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46.もう喚ばん!

 僕に掴みかかって、髪へ手を伸ばしてくるリィザ。


「お前のその髪すべてむしり取ってくれるわぁっ!」


「ならばこちらは貴方様の盆地胸を揉み込んで、せめて平地くらいにして差し上げましょう。オラァッ、その盆チチ耕したらぁっ!」


「ぼ、盆……っ!? ぐ、ぎぎぎぎっ、こ、このっ、ハゲ無根召喚獣がぁっ!」


「ハゲ無……っ!? ぐ、ぎぎぎぎっ、こ、このっ、盆チチ召喚使いがぁっ!」


 もう主人だろうが女だろうが関係ない。

 僕の名誉回復のためにもこの聖戦に勝利せねば。

 どことなく虚しさを覚える戦いを尻目に、残りの四人はもう僕達を止めることもなく、こちらから距離を置いて顔を寄せ合い何やら話し合っていた。

 しばらくしてクロアが、取っ組み合って相手の髪やら服やらを引っ張っている僕達に近づいてきた。


「おーい、リィザー」


「何だ!? 今こいつの髪をむしるので忙しいんだ! 後にしてくれ!」


「それは忙しいとは言わんだろ……。皆で話し合った結果、もうバハムートを還そうということでまとまった。解放術を頼む」


「ぐっ……皆で決めたのなら仕方がない。おいっ、バハムート!」


「痛たたたたたっ、な、何だコラァッ!?」


「クロアに幾度となく危害を加え、さらには私に対する暴言の数々、最早勘弁ならん! お前との縁は今日が最後だ! 二度と喚ばん! クビだ!」


「上等だぁっ! そもそもこっちは喚んでくれとも雇ってくれとも言った憶えはないってんだよ!」


「召喚獣は喚ばれてなんぼだろうが!」


「僕は人間だっつってんだろ! いつもいつも喚ばれる場所は森か廃村、街には連れてってくれない、喚ばれれば敵を倒せ、筋トレしろ、ふざけんな!」


「敵を倒すのは召喚獣なら当たり前だ!」


「筋トレする召喚獣は当たり前じゃねぇ! やってられっか! むしろこっちから言ってやる! 二度と喚ぶな!」


「こ、こいつ〜っ! 後悔するなよ! ツルっぱげ召喚獣!」


「欠片もするか! ツルペタ召喚使い!」


「ぐっ、ぐぬぬぬぬ〜っ! でりゃぁっ!」


「ぶほぉっ」


 腹パンをくらい、その場に膝をついた。

 そしてリィザは、右手の平を僕へ向け、呪文を詠唱し始めた。


「『我が声に応えし僕に休息を与えん』」


 僕の体の下に青白く光る魔法陣が描き出され、僕の体も同じく光りはじめた。

 僕とリィザのやり取りを黙って見ていたクロアが、こちらへ顔を向けた。


「それではな、ハゲムトウ」


「て、てんめぇ〜っ! 髪むしるぞ!」


「カツラでも作るのか?」


「あ゛あ゛ぁぁぁっ!?」


 ミラもこっちへ来た。


「なんてハゲましゃあいいのか……」


「わざと言ってんだろ!」


 ククも来る。


「(ジーーー)……はぁ〜」


「人の頭見てため息ついてんじゃねぇ!」


 レアも来た。


「ヌモネンヌ……」


「ぐあっ、お、お尻がっ!? 魔法なんて卑怯だぞ!」


 で、ラストにリィザ。


「……今お前の頭光ってるぞ、プププ」


「おっぱいナイナイナイナイナイナイザァァァッ!」


「ハゲムトウ解放! あ、間違えた。『バハムート解放』! そしてアホ!」


「こ、こんちくしょ〜〜〜っ、バーカっ、バーーーカっ、お前ら全員バーーーカっ! 死ねっ、アホ異世界人! お前ら全員死んじまえぇぇぇぇぇぇ




◇――――――――――――――――――――◇




ぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ! ハァッ、ハァッ、ハァッ………………ぐっ、ぐぬぬぬぬっ」


 還った場所は、いつも通りの自分の部屋。

 無言で壁際までスタスタ歩いて行き、ガラッと勢いよく窓を開け、異世界の五人へ僕の想いが届くよう祈りながら、夜空へ向かってお腹の底から叫んだ。


「アホーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


 家族みんなに怒られた。

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