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剣と魔法と富豪冒険者  作者: パラケルスス
第2話 盗賊ケムリ
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11-1. 運び屋稼業も甘くはない

 依頼を受けた2日後、俺とネイト、クロートーの3人は、約束の9時に冒険者ギルド本部に出向いた。ネイトは身体にフィットした黒いレザースーツを着て、腰のベルトに2本のダガーをつけていた。その姿は冒険者ギルドの職員と言うより、Aランク冒険者そのものだ。俺とクロートーは、メーティス先生の作った『重軽装』冒険服を着ていた。軽くて柔らかい素材なのに、十分な強度のある防具だが、クロートーは「デザインがダサい」と言っていた。俺にはどこがダサいのかわからなかった。

 いつものように受付カウンターの奥の応接室で待っていると、ポニーと3人の男たちが入ってきた。ポニーは、「マリシの旦那、待たせたな。今、みんなで金庫を開けたところだ」と言った。冒険者ギルド本部の金庫は、複数の魔術師が、それぞれに解術の呪文を唱え、それが合致すれば開く構造だ。今回、2日間、待たされたのは、解術する魔術師が全員、揃う日に合わせたのだろう。

「品物はこれだ」と、お盆の上の四角い、黒い箱を見せられた。誰でもできる「運送」の仕事を、なぜBランクにしたのか、引っかかっていたので、パラゴに(マナを感じるか?)と探らせると、(【保護】の魔法がかかっています)と返ってきた。【保護】は鍵をかける魔法で、解術の呪文がなければ開けられず、金庫から日記まで、さまざまな場所に使われていた。

(魔道具は入っていないか?)と確認すると、(なにも感じられません)と言う。俺を狙って、危険な物が入っているか心配したが、それはないらしい。

「手に取ってもいいか?」とポニーに訊くと、「おう、もちろんだ」と返事がきた。黒い箱を手に取り、箱を振って、音を聞きたい衝動にかられたが、やめておいた。「箱を縦にして運んでもいいのか?」と訊くと「おっ? 大丈夫だろうな」と言うので、手を止め、「だろうな…って、自信ないのか?」と聞き返した。ポニーは少し焦ったように、「い、いや、こっちでも調べはした、危ない生き物や魔道具が入っていないかって。外から調べた限りは大丈夫だ。依頼人が【保護】の魔法をかけていたから、逆さにしようが、縦に使用が、箱が開くことはない」と言う。箱を縦にし、自分の胸の前にあるポケットに納めてロックした。

「じゃあ、確かに預かった。今からボベッドの町に行ってくる」と言うと、「おう、頼んだ。先方には冒険者2人と冒険者ギルドの職員1人が昼過ぎに到着するって言ってある。いつ出発するか、事前に知らせるって条件だったんでな」とポニーが言った。相当、神経質な依頼人のようだ。


 冒険者ギルド本部を出て、俺とネイトとクロートーはゴーレム馬車に乗り込み、衛星都市ザークの南門に向かった。南区画の土地の買収は終わり、古い建物の解体工事が始まっていた。

 目的地のボベッドの町の領主はアルター子爵で、古くから同じ土地を、一族で治めているそうだ。ここから南に15キロ、問題など起こり得ないだろう。そう呑気に考えていると、南門を出て、5分くらい経った時、正面に砂塵が見えた。こちらに向けて近づいているようだ。


(パラゴ、前方になにがある?)

(騎兵4人です)

(どういう連中だ?)

(マナは強くありません)


 騎兵を避けるようなコースを取ったのだが、向こうもこちらに合わせて進路を変えてきた。御者台から後ろの2人に、「正面から騎兵4人が来た。こちらに用があるみたいだ」と声をかけた。ゴーレム馬車は時速20㎞で走るとは言え、短い距離だと馬の速さに敵わない。逃げても追いつかれるだろう。ネイトが俺の後ろに来て、「依頼の品を狙ってきたのでしょうか?」と訊いてきたが、「まだ敵とは限らない。様子を見てみよう」としか言えなかった。

