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65.お宝探し

「それで、これからどこへ行くつもりだったんです?」


「トレアドールの街だ」


「トレアドールですか」


 確か光の聖女様がそんな名前だったような…………街?


「え!? 街!?」


「うむ」


「ま、街って人が住んでるあの街!?」


「うむ、その街だ」


「連れてって連れてって連れてって連れてって連れ」


「騒ぐな。最初からそのつもりだ」


「てって連れ……え? つ、連れてってくれるの?」


「ああ」


「ホ、ホントに?」


「ホントに」


「き、今日は、都合のいい時だけ呼んで事が済んだらさっさと家から追い出される女の子みたく、僕を還さないの?」


「そんな扱いをした憶えはないないが、今日は思う存分こっちにいていいぞ」


「……や、や、や」


「や?」


「やったーーーーーーーーーーっ! わーーーーーいっ、わーーーーーいっ、街だーーーーーーーーーーっ! 街に行けるんだーーーーーーーーーーっ!

あのケチケチリィザさんが街へ連れてってくれるんだーーーーーーーーーーっ! バンザーーーイッ! バンザーーーーーーイッ!」


「フフフ……けっこうイラっときたが、お前のはしゃぎっぷりに免じて許してやる」


「そうと決まれば善は急げ! トレアドールへ向けて出発進行ーーーーーっ!」


 全力で森の中へ駆けて行った。





 しばらくして戻ってきた。


「はぁっ、はぁっ、た、ただいま戻りました」


「うむ、よく戻った。アホだがえらいぞ」


「ト、トレアドールの街はどこに?」


「その前にやることがある」


「お背中お流しします」


「水浴び違う。流さなくていい」


 違うのか。


「でも、手とか臭いっスよ?」


 原っぱに落ちてる剣拾ったりしたから。

 靴も臭いだろうし。


「消臭草を持ってるから大丈夫だ」


 消臭そう?

 消臭……草かな?

 臭いを消してくれる草なんだろう。


「それより……」


 リィザがコートのポケットに手を入れガサゴソガサゴソ。


「ん~…………あ。あったあった。これを見ろ」


 そう言ってリィザが取り出したのは銀色のコイン。


「これって、もしかしてお金?」


「うむ。サン銀貨だ」


 百円玉くらいの大きさで、もっさりヒゲのおじいさんの横顔が図柄になっている。


「へぇ。サンって何です?」


「サン王国。この国の名前だ」


 ここってそんな名前の国だったのか。


「で、これがどうしたんですか? くれるの?」


「あげない。だが、今からやることの頑張り次第では、お小遣いをあげてもいい」


「おお……グリードワーム倒すの頑張ったんスけど?」


「よくやった。銀貨以外に金貨と銅貨もある。それらがグリードワームの縄張りに落ちてるはずだ」


「本当!? お金お金……」


 顔を下へ向けた。


「……ぱっと見なさそうっスけど」


「あと、金銀宝石の装飾品なんかも落ちてる可能性がある」


「金銀宝石!? 何スかここ!? すごい場所っスね!?」


「うむ」


「ははぁ、そういうことだったのか」


「何が?」


「いえね、『グリードワームを倒してほしい』って依頼を受けてたのかなと思ってたんスけど、、お宝を手に入れるために僕を召喚して倒させたんだな、と」


「……あー、まぁ、うん」


「……何で曖昧な返事?」


「曖昧じゃないし」


「……(じー)」


「……(プイ)」


 顔背けられた。

 ……さっき、プリンちゃんをおしゃべりの相手に喚んだって言ってたよな。まさか……


「……もしかして、ケンカ別れして喚び出しにくいはずの僕を再召喚した本当の理由って、プリンちゃん喚べなくなって寂しいの我慢できなかったから、とか?」


「違います」


 敬語になってるし。


「僕の言ったこと半分くらい当たってる?」


「当たってません」


「本当に?」


「本当に」


「じゃあ僕、お宝探し終わったら還っていい?」


「せっかく来たんだ。ゆっくりしていけ」


 親戚のおじさんみたいなこと言ってきた。

 来たも何もあんたが喚んだのに。

 街へ行けるんだから還る気はさらさらないけどさ。


 やっぱ寂しくて喚んだってところもあるようだ。

 ひとりぼっちはヤだもんな。


「それより、早く探すぞ」


 ごまかすように僕を急かすリィザ。


「オス。でも、何でこんなとこにお金や金銀宝石が……」


 あるんですか? と言いかけて止めた。

 鎧姿の白骨体が視界に入ったから。


 ……そういうことか。

 お金や金銀宝石は、ここで亡くなった人たちが持ってたものなんだ。


「……そっかそっか、なるほど」


 確かに、ここに放置していても仕方がない。

 僕達が生きるために使ったほうがいい。

 それは理解できる。

 理解できるが……。


「……う~ん」


 平和な現代日本で育った僕としては、死者の者に手を出すのは気が引けてしまう。


「どうした? 何か気になるのか? 言っとくけど、本当に寂しくて喚んだんじゃないぞ。それに、たとえ一人で街へ行くことになっても、私はもう大人だから一人でも買い物はできるし、お店で注文もできる。知らない人にだって話しかけられるんだからな」


 全部普通のこと。

 でも、ククが言ってたな。

 クロアの真似をするようになって克服したけど、リィザはもともと人見知りだったって。

 少し前まではできなかったんだろう。


「いえ、そういうんじゃないっス。大丈夫っス」


「そうか。ならいいが」


 郷に入っては郷に従えって云うし、ちゃんと手を合わせてから感謝して拾わせていただくとするか。


「あ、それとな、拾ったものは全部私に渡すんだぞ。銅貨一枚であってもちょろまかすなよ」


「ちょろまかさないっスよ」


「約束だぞ。もう気づいているだろうが、ここに落ちている物は死者の物だ。全部パルティア教の教会に渡すんだからな」


 パルティア教。リィザが信仰している宗教。なんだけど、


「? どういうこと?」


「何が?」


「教会に渡すって。自分の物にするんじゃないの?」


「馬鹿者。……と言いたいところだが、お前の気持ちはわかる。それが普通だしな」


「じゃあ何で?」


「勇者様達は、戦場で拾った物や死者の物であるとわかる金品などは、すべて教会に寄付というカタチで渡していたんだ」


「へぇ」


 さすがは勇者様と呼ばれるだけのことはある。

 立派な人だ。


「だから、将来英雄と呼ばれることになる私も勇者様達を習って、教会へ持っていくようにしているのだ」


「おお~」


 パチパチパチ


 自然と拍手。

 勇者様の真似事とはいえリィザも立派なもんだ。

 英雄になるかどうかは知らんけど。


「フフフ、当然のことだ。拍手などよせ」


 と言うわりには、腰に手を当てアゴをクイッと上げ、嬉しそうな様子のリィザ。


「ゆえに、貴様も英雄王の召喚獣として恥じることのない言動を心掛けよ」


 王がついた。

 しゃべり方がワンランク偉そうになった。

 褒められると調子こくタイプだな。


「んで、教会にお金渡すとなんか貰えるの?」


「……恥ずかしくない言動を心掛けよと言ったそばから……フー」


 リィザが腕を左右に広げ、手の平を上に向け、首をフルフル振ってため息をついた。

 クロアを思い出す見事なヤレヤレポーズだ。

 ハの字眉毛がイラっとくるところまでそっくり。


「あくまで好奇心からの質問でございますよ」


「まぁ、何もないということはない」


「ほほう。では何が?」


「色々な所へ入れるようになる」


「女子更衣室とか?」


「私は入れる。お前は永遠に入るな」


「それ以外どこに?」


「普段は、パルティア教の関係者しか入れないような施設を利用できるようになる」


「例えば?」


「パルティア教の宿泊施設とか、パルティア教の修練場とか、パルティア教の伝統ある建物とかだな」


「……ふーん」


「あからさまに興味ないなお前。とにかくだ、ここで拾ったお金を使いたいというお前の気持ちはわからなくもないが」


「いえいえ、そんなことないですよ。僕も亡くなった人のお金は、使う気になれないんで」


「おお、お前もか。だったら問題ないな」


「でも、まったく使えないとなるとモヤっとするもんスね」


「どういうことだ?」


「わかりません? こう……安い商品を一個買っただけなのにお店の人が、『ありがとうございましたっ!』って大声で言ってペコペコ頭を下げてくると、『そこまでしなくても……』って思うんだけど、次行って同じものを買って、『ありがとうございました(ペコ)』だけになってると、『それだけ?』って変な不満を持っちゃう心理と似てるというかですね」


「そろそろ探すとしよう」


「はい」


 うまく伝わらなかったようだ。


「では……イッケーーーッ! バハムートーーーッ!」


 無意味に叫んでから僕に背を向け歩き出すリィザ。

 僕も回れ右して反対側を探すことにした。

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