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剣と魔法と富豪冒険者  作者: パラケルスス
第3話 エルフ族の街
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11. 王城でのパーティー

 御前試合の大番狂わせは、あちこちに影響を与えた。王都新聞には「冒険者チームは誰だ?」という特集記事が載り、俺たちのプライベートの一部が書きたてられたが、ほとんどの内容が間違っていたので気にしなかった。賭けで大儲けしたのは俺だけでなく、執事のノートン他、俺の家に関わる者たちもだった。賭けたお金は、最終的に500倍ぐらいになった。


 今回の件で、王国騎士団や王国魔術団の恨みを買わないか心配したが、むしろ逆だった。鷲鼻の王国騎士団長ははワトロージと言い、ジュークが無罪になり、王国騎士団に復帰できた、と礼を言われた。一緒に来た朴訥な武人グランチからは試合後の【回復】魔法の礼を言われた。のっぺりした顔の王国魔術団長も訪問した。王国魔術団長はノアと言い、衛星都市ザークの一件に王国魔術団員が関わったことを知り、謝罪に来たようだったが、「すまなかった」とは一言も言わず、ごちゃごちゃ言っていた。一緒に来たシュルツは、「クマさんには参りましたよ」と笑った。

 なんの面識もない、王立アカデミー所属の王立研究所の所長もやってきた。表向きは、寄贈している研究装置にたいするお礼だったが、『魔法』戦で見せたクマの着ぐるみの技術を教えて欲しいようだった。2階の部屋にいたメーティス先生に、王立研究所の所長が来ていることを伝えたが、会う気も教える気もないらしく、「クマなら森に帰ったと思うわ」と素っ気なかった。所長に、そのまま伝えると、冗談だと思ったらしく、「ドングリを用意して待っています」と面白くもないことを言って帰っていった。

 御前試合から数日後、王城から俺たちにパーティーの招待状が届いた。パーティーに参加する準備はしていなかったので、王都で一番の仕立て屋に頼み、女性陣には新しいパーティードレスを作った。俺は『重軽装』正装3番というタキシードにした。男は安上がりだ。ベラムダ弁護士にもパーティーに招待されたことを連絡したが、書面で不参加の連絡が届き、それっきりに会うことはなかった。


 パーティー当日、俺、メーティス先生、ネイト、クロートーの4人は、豪華な馬車で王城へ赴き、衛兵の案内で居館一階のパーティー会場に行った。室内は、蝋燭の火だけではなく、【発光】の魔法があちこちに施され、昼間のように明るかった。テーブルには豪華な料理が並び、ウエイターがワインを注いで回っていた。

 俺たち4人が会場の隅にいると、青緑色のツインテールに、白いワンピースを着た、フェフェがやってきて、「こんばんわー。フェフェです。お会いできてうれしいのです。マリシさん、ネイトさん、クロートーさんにクマさん。うぷぷぷ」と悪戯っぽく笑った。コロッセオでアイドルをしていた時よりも子供っぽく感じた。

 気安いクロートーが、「あのお姉さんだ」と言い、フェフェが「お姉さんはないと思うけどなー。フェフェはまだ16歳なのです」と抗議したが、「えー。ずっと年上に感じる」と言った。クロートーよ、少しは遠慮しろ。

「先日は見事な進行と解説でしたね。魔法とか剣とか興味があるのですか?」と訊くと、「父は剣を、母は魔法をやるのです。親の影響でフェフェも、少しだけ魔法を使います」と答えた。

 続々と人が集まる中、勝手のわからない俺たちが4人で固まっていると、「みなさん、部屋の中央に出てはどうですか? きっとみなさんと話したい人はたくさんいると思いますよ」と促され、ゾロゾロと会場の真ん中に行くと、いろいろな人から話しかけられた。フェフェは参加者たちに俺を紹介し、会話が途切れないよう話題を提供してくれた。競技では素っ気ない態度を取っていたネイトの周りにも、男性が群がり、珍しく笑みを浮かべて会話していた。クロートーはここでも人気者で、周りに集まる男性たちを笑わせていた。メーティス先生は、どんな話題を振っているのか知らないが、集まる男性たちに、ぎこちない笑みを浮かべさせていた。

