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剣と魔法と富豪冒険者  作者: パラケルスス
第3話 エルフ族の街
44/373

1. プロローグ

あらすじ

 Sランク冒険者マリシは、まったく見覚えのない王国転覆罪の容疑をかけられる。マリシを捕えにきた王国騎士団員、王国魔法団員と戦闘になったことから、軍法会議への出廷を命じられ王都キキリーに出向くことになる。この事件の背後には、キングスト王国を揺るがす、大きな陰謀があった。エルフ族とのかかわりを描く、シリーズ第3弾!

 日の前に天アリ、摩利支と名づく、大神通自在の法アリ、 常に目の前を行き、日は彼を見ざるも彼は能く日を見る。

『仏説摩利支天経』より


(日の光の前に人を超越した存在があった。マリシと名乗り、魔法を自在に操った。いつも目の前を行き、周りは彼を見ることが出来なくても、彼は周りを見ることができた)



挿絵(By みてみん)



 衛星都市ザークは、一年の中でもっとも暑い季節が終わり、過ごしやすい気候になっていた。夜明けは早くなり、目を覚ましたころには、窓の外から聞こえる鳥のさえずりも賑やかだった。ベッドから起き上がり、大きく伸びをすると、頭の中に声が響いた。


(6時ちょうどです)


 今ではすっかり慣れてしまったが、俺の身体には寄生体がいる。数年前、大賢人ジャービルの墓で、自ら「神」と名乗るエネルギー体が寄生したのだ。その寄生体を俺は「パラゴ」と呼び、パラゴは俺を「宿主様」と呼んでいる。パラゴは俺に従属し、さまざまな有益な情報を提供してくれていた。

 部屋着に着替え、自室を出ると食堂に向かった。屋敷は広く、食堂だけでなく、応接室、ゲストルーム、セキュリティールーム、大浴場など、たくさんの部屋がある。食堂にはすでに3人の美女たちが円卓を囲み、朝食をとっていた。3人が一斉に俺を見て、「マリシくん、おっはー」、「おはようございます」、「おはよー、マリシ」と挨拶した。毎朝のことであるが、この光景を両親が見たらなんと言うだろうか。ちなみに執事長の爺はなにも言わなかった。

 白衣姿の長身女性はメーティス先生で、俺より年上の20歳代半ばだ。金髪で面長、切れ長の目をした、メガネ美女で、常人には理解できないことをやらかす天然キャラだが、かつては「王国の至宝」と言われた天才科学者だ。今は俺の研究所ラボの所長を務めている。メーティス先生との付き合いはほかの2人よりも長く、俺にとっては姉のような存在…のつもりでいる。

 その隣で、朝からきっちりと身なりを整え、コーヒーを飲んでいる赤毛の女性がネイト。俺より1つ年上の18歳だ。ストイックで冷静沈着なクールビューティーで、Aランク冒険者だ。紆余曲折あったが、ネイトになら背中を任せられると思い、2人で冒険者パーティーを組んでいる。普段は週2日、冒険者ギルド本部で職員として働き、週3日、俺の仕事をしていた。

 ネイトの横でパンを齧っているのが、同い年のクロートー。黄金比を当てはめたような美人顔で、スタイルも抜群だった。古代ラストニア文明の遺跡でみつけた人造生命体で、ありえない怪力とありえない発言で周りを沈黙させることはあるものの、天真爛漫で憎めない奴だった。クロートーが人造生命体であることは、俺たち4人の秘密だが、軟禁しているわけではなく、俺たちの知らないところで、Cランク冒険者として冒険者ギルドの仕事をこなしているようだ。

「おはよう」と言って、食卓に座ると、メイドが朝食を運んできた。俺たち4人の間では、屋敷にいる限り、7時には食堂に入ることが暗黙のルールになっていた。破ったところでペナルティはないが、朝食の時しか4人で顔を合わせないので、連絡を取るのに便利な時間帯だった。

「マリシくーん、今日の午前中、空いているわよねー?」と、どこか間延びする口調でメーティス先生が言った。「はい。そのつもりです」と答えると、コーヒーカップを口元に運ぼうとしたネイトの手が一瞬、止まり、「なにかお約束があるのですか?」と訊いてきた。「んっ? ああ。ネイトに言っていなかったっけ? 先生の実験に付き合うんだ」と答えると、ネイトが、かすかに眉をひそめ、「聞いていません」と言った。「そうだったかなぁ」と言いながら、スプーンでスクランブルエッグをすくって口に入れた。

「マリシくんがいないとできない実験なのよねー」とメーティス先生が嬉しそうに言うと、「私も今日は冒険者ギルドに行く日ではありません。御供致します」とネイトが口を挟んだ。仕事がないのにその格好かよと思いつつ黙っていると、メーティス先生が口元にだけ笑みを浮かべ、「ネイトちゃんは来る必要がないんだけれどー」と言った。「私が同行してはまずいことでも?」と、ネイトがメーティス先生を睨みつけたが、どこ吹く風というように「そんなことはないわよー。たーだ歓迎していないだけー」と受け流していた。

 朝から険悪な2人を無視し、カリカリに焼いたベーコンを口に運んだ。昨日、ベーコンの塩気が強すぎると指摘したら、もう好みのものに変わっていた。さすがはうちの料理人だ。

 しばらく黙食していたが、メーティス先生が折れ、「そんなに言うなら、ネイトちゃんが来てもいいわよ。とくにすることはないけれどねー」と言った。そして、「クロートーちゃんの今日の予定は?」と話を向けると、「あたしは冒険者ギルドで新しい依頼を探すつもり」と言った。クロートーはきちんと仕事をしているらしい。住む場所と食事は提供していたが、小遣いをやっているわけではないし、自分で稼いでいるのだろう。

 メーティス先生が、「クロートーちゃんにも手伝って欲しいんだけれど?」と言うと、「マジで? 仕事としてなら付き合えるわ。バイト代が出るならね」と、しっかり報酬を求め、2つ目のトーストを食べ始めた。これだけ食べて、たっぷり眠って、どうして美ボディを維持できているのだろう。人造生命体、恐るべしべしだ。

 メーティス先生はちょっと考える顔をして、「ちゃっかりしているわねー。わかったわよ、ちゃんとバイト代を出すわ」と言い、クロートーは「了解! 謹んでお受けします」と敬礼した。「じゃあ、決まりねー! みんな、ラボの実験室に9時に集合ねー」とメーティス先生の言葉を合図に、三々五々、食堂から去った。

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