#2 理想と現実
試合が始まる。
ぼくは、実力が見てみたいと言われ、最初に入ることになった。
ソフトテニスは、基本的にダブルスだ。2対2で行われる。
ジャンケンをして、ラケットを地面に立て、クルクル回す。
コイントスみたいなもんだ。
ぼくからサーブだ。
ぼくがボールを、あいての陣地に叩き込んで、ゲームがはじまる。
相手はぼくのボールに触れることはなかった。
ぼくの事前特訓は、ぼくのサーブを猛烈に強化していた。
言ったろう、そこらへんのやつには、負ける気がしないと。
今度はコートの左手前からサーブを打つ。
これも、余裕だ。曲がる球だって、打てるぜ。ぼくは。
「すげえ!」
「これ、勝っちゃうんじゃないか?」
「殺せえ!」
殺せって… ゆうきが「人に見せたくないスポーツ」って言うのは、こういうことなのかもしれないな。
今日 ゆうき はまだ、入院中だ。なぜか肋骨が折れていたらしい。
やっぱりいじめか。
さて今度は、ぼくのペアの さとし がサーブを打つ。
1発目、ファーストサーブ。ネットに引っかかり、失敗。
大丈夫、2本までは失敗してもいい。
さとしが失敗した事よりも、サーブを返さないほうの相手が一瞬、こちらに突っかかってきたように見えた。それの方を、ぼくは気にしていた。
さとし、2本目のサーブを無事決める!
さとしは「前衛」、前に出る!
だが!
さとし はネットを飛び越え、相手前衛に飛び掛かったではないか!
勢い余り過ぎたのか。勢い余り過ぎてネットを飛び越えたのか!?
そしてラケットで相手に殴りかかる!は!?
相手もラケットで防ぎ、さとし の左脇腹に、キ、キック!?
そ、そうだ。審判。審判何か言えよ。あれ反則だろ。
なにも言わない!?高いイスに座ったまま、ボールを見ている。
ネットの横にいる「副審」も、何もサインはしていない。
そ、そうだ。ボールを追わなければ。
相手の、サーブを返す人は無事「レシーブ」をした。ぽおん と、山なりの「ロブ」である。
なあんだ、簡単に返せるよ。
!!
上を見ていたスキに、さっきの相手のレシーバーが目の前に!!!
思いきりラケットを高く掲げている!!!
やばい!!やられる!!!!!