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剣と魔法と富豪冒険者  作者: パラケルスス
第3話 エルフ族の街
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14. 国王陛下のSランク冒険者

 ナイキ国王陛下が落ち着いた口調で、「なぜフェフェがエルフ族と人間の混血だと思うのだ?」と訊いてきたので、「フェフェさんは青い髪をしていますが、染めていないと気づきました。大賢人ジャービルの書いた本の冒頭に、『蒼い髪の友たちに感謝する』という記述があったので、エルフ族の血が入っていると推察しました」と嘘をついた。ナイキ国王陛下は、「では、年齢の根拠は?」と訊くので、「エルフは人間の8倍の寿命を持つと言われています。今、16歳ということはだいたい128歳以上になります」と言った。

 国王陛下は俺をじっと見つめた後、大きくため息をつき、「ふぅー。あの小さかったマリシがな。自分が歳を取ったと、改めて認識した。そう、お前の言うとおりだ。フェフェはおそらくハーフエルフだ。だが、このことはフェフェ自身は知らない。フェフェを養女にしたのは6年前で、余と王妃がまだ冒険者だったころの話だ。今日までフェフェには一人も友達がいないのは、余と王妃が意図的にしてきたことだ。あの子が自分を籠の鳥と言ったのはそういうことだ」と、一気に言った。イリス王妃殿下は、「あの子を養女にしたのは偶然だったのよ。私とナイキが浸食の森辺りを探索していた時、ふらふら歩く、あの子に出会ったの。最初はなんの反応もない少女だったわ。でも、連れ帰って一緒に生活しているうちに、あっという間に言葉を覚えたわ。そして、私が教えた魔法をすぐに習得し、まるで呼吸をするように詠唱したのよ。私よりずっと強力な魔法をね。それに、とっても素直で良い娘なの。私とナイキは喜んだわ。神が良い子を授けてくれたって。でも、ある時、気づいたの、身体がまったく成長していないって」と言った。

 ナイキ国王陛下は沈痛な面持ちで、「余はフェフェが病気かと思ったんだ。いろいろ調べていくうちに、一部のエルフ族は生まれつき髪の色が青いという文献を見つけた。エルフ族と言ったら尖った耳で、森に住むぐらいしか知らなかったから、フェフェがエルフ族と関係あるとは思わなかった。だが、何かの時にフェフェがケガをした。その血を見たら青かったんだ。ようやく余は、フェフェが人間族ではないと気づいたんだ」と言った。

「お二人と出会うまでの記憶は、フェフェになかったんですか?」と訊くと、イリス王妃殿下が、「記憶どころか、言葉まで失っていたわ。フェフェにはエルフ族と一致するところと、一致しないところがあって、私とナイキの間では、フェフェはハーフエルフだろうって結論になったのよ。そして、フェフェを守ると誓ったの。ナイキが国王に即位したのは、娘のためもあってよ。人間族以外の種族を受け入れる世の中にしたいと思って。私たちは、一生をかけて、フェフェを守るつもりでいるわ」と言って、言葉を切った。そして顔を伏せ、「でもね、あの子、とても賢い子なのよ…。とうとう誤魔化せなくなってきたわ。この前の夜、いつになくナイキとフェフェが強くぶつかってしまったの。フェフェは泣きながら自室に引きこもっていたわ。それで私とナイキは話し合って、いつまでも娘を籠の鳥にしておけないって結論に達したの」と言った。

 しばらく沈黙が流れた。

おもむろにナイキ国王陛下が口を開き、「Sランク冒険者に依頼したい。フェフェをエルフ族の元に戻してくれないか? マリシでなければエルフ族を探し出せないと思う」と言った。「お二人は、それでいいんですか?」と聞くと、イリス王妃殿下が涙をこぼし、「私もナイキも老いる一方だけれど、あの子は若いまま。長命な種族が短命な種族と一緒にいると、可哀想な、寂しい思いをさせるわ。いつまでも籠に入れておけないのよ。でもマリシちゃんがあたしたちの歳に追いついてきてくれて、救われた思いよ。今、頼める人はマリシちゃんしかいないの」と言った。続いて、ナイキ国王陛下が、「フェフェには明日、マリシの冒険者パーティーに入ることを許すと伝える。無理な依頼で申し訳ないが、どうかあの子をエルフ族の元に連れて行ってくれ。あの子を騙すみたいで心苦しいが、これが最善の方法だと思っている。親としては、最後の最後に冒険者になりたいって言う、フェフェの夢を叶えさせてやりたいしな」と言い、目を真っ赤にした。