 まもなく騎兵 4騎が見えてきた。剣か槍で武装し、防具を身にまとっていた。防具は寄せ集めで、遠目には野盗のように見えた。「おーい、そこの馬車! 停まれ、停まれぇー!」と、先頭の、大柄な男が槍を上げながら叫んでいる。言われた通りに馬車を止めると、馬に跨った4人の男が並び、リーダーと思しき、30歳くらいの男が前に出た。大きな目に、だんご鼻で、顔の下半分は髭もじゃだった。そして、「お前らは何人だ?」と訊いてきた。いきなり人数確認かよ、と不審に思いつつ、素直に、「3人です」と答えると、男が槍の穂先を向け、「よぉーし、今すぐ、馬車から降りろ! 降りねば突き殺すぞ!」と怒鳴った。訳がわからず、「待ってください。いきなり、なんですか」と言うと、「つべこべ言わず、馬車から降りろ!」と、また怒鳴られた。

 御者台を降りると、ネイトとクロートーも俺に倣って、大人しく幌馬車から降りてきた。馬上の2人は俺たちに槍を向けたまま、残る2人は馬から降りて幌馬車の中を漁りはじめた。「なにをするんですか!」と形式通りに抗議したが、大したものを載せていないし、気の済むまでやるがいい。大柄の男は、ぎろりと俺を見ると、「金になるものを持っているのは知っているぞ」と言った。

「なんのことです?」と言いつつ、もしかして依頼の品か?と疑問に思っていると、向こうから「黒い箱のことだ。渡してもらおうか」と言ってきた。これは事前に、冒険者ギルドから情報が漏れていたとしか思えない。「黒い箱? なんの話ですか?」としらばっくれた。そこへ幌馬車の中から、「おかしら、どこにもありませんぜ!」と男の声が聞こえた。

 おかしらと言われた男は俺の目の前に槍を突き付け、「どこに隠したか、言え!」と迫るので、「だから、なんの話ですか?」と突っぱねると、「知っているんだぞ! 黒い箱を預かっただろう」と言う。よく見れば俺の胸のポケットが盛り上がっているとわかっただろうが、気づかれることはなかった。

 もう少し情報を得ようと、「誰から預かったと言うんです?」と訊くと、「それは知らん。だが、黒い箱を持っているはずだ!」と言った。つまり、この男は誰かに雇われただけだろう。俺は首を振り、「なんのことだか、わかりません。その黒い箱が何だって言うんです?」と言うと、「よっぽど命がいらねえのか、世間知らずなのか、どっちだ?」と凄まれた。

「どっちでもありません」と答えると、おかしらと言われた男は、目をクワッと開き、「ふざけたこと言うと、槍で突き殺すぞ!」と怒鳴った。鎮圧することは簡単だったが、情報が欲しかったので、「その黒い箱が、何だって言うんです?」と訊くと、「箱と引き換えに金を貰う約束だ。箱の中に高価な物があれば、そのまま奪うつもりだ。たいしたものでなければ金を貰うつもりだ。どうだ、頭がいいだろう? わーはっはっは」と高笑いする。誰がこいつらに依頼したのか知らないが、頼む相手を間違えている。そのうち幌馬車を漁っていた野盗たち2人が出てきた。

「おかしら! 箱はありません。金目のものも積んでいません。収穫はこんなものです」と言って、弓矢を見せた。あれは俺がネイトにプレゼントしたものだ。怒るだろうなぁ、と思って、ちらりとネイトを見たら、案の定、むっとした顔をしていた。

 別の男がにやにやしながら、「他に金になりそうなのは、女たちくらいですかね、へへへ」と言い、もう一人が「男はここに埋めて、女だけでも奪いましょうや」と言いながら、無警戒にネイトに近づいた。冷や冷やしながら見ている俺の前で、ネイトは腰に付けたダガーを抜き、男の右腕に突き刺した。ダガーは男の腕を貫通し、「うわぁああー。畜生、なにするんだ、痛ってえー」と男が悲鳴を上げた。

 ネイトは別の男に駆け寄り、もう一本のダガーで、男のハードレザーアーマーの隙間から胸を刺した。こちらは肺が破れたようで、叫び声すら上げられず、うずくまった。

 クロートーが跳躍し、腕を刺された盗賊との距離を詰め、胸の辺りを突き飛ばした。男は地面をごろごろと転がり、動かなくなった。「こ、この野郎!」とおかしらが叫んだ時には、俺は手印を組み終え、【動縛】の魔法を発動していた。見えない紐が身体に巻き付き、自由を奪われた馬上の2人は、どうっと落馬した。

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