表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法と富豪冒険者  作者: パラケルスス
第3話 エルフ族の街
53/373

10. 御前試合『剣』

「さーて、只今のところ、王室チーム2ポイント、冒険者チーム4ポイントです最後の『剣』の戦いは2人組の団体戦です。大会規定で2選手が出る競技は、勝てば4ポイント、引き分ければ2ポイントずつ、負ければ0ポイントになります。まだ王室チームに逆転の希望はありますよー。冒険者チームは引き分け以上で勝利になります」とフェフェが解説し、会場が大盛り上がりの中、これから出番をむかえ緊張しているベラムダ弁護士に、「試合が始まったら棄権してください」と声をかけると、「わ、わかりました。でも、僕にだって男の意地があります。ギリギリまで頑張ります」と覚悟を決めていた。ベラムダ弁護士は、魔術師が着るフードのついたマントに身を包み、杖を持っていた。俺は頭から顔まですっぽりと覆うヘルメットと、身体に鱗のように金属板を張りつけたスケールアーマー姿で、武器は玉鋼(たまはがね)を打った片刃の刀を選んだ。

進行役のフェフェが、「最後の『剣』競技のルールを簡単に説明しましょう! 実戦方式で、先にチーム全員が戦闘不能になったり、チーム全員が棄権したりすれば負け、一人でも残れば勝ちです。相手を傷つけても罪に問われませんが、即死させた場合は殺人罪になります。途中で審判団が戦闘不能と判定した選手には退場してもらいます」と言い、「それでは選手紹介です。王室チームは『王国の大剣』の異名を持つ、王国騎士団員グランチ選手、そして『幻影の射手』の異名を持つ王国魔術団員ピアーズ選手です」と言うと会場が沸いた。続けて、「たいする冒険者チームはSランク冒険者マリシ選手、そして弁護士のベラムダ選手です。さぁ、もうなにが起きても驚きませんよー。フェフェは今日一日で、一生分の驚きを経験してしまったのです」とフェフェがおどけ、再び会場が沸いた。

 グランチは異名通り、両刃の大剣を持つ大男だった。バランスよく筋肉がついており、鈍重そうではなかった。一方のピアーズは痩せた、色白の男だった。体力に自信のない魔術師ほど、慎重に戦うので、相手にするのは面倒そうだ。

「それでは両チーム良いですか?」と言ったとき、べラムダとフェフェが話しかけ、「えっ? あっ、はい? ええっ?」とフェフェが驚いていた。そして、「みなさーん、たった今ベラムダ選手が棄権しました」と言った。ベラムダよ、男の意地とやらはどうしたのだ。

 会場からもさすがにブーイングが起きたが、ベラムダ弁護士はそそくさと会場を後にしてしまった。フェフェは、ちょっと気の毒そうに俺を見て、「波乱の幕開けです。マリシ選手、一人でどこまで戦えるでしょうか?」と言う。

(パラゴ、情報オン。イメージ拡張モードもオン)と命じた瞬間、視野が全方向に広がり、一瞬、よろけた。進行役のフェフェはそれを見逃さず、「あーっと、マリシ選手、よろけましたが大丈夫ですか? 試合を開始して良いですか?」と言うので、拳を挙げて、大丈夫だとアピールした。

イメージ拡張モードで視野が広がっても、すべてを見ているわけではないのですぐに慣れる。ちょうど、雑踏の中で、関心のある相手の声だけを聞き取っているのと同じ感覚だ。

「それでは競技開始を宣言します。はじめ!」という開始の合図とともに、パラゴが情報を流し、魔術師が詠唱してあるのがわかった。例によって【障壁】の魔法だったが、グランチが大剣を抜いて、迫っていたので、詠唱を止めに行けなかった。

 グランチの腕は俺より長く、大剣は俺の刀より長い。こちらの刀の間合いに入る前に、右中段から薙いできた。大した腕力で、この大剣を軽々と振り回していたが、マナの量はそれほどでもなかった。マナのたぎった俺の刀が、グランチの大剣の上1/3ぐらいのところをすっぱりと切断すると、「あーっと、マリシ選手、いきなりグランチ選手の大剣を切断しました。すごい量のマナが剣に巡っています。グランチ選手、構わず連続攻撃です!」と解説が入った。

 グランチはひるまず、短くなった剣を左上段から振りおろしてきた。無理な連続攻撃をしてくる理由はすぐに分かった。後ろでピアーズが次の魔法を完成させていたのだ。【指弾】という指向性の高い攻撃魔法で、指の数だけエネルギーの塊を飛ばすことができる。とっさに地面を蹴って逃げると、地面に【指弾】が当たり、石が跳ねた。

