。口をゴブリンに向けて開け、脳内で炎を圧縮するイメージをすると、開いた口の中にオレンジ色の球ができたと思った・・・その瞬間の出来事だった。
ビィィーーーー。と音をたててレーザーのようなものが発射された。
ふむ、さすが最強のモンスターを倒さなければ手に入れれないスキルだ。ゴジ○になった気分だった。
もちろんゴブリンはオーバーキルで、跡形もなく消えていた。
やっちまったかな?と、後ろを見てみると案の定、開いた口が塞がらなくなっていたバカ2人がいた。
「お、おい、嬢ちゃん。今何をした?」
何をしたのか、か。
「ビィィってやった。」
「んまぁ、それくらいは見ればわかるがな…」
デュースさんは呆れているようだった。
その後は何事もなく、村の近くまで戻ってきたらデュースさんが話しかけてきた。
「なぁ嬢ちゃん。今から俺と模擬戦しないか?」
「え、どうしてですか?」
「まぁ、さっきのに頼ってばかりじゃダメだからな。接近戦がどれくらいできるかを見てやろうって思っただけだ」
ふむ。確かに竜の息吹は近づかれたらどうしようも出来ないからな。
「分かりました。受けて立ちます!」
「よし、ルールは簡単!武器の使用は禁止で、嬢ちゃんはさっきのよく分からんやつも禁止な。」
言われなくてもそのつもりだ。あれは人に向けて撃つようなものじゃないと分かったしな。
「よし、嬢ちゃんの全力を見せてみろ!」
全力、か。よし、
「行きます!」
スキル使用。超加速!!
「おう!こい、嬢ちゃ――ぎゃぁぁ!!」
目にもとまらぬ速さでデュースさんの懐に入り、その勢いのまま腹を全力で殴る。
(さぁ、ここからどう来る!)
相手は元帝国騎士団の小隊長。どれくらい強いか分からないが、こんな程度ではやられないはずだ。だが、
「ちょ、まって、痛い痛い痛い……」
俺の予想は大きく外れ、デュースさんはお腹を抑えながらうずくまっていた。
みでぐれでありがどぅ( ᵒ̴̶̷̥́ ^ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )