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64.信じてるっスよ

「……斬首刑だ」


「ざ、斬首って、荷物とお金を盗んだとはいえさすがに罰が重すぎじゃ……あれ? どうしてレイピアを抜くの?」


「それはな、こうしないと使えないからだ」


「あれれ? どうして構えるの?」


「それはな、こうしないと狙いが定まらないからだ」


「あれれれ? どうして僕に向かって振り上げるの?」


「それはな……お前の首を斬り落とすためだ!」


 そう叫び、本当にレイピアを振り下ろしてきた。


「うおっ!」


 ギィィィンッ


 鉄と鉄のぶつかる音が二人の間に響いた。

 とっさに足元に落ちていた剣を拾い、なんとかリィザのレイピアをはじくことができた。


「いきなり何すんのさ!?」


「うるさい! お前は私と同じ考えだと思っていたのに!」


「えぇっ!? 同じっスよ! 話聞いてました!?」


「お前こそ私の話を聞いてたのか!?」


「聞いてましたよ! だから僕も『()()クロアが荷物を盗った』じゃなく、『()()クロアが荷物を盗った』って」


「私はクロアは荷物を盗ってないと言いたかったんだ!」


「ハハ、そりゃないわ」


「でりゃあぁぁぁぁぁっ!」


「うおっと!」


 ギンッ


 振り下ろされたレイピアを、今度は剣で受け止めた。

 振り下ろした勢いのまま、リィザがぐいぐいレイピアで押してきた。


「こいつぅぅぅっ!」


「ぐぬぬぬぬっ!」


 僕も負けじと押し返す。

 そのまま押して押されてとやり合っていたが、リィザが僕のすねをブーツのつま先で、


「ふんっ」


 ゴスッ


「あだぁっ」


 蹴って、一度間合いを取り、近くに落ちていた剣を拾い上げ、レイピアと拾った剣で僕に襲いかかってきた。


「ちょっと! 反則! 二本はダメだっての!」


「やぁぁぁっ!」


 問答無用とばかりに二本の剣を振り回す怒れる金髪。

 剣技もへったくれもなく、剣で叩くような攻撃だ。

 しかし、防ぎきれそうにない。

 リィザの目も血走ってて危ない。

 ということで、持ってた剣をポイと捨て、


「あっ、待て! バカムート!」


 ひたすら逃げることにした。


「このっ、卑怯者! 逃げるな! 勝負しろ!」


 そんな、当初と目的が変わっているリィザの声を背中に聞きながら、僕達はぐったりしているグリードワームの周りをしばらく走り続けた。



 ◇◆



「はぁっ、はぁっ、い、いい加減、はぁっ、い、一回くらい、はぁっ、はぁっ、き、斬られろ」


「はぁっ、はぁっ、い、一回、はぁっ、き、斬られたら、はぁっ、はぁっ、し、死んじゃう、はぁっ、でしょうが」


 ニ十分後。まだやっていた。


「はぁっ、はぁっ、し、しつこい、はぁっ、はぁっ、バ、バカムートめ」


「はぁっ、はぁっ、し、しつこいのは、はぁっ、はぁっ、そ、そっちでしょ」


 だが、とうとう体力の限界がきたのかリィザは、


「はぁっ、はぁっ、も、もうダメだ」


 剣を二本とも地面に突き立て、膝に手をつき足を止めた。

 それを見て僕も立ち止まった。


「はぁっ、はぁっ、な、なんてことだ、はぁっ、はぁっ、も、もう剣は、はぁっ、はぁっ、ふ、振れそうにない、はぁっ、はぁっ、け、剣は、はぁっ、こ、ここに、はぁっ、はぁっ、さ、刺しておこう、はぁっ、はぁっ、い、今なら、はぁっ、はぁっ、か、簡単に、はぁっ、ふぅっ、う、奪われてしまうだろう、はぁっ、ふぅっ」