「ここでピアーズ選手が、マナで作った弾を撃ったようです。さあ、見えない弾を避けきれるか、マリシ選手」とフェフェが言う。

 俺は左手で手印を組み、身体の周りに【防術】の魔法を発動させ、(パラゴ、ピアーズが6発撃ったら教えろ)と命じた。グランチが距離を詰めてきたが、大剣が短くなった分、グランチの間合いはリーチの短い俺の間合いでもある。こちらから前に踏み込み、上段から刀を振り下ろした。瞬間、俺の刀が激しく輝き、刀を受けた大剣とグランチの防具が斬られた。

 すかさずフェフェが、「グランチ選手、負傷! でも審判団は続行させます。まだ傷が浅いとの判断です。マリシ選手の剣はこれまでにないほどマナがこめられています。これはすごい!」と言った。そこへ、ビシッビシッと音が鳴り、【防術】で作ったシールドに、ピアーズの【指弾】が当たるのがわかった。一発当たると、頭の中の防術シールドの耐久度を表すゲージが、15%ぐらい減った。すでに、シールドの耐久度は25%まで落ちていた。

(宿主様、ピアーズ、6発撃ちました)とパラゴが言ったので、(敵の【指弾】をすべて打ち落として、敵を無力化しろ!)と命じて、左手で手印を組み、こちらも【指弾】を発動した。

 左腕を斜め後ろのピアーズに向けて伸ばし、右手の刀をグランチを向けて構えた。視界は全方向に拡大されていたので、ピアーズの動きも目に入る。ピアーズが腕を伸ばしてこちらを狙うと、その指の動きをパラゴが感知し、相手が飛ばす【指弾】に合わせて【指弾】を撃った。ピアーズは最初、何が起こっているかわからないようだったが、同じ魔法を発動して、高速で飛んでくるマナの塊を撃ち落としていると気づき、驚愕の表情を浮かべた。ピアーズが残りの4発を撃ち終えたときには、まだ一発の余裕があったので、その右手に【指弾】を当てると、苦悶の表情を浮かべ、右手を押さえて蹲った。

「なんとなんと、マリシ選手、ピアーズ選手に魔法攻撃を当てました。『幻影の射手』ピアーズ選手、これは痛い。無事な片手で弾を撃てるのか?」と、フェフェのコメントがいちいち正しく、気味が悪い。

 グランチが短剣を握って踏み込んできた。体格の優位性を生かし、肉弾戦に持ち込むつもりのようだ。いい判断だが、予想通りだったので、すでに発動していた【土溶】の魔法を地面に流した。

 瞬時に泥状化した地面に、踏み込んだグランチの足が沈み、「おーっと、地面が溶けた! まるで底なし沼なのです。グランチ選手、どつぼにはまりました」と解説が入った。俺はグランチが動けない隙に一足跳びにピアーズに接近し、マナの巡った刀をピタリと目の前に構えた。「降参!」とピアーズが叫び、「ここでピアーズ選手、無念のリタイヤ!」とフェフェが言った。

 刀を鞘に収め、グランチのところに戻ると、すでに腰まで地面に埋まり、両腕を広げて、身体が沈まないように堪えていた。

観客に、グランチの「降参」を納得させるため、【火球】の魔法を組み、巨大な火の玉を見せた。それを見て、グランチが、「降参だ!」と言った。

「あーっと、グランチ選手も棄権しました。よって勝者はマリシ選手。これで冒険者チームの勝ちが決定です。誰もが予想しなかった大金星です!」とフェフェが言い、場内の興奮は最高潮だった。

【火球】を消滅させ、グランチを引っ張り上げた。このとき、ひそかに【回復】魔法を発動させ、グランチの怪我の応急処置をした。そして、【土硬】の魔法で泥状の地面を整地した。ピアーズのところに行き、握手した時にも【回復】の魔法を使い怪我した手を治した。2人は俺を見たまま、礼を言うように頷いた。

フェフェが俺に近づき、「さあ、マリシ選手にインタビューしましょう。おめでとうございます。不利な条件からのスタートでした。戦ってみていかがでしたか?」と質問され、ヘルメットは取らず、顔を隠したまま、「王室チームは強敵でした。最初にベラムダ選手が棄権して、油断を誘うことができました」と答えた。

「あれは作戦だったのですか?」とフェフェが驚くので、「まともに戦っては勝てない相手なので、クマが出たり、いきなり降参したり、セコイ真似をしたのです」と言うと、場内が笑いに包まれ、「まじめにやれー」とヤジが飛んだ。

「もし王室チームに再戦を求められたら、受けますか?」とフェフェが訊くので、ちょっと肩をすくめて見せ、「次はベラムダ選手より先に僕が棄権します。王室チームは間違いなく王国最強です!」と賛辞を送ると、歓声と拍手が沸いた。フェフェは、「ありがとうございます。マリシ選手でしたー」とインタビューをまとめてくれた。歓声を背に、冒険者チームの控えテントに戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