 途方もない依頼だが、この状況では承諾するしかない。「わかりました。フェフェ殿をエルフ族の元に帰すために、エルフ族を探します」と言うと、ナイキ国王陛下は、「ありがとう。娘とこんな別れ方になって寂しいが、6年間、嘘に嘘を重ねてきたんだ。真相を知ったら娘は余を恨むだろう。それは覚悟している。フェフェがエルフ族の社会に戻ったとき、この手紙を渡してやってくれ。謝罪と感謝をつづっている」と封筒を渡してきた。

「今回の依頼は、エルフ族を見つけだせなければ成功しません。ですから、昔、フェフェを見つけた場所の地図など、手掛かりになるものを見せてください。それから、今の話をネイトにだけは話しておこうと思います。下手に隠すと、いろいろ疑われて、うまく行かなくなるからです。いいですか?」と訊くと、「マリシが必要と思うなら、なにをしても構わない。それから、参考になりそうな資料はマリシの家に届けるようにする」と約束してくれた。

 ようやくイリス王妃殿下の表情が和らぎ、「まさか、あの小っちゃいマリシちゃんに、世話になるとわね。私はまだお姉ちゃんのつもりだったのに」と言うと、ナイキ国王陛下が「余もまだ兄ちゃんで行けると思うぞ」と笑みを浮かべた。イリス王妃殿下は、「あなたはおじさんでしょう? だって、私は30歳を過ぎたばかり、あなたは40歳に近いじゃない」と言うと、「ははは、そういうことにしておくか」とナイキ国王陛下が笑った。仲の良い夫婦のようだ。

 俺はナイキ兄ちゃんにではなく、国王陛下に伝えるべきことを言うため、「国王陛下、実はお耳に入れておきたい話があります」と改まって言うと、ナイキ国王陛下の表情が引き締まり、「聞こう」と短く言った。

「王国を転覆させようとする計画が進行しているようです」と伝えたが、国王陛下の表情は動かず、「続けてくれ」と言った。「密かに大量に武器を買い付けている者がいると聞きました。それは貴族です」と言うと、ナイキ国王陛下は厳しい顔で、「名はわかっているのか」と言うので、「ボードウォーク公と聞きました」と伝えると、ナイキ国王陛下の厳しい表情が緩んだ。そして、「情報には礼を言うが、ボードウォーク公は貴族院の中でも改革派で、余の右腕だ。政治の世界は汚く、偽の情報で疑心暗鬼にさせようとするのは常套手段。今回もボードウォーク公に敵対する勢力の偽情報だろう。余はボードウォーク公から、王国の辺境に魔物の軍団が現れたと聞いておる。そのための武器調達であろう」と説明された。情報源が、武器屋の雇われ店主だけで裏を取っていなかったので、「余計なことを話し、申し訳ございません」と素直に謝った。

 ナイキ国王陛下は、にやりと笑い、「良い。政治の世界は海千山千の者ばかりだ。Sランク冒険者であっても(かな)うまい。ははは。フェフェのことを頼む」と言ってくれた。イリス王妃殿下も、「あなたしか頼める人がいません。よろしくお願いいたします」と言った。「承知しました。それでは失礼します」と言うと、窓枠に飛び乗り、国王陛下と王妃殿下の私室を後にした。


 家に帰ると、一階の俺の部屋の前にある、ネイトの部屋の扉がわずかに開いていて、光が漏れていた。俺は、そっと帰宅したつもりだったが、ネイトの部屋の扉が開き、「お帰りですか?」と言ってきた。「しっ! 話したいことがある。俺の部屋に来ないか?」と言うと、ネイトは驚いた顔をし、「は、はい!」と答え、部屋に入ってきた。王城であったことを手短に説明し、「今の話はメーティスとクロートーには秘密だ。明日から協力を頼む」と言うと、ネイトが力強く頷いた。

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