「ぜはぁっ、ぜはぁっ、はぁっ、はぁっ」


「……腕が、はぁっ、パンパンで、はぁっ、ふぅっ、剣を、ふぅっ、奪いに、ふぅっ、はぁっ、来られても、ふぅっ、動かすことは、はぁっ、ふぅっ、できないだろう」


「はぁっ、ひぃっ、はぁっ、はぁっ、ふぅっ、ふぅ~」


「…………こんなこと口にすることでもないが、はぁっ、実は今、膝と肩が痛い、とてもだ、はぁっ、これは専門の医師に診てもらうやつだ、ふぅっ、きっと、いろいろ言われるだろう、ふぅ~、だから私は、動くことはできないし、奪いに来られても何もできないということなんだ」


「あーしんど」


「奪いに来いよ!」


「え、何?」


「くぅぅぅ~っ、もういい!」


 ようやく本当にあきらめてくれたようで、二本の剣を地面から抜いて自分のレイピアは鞘へしまい、拾ったほうは投げ捨てた。

 わ~、すごく遠くまで飛んでった。

 わかってたけど全然肩痛めてなかった。


「まったく……どうしてお前はクロアを信じてやれないんだ?」


「信じてるっスよ」


「じゃあどうしてクロアが盗んだって言うんだ?」


「クロアが盗んだと信じてるからです」


「そういうのは信じてるとは言わない! そしてクロアは盗んでない!」


「だったら、クロアと荷物はどこに? 人や魔物や獣に襲われたわけじゃないならクロアはどこにいて、荷物はどこにあるんですか?」


「それは……その……何かのっぴきならない事情ができて、荷物やお金を一時的に借りた……とか」


「夜中になんもない村にいてできるのっぴきならない事情って何スか? あと、『借ります』って書き置きくらいできるでしょ」


「……ひょっこり村を訪れたおじいさんに、『お金貸してくれ』って言われて貸したけど、盗賊だと気づいて追いかけた……とか」


「村の周りに盗賊いないって言ってたじゃないっスか。あと、『盗賊追います』って書き置きくらいできるでしょ」


「…………神の啓示を受けて、この世から戦をなくす旅に出た……とか」


「クロさん、『神に祈ることも頼ることもない』って言ってましたよ。あと、『カミさんが呼んでるから』って書き置きくらい」


「だったらお前はわかるのか!?」


「だから荷物とお金パクって逃げたんでしょ」


「あいつはパクってない!」


 絶対パクってるのに。


「……それに、クロアは戻ってくる」


「何でわかるの?」


「……絶対だからだ」


 理由になってない。

 なにか確信がありそうな真剣な眼差しだったけど……そうなってほしいと心から願っているからこその目だろうか。


「それじゃあ、これからどうすんです? みんなが帰ってくるのハーラスの村で待つの?」


「それは、行った先で考えようと思う」


「行った先? どっか行くんですか?」


「行くというか、今向かってる最中だ。朝からずっと森の中を歩き通しでな」


 じゃあ、ここはもうハーラスの村の近くじゃないのか。


「一人で森を歩いてたんスか?」


「うむ」


「よく無事でしたね」


「プリンちゃんがいるから大丈夫だ」


「ああ」


 僕の先輩。もう一体の召喚獣、ユニコーンのプリンちゃん。


「そういやそうでしたね。プリンちゃん出してもらえばもっと楽にグリードワーム倒せたかも。プリンちゃん強いんでしょ?」


「めっさ強い」


 めっさか。


「だがここへ来るまでに、私を背に乗せて走ってもらうためだったり、戦闘のためだったり、おしゃべり相手のためだったりとたくさん喚んだから、魔力をほぼ使い切ってしまってもう喚べない」


 三つ目のやつがなかったらまだまだ喚べたろうに。


「そこで、喚ぶのにほとんど魔力を必要とせず、喚んだ後はまったく魔力を消費しないお前を喚んだんだ」


 僕って相変わらずお手軽。


「プリンちゃんは、みんながいなくなったこと何て言ってました?」


「クロアがいなくなったことも、ミラ達がいなくなったことも、むっつり顔で、『そうですか……』とだけ言ってた。どこに行ったと思う? って聞いても、『さぁ……』って言って不機嫌そうな顔をするから、あんまりそのことについて話し合ってない」


 大好きな御主人様を置いてどっか行っちゃった連中の話なんかしたくないってところかな。なるほどな……プリンちゃんか……


「……ちなみに、僕のことなんか言ってました?」


「言ってた」


「何て?」


「殺すって」


 菓子折り渡して土下座するか。

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