 なんとかパーティーの中に溶け込めたと思っていた時、「国王陛下、王妃殿下が入室しまーす」と衛兵が叫び、全員が入り口に注目し、拍手した。笑みを湛えたナイキ国王陛下がイリス王妃殿下が並んで現れ、上座の中央に立つと、会場を見渡し、「みなの者、どうか楽に。今夜のパーティーは御前試合に勝利した冒険者チームを讃えるものだ。王国騎士団と王国魔術団の選抜が敗北したのは残念だが、この敗北で王国が得たものもある。どうか今宵の宴を楽しんでくれ」と挨拶した。王国が得たものとは、ジュークの命のことだろうか? 王国騎士団員を失うのは王国にとって大きな損失だが、だからと言って法をおかすこともできないし、国王陛下は苦しいお立場だったのだろう。

 パーティー会場は再び社交場になり、紳士淑女が談笑した。メーティスとネイト、クロートーをこちらに招き寄せ、「国王陛下と王妃殿下にご挨拶に行こう。くれぐれも無礼のないように」と囁いた。そして、4人で国王陛下と王妃殿下の元に行って一礼し、「マーリンとミネルバの子のマリシです。ナイキ兄ちゃん、イリス姉ちゃん、お久しぶりです」と挨拶すると、一瞬、怪訝な顔をしたナイキ国王陛下が、みるみる驚きの顔に変わった。

「どこかで見た顔と思ったが、師匠の子のマリシか!」と喜んだ。事情を知らないメーティス、ネイト、クロートーはきょとんとした顔をしていたが、構わず「ご無沙汰しています。親を継いで冒険者をしています。爺から国王陛下に即位なさったと聞いたのは最近です。この街に来たのは数週間前です」と言うと、「爺? あの執事はまだ生きているのか。懐かしいなぁ。王妃、覚えているか。ほら、師匠の息子のマリシだ」とナイキ国王陛下が言い、イリス王妃殿下が「もちろん、覚えているわよ。マリシちゃん、えーと、もう大きいからマリシ殿よね。ずいぶん立派になったわねえ」と目を細めた。イリス王妃殿下は、おやじの下で魔術師の修業をしていた時から美人だったが、今も変わらず華やかで気品があった。

 ナイキ国王陛下が懐かしそうに、「王妃はしょっちゅうマリシと風呂に入っていたからなぁ。マリシは『ナイキ兄ちゃんは臭いからイリス姉ちゃんと風呂に入りたい』って言っていたよな。余はひそかに気にしていたんだぞ。ははは」と言って笑った。こちらが覚えていない昔の話は、どんな話であれ、ひどく恥ずかしい。

 ナイキ国王陛下の話は止まらず、「あの頃は5歳ぐらいだったか? 今、何歳になった?」と訊かれ、「17歳です」と答えると、「そうか。師匠たちはお元気か?」と訊かれ、「両親は、2年前、僕が冒険者になった時に旅に出ました」と伝えた。「そうか。御前試合、すごかったなぁ。両方の師匠のいいところが出ていた。剣も魔法も使うんだな」と褒められ、「はい。ありがとうございます」と答えた。

 イリス王妃殿下が「さすが師匠のお子さんね」と言い、「こちらの御婦人方は?」と訊いてきた。「僕の仲間です。こちらはメーティス先生。王立研究所の元教授で、今は私のラボの所長です」と紹介すると、ナイキ国王陛下が「あのクマさんか。ははは。あれは面白かった」と笑った。続けて、「こちらはネイトです。衛星都市ザークの冒険者ギルド本部の職員で、僕の冒険者パーティーのメンバーです。Aランク冒険者です」と紹介すると、ナイキ国王陛下は「おーっ、あの弓の名手ユーリーと引き分けた! 実戦なら間違いなく、貴女の勝ちだ」と讃えた。ネイトは静かに礼をした。

 クロートーは自分から、「国王陛下と王妃殿下、はじめてお目にかかります。あたしはマリシのフィアンセのクロートーと申します」と言い出した。慌てて、「い、いや。フィアンセではありません。仲間の一人、クロートーです」と言うと、クロートーが俺を睨んだ。ナイキ国王陛下とイリス王妃殿下は変な顔をしたが、事情を察したのか、「なるほど。あのマリシがな。ははは。余も王妃と結婚するまでいろいろあったが、ここまでひどくはなかったぞ。ははは。傑作だ」とおかしそうに笑い、隣のイリス王妃殿下が笑いを堪える顔で「失礼ですよ」と言い、「このパーティーが終わった後、みなさんとお茶でも飲みながらお話でもどうかしら?」と誘ってくれた。「ありがとうございます。それでは後ほど、伺います。失礼いたします」と国王陛下と王妃殿下に頭を下げて、その場を去った。

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