#5 必要なもの
僕の地域のソフトテニスは、総合格闘技と化していた。
ネットを超えるのは当然。
殴る・蹴る・ラケットで殴る…もうなんでもありだ。
そのくせ、防具はない。
あのときのように、頭にダメージを受けたら、その時点で終わりだ。痛くて動けない。
ボールはもちろん、相手の動きをみて、かわす技術が必要だ。
同時に多くのものをみて、かわす練習…
格闘でかわすといったら、ボクシングかな。
「よっ!練習行こうぜ」
『ごめん、僕まだ頭が治ってないんだ』
「そっか、早くもどってこいよ!お前の必殺サーブ、また見たいから!」
『おう!待ってろよ』
嘘だ。頭はもう治っている。
部活のあの平日練習では、格闘方面の技術が身に付く気がしない。
ボクシングジムへ行く。
「かっこいいねぇ。その金髪は地毛か?」
『はいそうです。』
「ハーフか何かかい?」
『それが全く覚えていなくて…』
「ハーフとか、外国の血が入っていれば、この世界では強い。期待しているから、しっかりついてこい!」
『はい!』
怖そうなトレーナーさんだが、良い人そうだ。
こうして僕は、よけるのと、パンチの技術を身に付けた。この5日間で。
身体も相当、強くなったと思う。
「もう辞めちゃうのか?」
『はい。申し訳ないですが、部活に呼び戻されちゃって。お世話になりました。』
「お前、良い筋してるからな。部活飽きたら、戻ってこい!」
さて、明日はゲームのある土曜だ。
どれくらい、立ち回れるかな。