20話 素直さは魅力のひとつ
くそ!金曜が休みじゃなくなった!
序・中盤ちょっとシリアスな雰囲気だから苦手な人は最後の方の『帰りのHR』ってワードを探して、そこから読み始めることをおすすめします。
あと、誤字・脱字があったら教えてください!
その日の放課後。俺はA組へと足を運んでいた。
「すみません。タツナさんとリンさんっていますか?」
「タツナ様とリン様?今はいないわよ」
扉の近くにいた人が教えてくれた。
「そうですか。では、また来ますね」
呼んでおいていないのかよ…まぁ1週間も来てないんだから今日も来てないと思っているんだろう。
探すのもめんどいし、今日は帰るか。
そう考え、教室を後にした。
その同時刻、中庭にて
「・・・はい。ここにサラらしき人はいるようです。・・・分かりました。確認次第、サラでしたら帝国に連行します。では、また次の定時連絡の時に。失礼します」
そう言って水晶を鞄にしまうタツナ。
「はぁ、定時連絡ってなんでしなきゃなんだろうね」
「仕方ないだろう。生存確認という意味もある。もししなかったら俺らは死んだという扱いになるだろう」
「そうは言ってもさー、委員長はめんどくさくないの?」
「まぁ、しなくてもいいのであればしないがな」
「ほら、やっぱりめんどくさいんじゃん」
「はぁ。変なこと言ってないで寮に戻るぞ」
「は〜い」
鞄を取りに教室に戻ると、そこには不満そうな顔のサラさんがいた。
「どこに行ってたの?」
「う〜ん、ちょっとね」
委員長達に会いに行ってたって言うと心配をかけてしまうかもしれない。ここは黙っておこう。
「どうせ校長先生のとこにでも言ってたんでしょ?仲がよかってみたいだし、校長先生超美人だし」
俺の優しさを返せ。10倍にして返せ。
「はぁ、ほら。寮に戻るぞ」
「一緒に行ってくれるの?」
「あたりまえだろ?女の子を一人で下校させるなんてしねぇよ」
委員長と鉢合わせしちまったら帝国に連れてかれるみたいだしな。
「そ、そう?ありがとね。キューラ」
「ほら、行くぞ」
そうして、俺らは学校を出て寮に向かった。
翌日の朝、俺は今度こそ委員長達に会うためにA組に来ていた。
「えっと、君は?」
「どうも、エキューラと言います。クラスの人にタツナさん達が呼んでいると聞いたので来ました」
「そうか。実はとある人を探していたのだが、どうやら君ではないようだ。呼んでおいて済まないな」
「いえいえ、大丈夫ですよ。私もタツナさんとリンさんに用がありますから」
「そうなのか?」
「はい。ここでは少し言いづらいことなので、場所を移してもいいでしょうか?」
「分かった。リンも呼んだ方がいいか?」
「はい。お願いします」
場所は中庭。朝に中庭に来る人はいないだろうからここにした。
とりあえず分かったことは、俺の姿を忘れているってことだ。
あの白い部屋で、俺が女になっていると指摘した委員長でさえ疑問に思わないので、忘れているとみてもいいだろう。
「それで、用とはなんだ?」
「少し聞いてみたいことがあるんです」
「何を聞きたいの?」
「・・・あなた達は、どこまで覚えているんですか?」
「どこまで覚えているか…とはなんだ?」
「自分のこと。自分の仲間のこと。そして、雨津高校の事を」
「っ!?何故雨津高校のことを知っている!?」
雨津高校とは俺達が通っていた高校の名前で、それを知っているということは委員長達の仲間でもあるということ。
「あなた達は雨津高校2年1組の生徒で、人数は35人。この世界の帝国で勇者として召喚された。違いますか?」
「いや…合ってる…」
「な、なんであなたが知っているの!」
リンのやつ、いつも冷静だったと思うが、流石に今は結構慌ててるな。
「教えた方がいいですか?」
「いいから、答えなさい!『ファイアーボール』」
はぁ。とため息をつき、風を生み出し炎を掻き消す。
「落ち着いてください。私はあなた達の敵ではありませんから」
「じゃあなんだって言うの!」
「私は、あなた達の仲間です」
「な、仲間?」
そう。味方ではなく、仲間。
「私はあなた達と同じく雨津高校2年1組の生徒です」
「嘘よ!だってあなたはいなかったもの!」
「いいえ、いました。ただし」
一泊置いてからもう一度口を開く。
「男だったけどな」
「「え…」」
いきなり口調が変わり、驚く二人。
「二人とも本当に覚えていないのか?」
「わ、分からない…君が誰であるかも…何もかも」
「私も分からない…」
