45.己の魂をかけた戦い
「フフ、私の答えに満足いっていない、という顔をしているな」
当たり。
「貴様とは、ずっといがみ合ってきたからな。仕方のないことかもしれん」
ほぼそっちがいがみ合う原因作ってんだけどね。
「これほど生意気で扱いづらいやつに会ったのは初めてだ」
そうさせてんのはあなた。
「腹立たしいことも沢山あった」
僕も。
「だがそれは、こちらにも非がある。お前の話を聞かなかったり、最初から無視したりとな」
クロア?
「信じてもらえんかもしれんが反省しているんだ」
クロア……お前……
「これからは、貴様のことをもっと知りたい。仲良くやっていきたいと思っている。これは本心だ」
ちゃんと僕のことを考えて……
「良い関係を築いていこう」
クロアが握手を求めてきた。
「クロア……いや、ミスタークロアさん……あんたってやつぁ」
僕も右手をだしてクロアと固い握手を交わ
「さぁ、次は貴様が謝れ。土下座して、地面に額をこすりつけ、私の靴を舐めなが――ぶごへっ」
そうとしたがスルーして、クロアの両足を抱え込み、双手刈りですっ転ばし、後頭部を抑えてもがくクロアの両足首を掴み、左右に開いて右足を股間にセッ
「お前はなにをしているんだぁぁぁぁぁっ!」
「ぶばあぁっ」
リィザにハイキックを食らい倒れた。が、すぐさま起き上がった。
「止めるなっ!」
「止めるわっ!」
やっぱ止めるか。
「お前はぁっ! 何度も何度も何度もっ!」
金髪が逆立ちそうなほどお怒りのリィザ。
「ぶち殺す!」
瞳に炎を宿し大剣を肩に担ぐミラ。
「もうここでくたばれ!」
獣のように前傾姿勢になるクク。
「なぜ股間ばかり狙うのです?」
ファイティングポーズをとってシャドーをするレア。
「ち、ちょっと待ってよ! 今のは明らかに僕は悪くないでしょ!? 靴舐めろとか言うクロアが悪いでしょ!?」
「ふざけるなぁっ!」
唾を飛ばしてリィザが怒鳴る。
「クロアが寛容にもすべてを水に流すと言っているのにお前はっ!」
「はぁぁぁっ!? 寛容!? 土下座して靴舐めろってののどこが寛容なの!? 謝るのなんて普通にごめんなさいで十分でしょ!」
「お前のしたことを考えればそれくらいで許されて感謝すべきだろうが!」
「土下座して靴舐めさせられてどうして感謝しなきゃなんないんだ!」
「むしろお前ごときがクロアの靴を舐められるなんて光栄に思え!」
「あんたじゃあるまいしそんな趣味あるかぁっ!」
「私もそんな趣味あるかぁっ!」
険悪な空気で向かい合う僕とリィザ。
そして、今にも飛び掛かってきそうなミラとククとレア。
「そこまで!」
その一触即発の雰囲気を立ち上がったクロアが止めた。
「皆私のために怒ってくれたんだな。ありがとう。だが私は気にしていない。皆も落ち着くんだ」
クロアに言われ、怒りを堪える女子四人。
「……バカムート」
「……アホムート」
「……キモムート」
「……シャバ僧」
シャバ僧……。
「そもそも、バハムートが簡単に頷いてくれるとは思っていない」
お前が変なこと言わなきゃ簡単に頷くっての。
「ゆっくり時間をかけて信頼を構築していけばいい」
またまた余裕ある大人の対応。
前だったら、許すって言っても怒りは収まってなかったのに。
「クロさんホントどうしちゃったの? もっとクールな性格だったでしょ? 何で急に気さくなキャラになってんの?」
「お前が知らなかっただけで、クロアはもともとこういう男だ」
クロアに聞いたが、リィザが代わって答えた。
「自らがまず心を開くから、クロアと話した相手も心を開くんだ。先程の言葉など、私がクロアと出会った頃を思い出す」
「もっと知りたい、仲良くしたいってやつ?」
「ああ」
それってナンパじゃね?
「前に比べ、ほんの少しだけ物静かな男になったが、クロアの中身は以前と何ら変わっていないんだ」
つまり、釣った魚には餌をあげないダメ男と、いつまでたってもダメ男を信じ続けるダメ女じゃね?
「クロアは本当にたいした男だ。人間とはこうありたいものだ」
いや、変な宗教の教祖様と信者かな。
人間こうはなりたくないものだ。
「フフ」
胡散臭い後光が見えそうな笑みをこぼし、倒れた時に打った後頭部を撫でながらリィザを見つめるクロア。
お布施と称したカツアゲでケツの毛まで抜かれないよう気をつけ…………光? 頭?
「……あ」
ポンと一つ手を打った。
そうだ。もう一つ聞きたいことがあったんだった。
「ちょっと、教祖様」
「……私に言ってるのか?」
「あ、間違えた。なぁなぁ、クロさん」
「何だ?」
「あの辛気臭い気配が出た時、クロさんの頭の上で何か光らなかった?」
「? いいや」
「あれ、そう?」
……ん?
何だろう?
今のやりとりどこかおかしいような気が……。
おかしいと言えばどうしてクロアは今、明星のランプから取り出した懐中電灯を持ってるんだろう?
さらに思い出した。
不快な気配が出る前、明星のランプが割れた音がした後、硬いもの同士がぶつかったような音が近くから聞こえた。
あの音は一体何だったんだろう?
「誰か光を見たという者はいるか?」
クロアが女の子達に聞くが、全員首を横に振った。
「またお前は変なことを言って……」
うんざりした顔でリィザが言ってくる。
「今は消えているが、さっきまでは明星のランプの光が当たってたんだから、その光ということだろ」
「そうでなく、明星のランプの光の中で、何かが光ったように見えたんスよ」
「……ああ」
どうやらわかって
「うん?」
ないっぽい。首捻ってるし。
「ですからね」
「だいたいクロアの頭が光るわけないだろ。お前の頭じゃあるまいし」
「いや、頭が光ったんじゃなくはあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? い、いやいやいやいやいやいや! ななな何が!? お、おおお前の頭じゃあるまいし!? な、何で何で!? どういう意味!? 僕そんなアレじゃないよ!? アレじゃないから光んないよ!? 超フサフサのクログロ! 全然っ、全っっっ然アレじゃないから光ったりなんてしないでしょ!? でしょ!? でしょ!?」
「来年のお前じゃあるまいし」
「たった一年で何が起こるってんだよ! そんな未来は来ないし僕のアレはアレになったりしないよ!」
「みんなそう言うんだ……」
「憐れんだ目で頭を見るなぁっ! 今までも今もこれからも僕はずっとフサフサだよ! 一生アレになったりしないよ! ふざけたこと言うな乳なしリィザ!」
「おいおい、あれほど敬語を使えとはあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? お、おおおお前っ、ししし主人に対して、ち、ち、ちちちちちちちちちちっ、はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!? い、いやいや、ま、まぁな、今はな、今はアレだ、た、確かにアレかもしれん……だが! 私はまだ十七歳だ! たとえ今は、ア、アレがアレでもっ、まだまだっ、まだまだまだまだこれからなんだ!」
「みんなそう言うんだ……」
「憐れんだ目で胸を見るなぁっ! お~の~れ~っ!」
「やんのかゴラァァァァァッ!」
今ここに、己の魂をかけた戦いの火ぶたが切って落と
「二人ともやめろ」
されることはなく、クロアが僕達の間に割って入った。
しかし、お互い怒りは収まらず、終生の仇のように睨み合う。
すると、クロアがリィザの肩に手を置いてなだめはじめた。
「落ち着けリィザ。バハムートの言うことなど気にするな」
「あ、ああ、そうだな」
クロアに言われてリィザの表情から険しさがとれた。
そして次にクロアは、僕の肩に手を置いた。
「バハムートもだ。無意味なケンカはするな」
「あ、ああ、そうだよね。お前が言うなとは思うけど、そうだよね」
クロアの言葉で少し冷静になった。
そもそも、僕はすんごくフサフサのボーボーで全く何にもこれっぽっちも問題はないわけだから、こんなことで怒る理由なんて何一つないんだよな。
平常心平常心。イラつかないイラつかない。
「クロアの言う通りだな。あいつのアレと違って、私には未来があるんだからな。お先真っ暗なあいつを労ってやらねば」
「(イラッ)……本当に、こんな意味のないケンカをするなんて僕らしくもない。今、現状、なんにもないあのお方と違って、僕にはしっかりとしたものがあるんだからね。夢の欠片もないあのお方をお慰めして差し上げねば」
「(イラッ)……ハ、ハハハハハ……あ、あぁ、そういえばお前、自分の世界の名前があるんだったな。これからは、その名で呼んでやるとしよう。確か名前は…………そう! ハゲムトウだ!」
「(ブチィッ)……ハ、ハハハハハ……お、お呼びでございますか、御主人様? ま、まさか名前を憶えていただけているとは、嬉しゅうございます。お有り難うございますです…………おっぱいナイーザ・ライン・ハイエス様」
「(ブチィッ)……おぉぉぉまぁぁぁえぇぇぇっ!」
「おっぱいナイーザ・ナイン・ナイでーす、様」
「おんどりゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!」
「かかってこいやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!」




