プロローグ
初めて小説を投稿します。
このプロローグにまず引いてしまう方もいると思いますが、話の中盤くらいからの暗示、というか要になるので、出来れば我慢して、二、三話くらいまででも読んで下さると嬉しいです。
遥か遠い昔、この地は一面の水で覆われていた。主は空の上からその清々しい青色を眺めるのが好きであった。
しかし、気が遠くなる程時間が流れると、さすがに青一色の景色にも飽きがきた。そこで、他の色も加える事にした。
まず、手元近くに生えていたハースンの草の実を水の中に投げ入れた。
すると、ハースンの実は水に落ちたと同時に芽を出し、次々と葉が出て水面に緑が広がった。
そして今度はそこから蕾が膨らみ始め、緑の絨毯に赤やピンク、黄色、そして白い花の柄が加わっていった。
主はその美しい景色に暫く見入っていたが、それほど時間が経たないうちに、風に拠って、美しい色は方々に飛び散り、海はまた元の青一色に戻ってしまった。
主は酷くがっかりした。
そこですぐさま、もう一度ハースンの草の実を水に投げ入れ、それと同時に、今度は土の粉と小石も投げ落とした。
すると今度は草の絨毯の周りが土と岩で囲われて、風に吹き飛ばされる事も、水に流される事もなかった。
土の砦はその後も広がり続け、陸地となり、島になり、やがて大陸となっていった。
そしてそれに伴い、植物以外にも、多種多様な生き物が生まれ、あっという間に増えていった。
その様は大変面白い、興味深い景色ではあったが、統制がとれていないため、けして美しいものではなくなっていった。
主は、美しいものが好きではあったが、それは単に見た目の事だけではなかった。
生き物を創った以上、それらのもの達にも、幸福と満足感をあたえなければならない。
生あるものの幸福なオーラ、それこそが本当の美である。
そこで、主はまず、眼下の土地の統制と規律を造るために、六人の弟子と伴に自ら大陸へと降り立った。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ある日、主は六人の弟子の前でこう言った。
「この大陸も大分統制されてきたので、別の場所に、また新たな大陸を創りたいと思う。そこで、後の事はお前達に任せたい。皆で助け合い、話し合ってやっていって欲しい」
六人の弟子のうち、アニーとエミィは即座に頷いたが、他の弟子達は戸惑いを隠せなかった。
そしてその中の一人、リブが怖れながらこう尋ねた。
「頭は誰がなるのでしょうか?」
「頭とはリーダーが誰かということかね?」
「そうです」
「お前達は、それぞれに異なる素晴らしい能力、技術がある。お互いにその力を共有し、助け合っていけば、事は済むと思うのが、それでもリーダーが必要だというのなら、お前達が話し合って決めなさい」
四人の弟子達はお互いに顔を見合せ、それから、アニーとエミィにちらりと視線を向けた。
弟子達は主の言う通り、皆それぞれに優れた才能を持ち合わせてはいたが、その中でもアニーとエミィの二人は飛び抜けていた。
しかも、性格も素晴らしく、非の打ち所が無かった。その上、二人は恋人同士だ。彼等がリーダーになるであろう事は、容易に予測出来た。
それは当然な事・・・・・
頭ではそれがわかっていても、安易に納得はできない。
嫉妬する。
くだらないプライドが心を乱す。
そしてそんな自分が、嫌で嫌でたまらない。
だから、主にリーダーを決めてもらいたい。主が決めた事なら仕方ないと納得して従う事が出来るから。
「私達では決められません。どうか主様がお決めになって下さい」
リブと他の三人が口を揃えてそう言った。
主は困った顔をして暫く考え込んだ。
そして、深いため息をしてからこう言った。
「どうやら、私は失敗したらしい」
「えっ・・・?」
「えっ・・・?」
「えっ・・・?」
「えっ・・・?」
「私の指示を卒無くこなすお前達に、私は満足していたのだが、自分の頭で考えて動くという、最も大事な事を学ばせていなかったようだ」
主はゆっくりと弟子達の顔を見回しながらこう命じた。
「お前達が、互いに協力してやって行く事が出来ないというのならば、今から、この大陸を四つに分ける事にしよう。
リブ=ファーミング、
ハーブ=メディスン、
メグ=エンチャント、
マス=ディスペンサー、
各々、自分の才で己の土地をまとめてみよ」
主の思いがけない命に、弟子達は困惑した。
しかも、四等分とはどういうことだ。弟子は六人いるというのに。
主は弟子達の疑問に気付いて、こう付け加えた。
「この大陸には多種多様な魔獣が住んでいる。今までは、お前達が協力し合って制御できていたが、一人一人に別れてしまっては、それも難しいだろう。
そこで、魔獣達は大陸の中心に纏め、アニー=ガーディアンに統括させる事にする。
そして各々に任せると言っても、やはり一つの大陸として纏まりがなければ、困る事もあるだろう。
私はこれから、いくつもの大陸を造るつもりでいるから、それらの大陸とも、いずれは関係を持つかも知れないしな」
主は、暗に不安な未来予想を与えると、不気味な笑みを浮かべた。
「故に、四つの国の連携が上手くいくように、連絡機関が必要になるだろう。
それをエミィ=アービトレイトに担ってもらう事とする。つまりは調整役だな」
結局の所、主のお眼鏡にかなったのは、アニーとエミィだったのだと、他の弟子達はそれを思い知り、項垂れたのだった。
そして、絶望感を抱きながら最後にこう尋ねた。
「今更だと言うことはわかっていますが、我々がまた一つになる為にはどうすればよいのでしょうか」
すると、主は今度は優しい目をしてこう答えた。
「各々が己の考えで、己の領土に住むモノ達の幸せを考えなさい。そして全体的に、皆の幸福度が上がれば、いつか、きっとまた一つになれるだろう」
と。
異世界物ですが、話の場所はヨーロッパのイメージで、時代は中世末期から近代初めくらいだという想定で書いています。