「俺たち1組の人数は35人。でも今は二人が行方不明。違うか?」
「違う!行方不明は一人だ!」
「違わないんだよ。一人は牧野咲良。じゃあもう一人は誰だ?」
「そんなの、知るわけないじゃん!」
「じゃあ、牧野咲良を入れた合計のお前たちの人数はなんだ?」
「そんなの!30・・4人っ!?」
「気付いたのか?一人足りないって事に。その一人の名前が分かるか?」
「分からない…性別も、顔も、名前も…何もかもが分からない…」
「教えてやるよ。『時任誠』超絶イケメンの男子高校生。それが俺だ」
「時任…誠」
「だめ。分からない…」
「そうか。まぁ言いたいことは言ったし、俺は戻るよ。そろそろHRだしな」
そう言って二人を取り残し、教室に向かう。
思い出してもらおうと思ったが無理そうだな。何とかできないだろうか…
「ねぇ、さっきの話。委員長はどう思う?」
「・・・本当の事…なんだと思う」
「委員長もそう思うんだ」
「あぁ。誠、だったか?そいつの話が本当なんだとしたら色々と辻褄が合うんだ。俺達のこと、高校のことを知っていること。とかが」
「だよね…」
「考えたって仕方ない。早く戻ろうか。」
「うん…」
そうして、二人は教室へと戻っていった。
帰りのHR、こんな話があった。
「さて、そろそろエレメンタル・トーナメントが近づいてきています。今のうちにより多くの魔法を覚えるなり、できることを尽くしましょう」
エレメンタル・トーナメント?なんか凄く痛い名前だな〜。
う〜ん、できるならお断りさせていただきます。
「なお、この大会は覚えている属性の魔法全てに出場してもらう為、たとえ初級魔法でも覚えていたら出場してもらいます」
ふぁ!?
え待ってなんて言った?初級魔法でも覚えていたら出場!?
ステータスを開き、覚えている属性の種類を数えてみる。
「5・・だと…?」
軽く絶望していると、レディラ先生が続ける。
「なんでだよと言う人も多くいると思いますが、我慢してください。自分がどれくらい強いのか、この魔法で何が出来るのかをよく知ってもらうための大会ですので」
あぁ、気分最悪だ…あ、そうか。1回戦目で負ければいいんだ!
そんなことを考えていると、先生が続ける。
「この大会は生徒たちが面倒くさがってちゃんとやる人がいないということなので、今年から優勝者に景品を用意しましたので頑張ってくださいね」
え、マジで?やった頑張ろ!
よーし、全員全力で蹴散らしてやるぜ!!
「今からプリントを渡すので、そこに名前と出場する大会に丸をつけてください」
配られたプリントを見ると、大会について色々と詳細が書かれてあった。
まとめると、大会は火,水,氷,土,風の全部で5つあるらしい。そして各属性の魔法で戦い、戦闘続行不可にする。または場外に出せば勝ちらしい。
よし、全部に丸をつけてっと!
「それでは、渡したプリントを回収するので、後ろから前に送ってください」
やがて全てのプリントが集まり、話を続ける。
「それでは少し長引きましたが、これでHRを終わります。では、解散」
長かったHRが終わり、サラさんと一緒に寮に戻ろうとすると、カリナさんが話しかけてきた。
「キューラはどの大会に出場するの?」
「ん?全部だよ?」
「へぇ、全部なのね。でも、大丈夫?」
「なにが?」
「全部が全部同じくらい使えるって訳でもないんでしょ?一つや二つ苦手なのがあるんじゃないかなって思ったんだけど」
「まぁ、覚えてるんだから仕方ないじゃん…」
「え?キューラは正直に書いたの?」
「・・・どういう事?」
「だって、学校にどの魔法を覚えてるかなんて確認する手段がないもの。あったとするならそれは国宝に指定されてもおかしくないわ」
「じゃあカリナは?正直に書いたり…」
「私は正直に書いたわよ?」
まぁそりゃそうか。魔法大好きみたいだしな。
「でも、周りの人は自分が得意な属性しか丸つけてないと思うわよ?」
マジか…まぁ別にいいんだけどさ。
「だ、大丈夫よ!その素直さも魅力だと思うわ!」
「あぁ、うん。そうだね」
慰められてしまった。気にしてないのに。
ちなみに後から聞いた話だが、サラさんも正直に丸をつけたらしい。
その素直さも魅力だと伝えたところ、顔を赤くしてうつむかれた。
みでぐれでありがどうございばずぅ( ᵒ̴̶̷̥́ ^ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )




